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第一王女マリナ

その後、王都ミシェルへ向かい次の街へ向かったのだが、ここでもまた一悶着起きた。


わざわざ遠回りに王都へ向かったというのに、王女様に見つかり王都まで同行する事になってしまった。

会いたくなくて第一王女に向かわせた街には立ち寄らず、迂回したルートで進んだのにも関わらず、次の街の宿で待ち構えていた。


宿で取った部屋の扉を開けたら、マリナ第一王女が見惚れるような綺麗なお辞儀をして立っていた。

「お待ちしておりましたわ。フェイル様」

ぱっと見、端正で綺麗な顔で笑顔に微笑んでいるが、直感で分かる。

これは顔は笑っているが心が笑っていない。


驚きのあまり、思考が一瞬フリーズしてしまった。

(なんでバレた?)

第一王女の関係者に行く先は話していない。

そもそも街に戻ってから急遽変更した為、御者か使用人、護衛のパイソンさんたちしか知らないはずだし、そもそも連絡を取るような暇は無かったはずだ。


情報もなく、俺の居場所を突き止めるどころか、行き先へ先回りされていた。

となれば、答えは一つしかない。

本人しか持ちえない能力。

ユニークスキルしかないだろう。

探知系統の可能性もあるが、先回りされていた事を踏まえると、予言や予知系統のスキルを持っているのだろう。


ということは、自分たちを避けて街を迂回して行くことはバレていた訳だ。

そして、この笑顔である。

怒っている時の母を思い出す。

(これはヤバい。)


何が、とは言えないが非常にまずい状況である事は間違いない。

母であれば対応策はあったが、目の前の少女に関しては一切情報が無い。

母と同じ対応策が通じない事だけは分かる。

救助した恩が一変して罰にならない事だけを祈っておこう。


「ごきげんよう、第一王女様」

とりあえず、まずは挨拶だけはしっかりしておく。

その上で逆鱗に触れぬように下手に会話を試みる。

「無事に街に着いたようで何よりでございます。しかしながら何故、宿にてお待ちになっていたのでしょうか?」

「あなたがこっちに来ないから、こっちから来てあげたのよ。褒美を取らせようとしたのになんであなたは逃げたのかしら?」

(呼んでないんだよな〜とは言えないな)

「左様でございましたか。しかしながら、私もスカーレット家の者として当然の事をしたまでで褒美を頂くまでの事はしておりませんので、お気になさらずに」

「私が気にするのよ!王家の者を守る義務が貴族にはあるから守るのは当然なのは事実よ。しかしそれと同時に『成果には報酬を』も当然なのよ。だからあなたには王家の者を守った正当な報酬が与えられるべきなの」

意外と律儀なんだなーとか思ったりはしたが口には出さない。


「それで?なんであなたは私を避けているのかしら?」

「いえ、避けてなどおり…「いいえ避けていたわ」

はっきり言い切られた。

「あなたは街に戻ってから、わざわざ私たちに会わないように遠回りにルートを変更したでしょ。知っているからはぐらかさないで答えて」

知っている。

やはり予知系統のスキルでも持っていたのかもしれない。

これ以上誤魔化すのは得策ではない。

諦めて素直になる。


「恐れながら第一王女様」

「マリナでいいわ」

「では、マリナ王女様。正直なところを申しますと私は平穏を望んでいます」

「平穏?」

「はい。貴族ですが僕は三男です。領主は継がずに兄弟たちの手伝いなどしながらゆったりとした将来を目指しています。しかしながら今回、王女様を助けた事により褒賞などを頂くと他貴族の要らぬお節介やちょっかいなどを受け僕の望むまったりとした平穏の夢が揺らいでしまうのです」

「だからあなたは私を避けたと…?」

「その通りです。目立たず余計な波風を立たせず静かに過ごしたいのです」

「そう…」


理解してくれただろうか…

正直なところ、半分くらいは真面目に話した…

面倒事は御免だ、と言うのが本心ではあるが正直に言うと色々問題が出てくるのでぼかして伝えた。


「そう、あなたの意見は分かったわ。でも、恩賞に関しては受け取ってもらうわ。これは王家としての立場もあるので拒否権はありません。しかし、あなたの意思を尊重して私が直接お父様に伝えて穏便に出来るよう計らってもらうわ。それならいいでしょう?」

「そ、それならまぁ、助かります」

まぁ、見つかって捕まった以上、こちらに選択権は無い。

しかし、こちらの意を汲んでくれただけよしとしよう。


「では、後日改めてお伺いいたします」

「あら、そんな他人行儀にしなくていいのよ?王都へは一緒に行くのだから」

「は?」


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