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決着からの後処理

全身が痛い。

衝撃を直に受けなかったとは言え、衝撃波は相当なものだった。


ギリギリ間に合った。

衝突の直前に土魔法で穴を掘る。

しかし、普通に掘っていたのでは間に合わない。

なので穴を掘りつつ、穴を掘った土で両側の街道側にスライドさせて穴を深くする為に、傾斜を作って子供一人分の穴を作る。


穴を掘って横になり、街道の両サイドからくるカメレオンホルスターの挟み撃ちを紙一重で避けた。

視界のいい街道でカメレオンホルスターは避けられるとは思わなかったようで、正面衝突により両方とも気絶はしなかったもののふらついている。

怒り心頭で突っ込んでくれたおかげで隙が出来た。


この隙を利用して一頭でも討伐しておきたい。

剣を構え走り出す。

今の俺の腕力で2mを超えるカメレオンホルスターの首を斬るのは難しい。

なので狼相手に使った手を使う。

今回は体格差が大きい為、剣の通りやすい場所を狙う。


目か口を狙うのがいいだろう。

正面衝突により脳震盪でも起こしたのか、ふらついている今なら狙えるはずだ。

魔物の体表がどれだけ硬いか分からない為、今回は始めから剣に魔力を流していく。


(よし、今だ)

狙い通り、一頭の目に剣を突き刺し火魔法を流し込む。

体内から焼かれる痛みにカメレオンホルスターが頭を振り暴れる。

振り飛ばされないように、頭にしがみつくがあっさり振り飛ばされてしまう。


なんとか受け身を取り、状況を把握する。

剣を刺されたカメレオンホルスターは最後の悪あがきだったようで、頭を振りつつ倒れた。


(よし、一頭は終わった)

そして、もう一頭に意識を向ける。

しかし、もう一頭は動かない。


警戒しつつ近付いていく。

そして様子を見るともう一頭のカメレオンホルスターは立ったまま白目を剥いていた。

見たところ、もう一頭は元々傷を負っていたようでどうやら、正面衝突のダメージに耐えられなかったようだ。


これでようやく一息つけそうだ。

護衛の生存を確認する。

襲撃者同様、気絶してはいるが無事のようだ。


とりあえず、先に襲撃者を拘束する。

その上でパイソンさんたちへ合図を送り、逃げる準備をする。

パイソン側で対処が出来なければ、すぐに近くに街へ逃げ込む作戦だ。


パイソン側からの合図は終了の合図だった。

急いで逃げ出す必要が無くなった為、一安心する。


(ふぅ、無事終わったか)

パイソンさんが向こう側から手を振りながらこっちへ来る。

「坊ちゃーん、無事ですかい?」

「なんとか、無事だったよ。そっちも大丈夫だった?」

「こっちは余裕でしたよ。ってこれ、カメレオンホルスターじゃないですかい。よく無事でしたね!?」

「ギリギリだったよ〜」


騒ぐパイソンさんをスルーしつつ移動する準備を始めてもらう。

そして、こっちが問題だ。

救助した馬車だ。

家紋は見たくも無かった。

龍に剣と冠が描かれている紋は一つしかない。

ミシェル王家の家紋である。


(うわぁ、まじか。もう帰りたい)

普通の貴族とかなら恩賞目当てで手放しで喜ぶところだろう。

だが、今の自分の状況を鑑みるに出会いたくない一族筆頭である。

しかし、見てしまった以上挨拶しない訳にはいかないだろう。

護衛にもしっかり顔を見られているし、馬車の中のカーテンがゆらゆらと揺れている。

間違いないく中から見られていた事だろう。


諦めて馬車の前で片膝をついて跪く。

「ミシェル王国の馬車とお見受けする。私はスカーレット家三男のフェイル・ドミネ・スカーレットと申します。救援に馳せ参じ、脅威は去りました。お目通りを願いたい」

馬車の中でバタバタ聞こえる。

何か慌てているのだろうか?


少し経ち、馬車の扉が開きメイド服の女性が現れる。

それに続いて、とても端正で綺麗な顔立ちの少女が現れた。

「私はミシェル王国、第一王女のマリナ・ミシェルと申します。こちらは侍女のメイリン。この度は救援感謝します。王都に戻り次第、褒美を…」

「いえ、貴族として当然の行いをしたまでですので」

「それでは、王家の者としての…」

「王女様、襲撃者の討伐をしたとはいえ、まだ安全ではありません。まずは早急に街へ戻り、護衛の治療を行った方が良いかと」


このまま話を続けるのは良くない気がして、話を切り上げる為にあれこれ理由を挙げていく。

そうして、しれっと街で別れておけばしばらくは時間稼ぎも出来るだろう。


「そっそうですね。では、一緒に街へ…」

「いえ、私は襲撃者の身元確認など後処理をしてから向かいますので、先に街へ移動を」

「…わかりました。では、先に街へ向かいますね。後の事はよろしく頼みますね」

王女は不満そうな顔をしていたが、自分の立場をしっかり分かっているようで、すんなり受け入れてくれた。


そうして、意識を取り戻した護衛を連れて王女は街へ向かっていった。

「さて、落ち着いたところで後処理をしていこうか」

「坊ちゃん、逃げましたね?」

「なんの話かな?」

パイソンさんがニヤニヤしながらこっちを見てくる。


「後処理なんて俺らに任せて、王女様と一緒に街に向かってくれて良かったんすよ?」

「いやいや、俺はパイソンさんたちの雇い主だからね。放り投げる訳にもいかないよ」

「まぁ、そういう事にしておいてあげますよ」

パイソンさんは終始ニヤニヤしていた。

イラっとしたので、後で何かしら仕返ししてやろうと心に決めた。


とりあえず、襲撃者を馬車に積み込み、カメレオンホルスターは積めないので、パイソンさんたちにお願いして持ってきてもらう。

第一王女がいるから、とは言わずに第一王女が向かった王都の方の街ではなく、元来た方の街へ戻る。


襲撃者は街の駐屯所へ連行し、カメレオンホルスターは冒険者ギルドへ持っていく。

襲撃者に関しては向こうで取り調べから始末までやってくれるようで、全部放り投げてくる。


討伐した魔物は基本的に、冒険者ギルドで買い取ってもらうのが一般的である。

カメレオンホルスターは擬態能力が高い為、あまり討伐されることがないらしく、結構な高値で売れた。


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