執事と坊っちゃん
すみません、書き溜めのストックがなくなったため更新頻度を落としています
休日に書いて平日に投稿する、が主軸になりそうです
告知もせずいきなり更新途絶えさせて申し訳ない
「...あの、武尊?」
「...なんだ」
「この人...誰?」
翌日、僕と社は朝食を食べ終え、ちょうど研究所に行こうとしたタイミングで、インターホンを押されたのが聞こえ、玄関に出たところこのような状況になっていた。
まず武尊がいるのは分かる。昨日、澪さんが武尊を迎えに生かせると伝えてくれたからな。だが...この執事風の人は誰だろう。いや、おそらくは武尊の執事なんだろうが...
「.......紹介するぜ、俺の執事をやってくれている姫百合 雉隠さんだ」
「ご紹介に預かりました、雉隠という者です。呼び名は何でも構いません」
何かスポーツでもやっていたのだろうか、声からいぶし銀な気配を漂わせながらも、ボディビルのような筋肉質の体つきをした壮年の男性、雉隠さんはそう言い、まるで僕達が貴族であるかのごとく、優雅な一礼をした。
「.......じゃあ、研究所に行こうぜ........」
「車の用意は出来ています、坊っちゃん」
「ぼっ...」
「..........」
おそらく、この人が原因なのだろう。冗談で坊っちゃんと呼んだ時のあの武尊の表情からして、そもそも敬われることに慣れていないらしい。修行僧か何かのような苦悶の表情を浮かべた武尊は、果たしてそれ以上何か言う事はなく、黙って用意されていた黒塗りの高級車に乗り込んでしまった。
「では鏡面様、天宮様もこちらへ」
「苗字は呼びにくいと思うので望門でいいですよ、では失礼して」
「あっ、わ、私も社でいいです!」
「...畏まりました。では、私めが運転を務めさせていただきます」
僕達全員が車に乗り込み、雉隠さんが扉を閉め、運転席へと座った。車は駆動音を鳴らしたかと思うと、雉隠さんの運転により研究所へ向けて走り出した。
「姫百合、皆を連れてきたことに礼を言う」
「いえいえ主様、この程度朝御飯を食べることより簡単です」
昨日も来た部屋の中で、雉隠さんと澪さんがそのような会話をしている。そんな中、僕と社は先程渡された研究員の服を着用し、武尊は雉隠さんが去ることに対し内心喜んでいた。
今日から本格的に研究員としての活動が始まるらしい。学校の方は研究所のネームパワーでなんとかなるようだが...本当に、至れり尽くせりで申し訳ない。
「...それで、今日はどういった仕事を?」
働くからには、やはり全力で取り組まねばならないだろう。そんな思いを抱きながら、自分がやるべきことを聞いたのだが...
「あぁ...今日は適性、及び魔法について何か分かったことをレポートに書いてくれ。なにぶん珍しい適性を持っているようだからね、まずは己を知るところから始めよう。あ、申し訳ないが社君は別行動だ。このあと部屋に残って待機していてくれ」
おそらく本来の仕事ではないだろうが、澪さんは僕が16年もの間適性が分からなかったことに少しばかりの罪悪感を感じているようだ。研究者としての興味もあるのだろうが、彼女は朗らかな口調でそう言った。
「了解です、昨日言っていた「回路」はどこにありますか?」
「そこの机の上だ。試作品だから使い潰してしまっても構わないよ」
「ありがとうございます」
僕は必要以上のことは喋らないように気をつけつつ、昨日の夜に僕の魔力の「回路」を作ったと言っていたため、仕事用とは思えない簡素な木の机からそれを手に取った。澪さんへ感謝を伝え、社に別れの言葉を告げた後、僕はその部屋を後にした。
姫百合 雉隠さんは私が気に入ってつけた名前の一つです
姫百合→百合の花、雉隠→キジカクシでトリテレイア(ブローディア)を表しています
ちなみに社ちゃんの名前の由来は天宮→神社、社→家白という意味です




