何も起きないはずがなく
ネタっぽいタイトルなのに内容が全くネタじゃない...
「えっと...なんで私も?」
時は過ぎ、街の街灯が点き始める頃、僕は社、忍とともに学校へ来ていた。
「僕や忍もそうだけど、いざとなったら転移できるんでしょ?」
「まぁ、そういうことだ...おそらく、リスクの大きさで選ばれたのだろう」
社は自分が呼ばれた理由がわかっていないようだが、僕と忍が呼ばれた理由を考え、そう答える。
忍の適性は「影」である。一見、超常系に思われるが実際は属性系だ。影を媒介にし、様々な事ができるため、隠密にはもってこいの魔力だろう。
そして社の「星」は...
「一応望門さんの転移の門もセットしましたけど...でも、本当にできるか分かりませんからね?」
星と呼ぶ球体を8つまで生成し、それの一つに魔法を「セット」することにより、その魔法を回路なしで使用できるというものらしい。
「ほら、1人より2人、2人より3人って言うでしょ?それに武尊の適性は隠密には向かないし...必然だと思うよ」
「話していてもしょうがない、学校に入ろう」
僕達はそんな他愛もない会話をしながら、夜の学校へと入っていくのであった。
「一旦手分けしよう。二人とも校門前に転移できるようにしておいて」
「分かりました」
「分かった────『神出鬼没』」
僕達は一度3人全員で別々に行動することに。それに伴い、忍がポケットから回路を取り出し、魔法を使用する。
「じゃあまた後で。多分七邸先生も来ると思うんだけど...会ったら手分けしてるって伝えくよ」
忍、社が僕の言葉に頷いたのを確認し、僕達は薄暗い廊下を別々の方向に歩き出す。
最初に行くのは...学校の裏口だな、潜入するならそこが一番人目につかない。
「とはいえ...結局は総当たりだろうなぁ」
そうぼやきながら、裏口へと到達する。実際職員ですら使うのは少ないって言うし、隠れながら学校に入るならこっちからのほうが...ん?
その瞬間、目の前に色とりどりの景色が現れる。いや、これは...
「...うわぁ!?」
「...ん!?あ、危ない!!」
凄まじい速度で突っ込んできた、七邸先生の頭髪の色だ。
しかし先生は僕に気づくと、これまた驚異的な体幹とバランス感覚を駆使した身のひねりで、ぎりぎりぶつかることを回避する。まぁ、かかる運動エネルギーがとてつもないことを考慮すると...
「...ぐえっ」
「...ぎゃあ!」
案の定、二人仲良く転倒してしまった。
「いやぁ、ごめんごめん☆ちょっと急いでたからさ」
「急いでたってレベルじゃないでしょ...で、なんで急いでたんです?」
七邸先生が立ち上がったのを見て倒れた体を起こしつつ、先生にそう質問する。
「あー、社ちゃんと忍ちゃんもこっちに来てるんでしょ?ってなると...まぁ、おおよそ研究所の人間とは思えないくらい戦闘に特化した刺客が学校に来てるって情報があってね、それの討伐を任されたから急いでたんだ」
どうやら、よほど学校の破壊工作に力を注いでるらしい...実際僕達は戦闘に慣れてはいないし、大人がいる方がいいのかも。
「確かにそれは急いだほうが...ちょっと待ってください、もしかしてですけどその刺客って...」
「あぁそっか、襲われたから知ってるのね...金山含め「ルシフェル」のメンバーだよ」
「...!」
瞬間、頭の奥で何かが弾ける。まさか──その名前をここで聞くことになるなんて。
ルシフェル──それは、僕の肉親の仇...だけど、僕が敵う相手ではないのだろう。
「ま、ここで駄弁ってても仕方ないし、とっとと終わらせよう」
「そう、ですね...」
重く沈んだ気持ちを抱えたまま、僕は七邸先生に連れられて校舎内を歩いていく。薄暗い廊下には僕達の足音だけが響いていて、不気味に思えた。
ひととおり見回った後、僕達は社、忍と合流するために校門へ向かう。
「にしても、驚くほど何もなかったですね」
「そうだねぇ〜。まぁ、何も無いに越したことはないよ」
二、三分ほど経った頃、忍が校門の影から現れる。
「ふぅ...ん?七邸先生?」
「あ、おかえり。こっちは先生と探したけど何もなかったよ」
「そうか...こちらでも、特に異常は見受けられなかった」
「忍ちゃんでも見つけられなかったってなると、本当に何もないのかもね。ま、社ちゃんが戻って来るまで待とうか」
簡単に情報を交換し、異常がないことを再度確認する。そして僕達は、校門の前で社を待つことにした。
しかし、どれだけ待っても社の姿は現れなかった。
それどころか、転移してくる気配すらない。
「おかしいな......いや、何か見つけたのか?」
「どうだろうな...何か問題が起きた可能性もある」
「それは......考えたくない、な」
何も出できず、状況も分からない。ただ時間が過ぎてしまうことが、これほど不安になるものだとは思わなかった。。
できれば、無事に帰ってきてくれ...心の中で願った、その直後。
きゃ────ッ
か細く、それでいて鋭い悲鳴が、夜の帷を切り裂いた。
「これは──社の声!?」
「不味い、これは...考えうる中で最悪の事態だな」
「話は後──急ぐよ!」
焦りと悔しさが、胸の奥底で混ざりあう。それを言葉に出して少しでも軽くしつつ、僕達は自分にできる最速を叩き出す。
「『属性門-風 一門【神風】』!」
「『影渡』!」
「『黄色の雷【雷鳥の羽】!」
僕自身は淡い緑色の門を後方に生成し、吹き荒れる暴風で体を押し出す。
忍は影を伝い、音もなく悲鳴が聞こえた方向へと駆けていく。
七邸先生は雷の羽を生やし、一歩踏み出すと全てを置き去りにして────飛び抜けた。
明日は私がお休みをもらっているので更新はないです
書き溜めします




