ドキドキ家族報告
教会からの帰り道、馬車の中で俺は頭を抱えていた。
(なんだよ「支配」って)
絶対にやばいやつじゃん。
たまたま前世の知識に加え実家の書斎の本で読んだ本に書いてあった事で俺は知っていたが、幸い教会にいた人たちの中でそれを知る人はいなかったようだ。
司教だけは眉がぴくぴくしていた気もするが気付かなかったことにしよう。
聞き慣れないスキルを授かって物珍しそうにする人はいても警戒してくるような人は見えなかった。
スキルの名前を知っていても具体的にどんな事が出来るのかは分からない。
本にはそこまで書いてなかった。
あくまで七つの大罪「強欲」というスキルの系譜に「支配」というスキルがあるとだけ。
ただこれ相当に見栄えが悪い。
まず字面が非常に良くない。
聞いたことないスキルで何が出来るか分からない現状だとしても「支配」という言葉が印象的に良くない。
(これ良く聞く転生ものの追放パターンかもしれないな)
憂鬱な気分で俺は馬車に揺られながら帰った。
屋敷に帰ると家族総出で迎えてくれて夕食となった。
見た目は美味しそうなのに喉を通らない。
悶々としているところに父がストレートに聞いてきた。
「フェイよ、今日の儀はどうだった?」
うっ、ストレート過ぎて誤魔化しようもない。
諦めた。
「支配のスキルを開示されました。」
…
「…そうか」
父は俯いた…
「それってどんなスキルなんだ?」
気になった長兄が聞いてきた。
「詳しくは知りませんが、書斎にあった本に『強欲』というエンシェントスキルの系譜スキルのようです」
「エンシェントスキルだって?!」
驚く長兄をよそに
「『強欲』に『支配』かどんなスキルか分からないが名前からして穏やかではないな」
次兄が呟く。
そう思うよな。
「例えどんなスキルであってもスキルはあくまでスキルです。使用者が正しくあれば問題ないでしょう?」
そうポジティブに返してくれたのは、母であるミリア・リフ・スカーレットであった。
「その通りだ。貴族として恥じる事をするでないぞ」
「はい」
良かった。
追い出されるなんて事にはならなそうだ。
そう俺は安心した。
次の日の昼食。
「フェイには来月には屋敷を出てもらう」
父がそう告げた。
あれ?
いつの間にか実家追放ルートに戻った?
「王都の学園に通うのだ。準備をしておきなさい」
あぁ、そういうことね。
びっくりした。
危うく床に転げ回って泣きじゃくるところだったわ、いやしないけどね。
気持ち的な問題よ。
「学園ですか?」
「そうだ。グラムもウィルもお前と同じ歳の頃に学園へ通っていた。そこで色々学んでくるといい。それと王都ならば図書館もある。そこでフェイのスキルも調べてみるといい。どんなスキルにもより良い使い道はあるはずだ。」
「わかりました」
「フェイのスキルは用途が分からぬ上に字面が良くない。良くない輩に絡まれそうになったらすぐに便りを寄越せ。すぐに向かおう」
「ありがとうございます」
良い父で良かった。
昼食を食べ終え、領地の北へ向かう。
学園に向かうまでに出来る限りスキルを把握しておこうと思う。
『支配』
まず支配というからには、何かしらを支配出来るのだろう。
ただ現状それが何をどこまで支配出来るのか分からない。
なので、色々試していく事にした。
まずは一般的なとこで支配といえばモンスターテイマーだ。
うちの領地の北にはクリスタの大森林と呼ばれている大森林がある。
手前であれば弱い魔物しか現れないが奥に行くにつれて高ランク冒険者でも苦戦するような魔物が出る高難易度指定をされている森だ。
そんな森の近くであるこの領地に住んでいる領民の殆どはその辺の低ランク冒険者より強い。
定期的に来る新人冒険者を鍛えてあげられるくらいには強い。
この国、ミルシェ王国の冒険者ギルドでDランクからSランクまでランク付けされておりBランク(中堅層)への昇級試験として良く使われているため、辺境ではあるが人はそれなりに来る領地となっている。
ちなみにここの領民は子供の頃からこの森には入っている。
俺も例外ではない。
定期的に父や兄弟と共に魔物狩りに出かけている。
森周辺であれば問題ないだろう。
森の周辺には基本的に弱い魔物しか現れない。
スライムやゴブリン、レッサーウルフなどD〜Cランクモンスターがメインである。
たまにオークやアースウルフなどBランクモンスターが森の氾濫により出てくることもあるが、領民の大人達にはそこまで脅威ではない。
ステータスを確認しておこう。
「ステータスオープン」
名前:フェイル・ドミネ・スカーレット
ユニークスキル:支配
スキル:パッシブ耐性(火、水、土、風、毒、麻痺)
火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、魔力制御
よし、家族に指導してもらったおかげである程度の魔法属性は手に入れている。
モンスターをテイム出来るなら移動に頼れそうなウルフをテイムしたいな。