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いざ、王都へ

馬車に乗り王都へ向かう。

我が領は隣国との境界に当たる辺境で王都までは馬車で2週間はかかる。

毎日、宿に泊まれる…なんて事は当然無いので野宿する事を踏まえて、父が冒険者の護衛を手配してくれた。


ブラッドガーディアン。

Aランクのパイソンをリーダーとした冒険者パーティである。

お抱えという訳ではないが、スカーレット家と懇意にしていて、よく護衛など依頼している。

俺も顔見知りで仲良くさせてもらっている。


「久しぶりですね、坊ちゃん」

「パイソンさん、久しぶりー」

「今回、坊ちゃんが王都に行くって聞いたんだけど、何しに行くんですかい?」

「王都の学園に通う事になったんだ」

「なるほど、それで今回の護衛依頼なんすね」

「うん、よろしくね〜」


荷物を馬車へ積み込み、出立の準備が完了する。

アイリスの方も準備は終わったようだ。

「お待たせしました、ご主人様」

「それじゃあ、出発しようか」

「はいっ」

馬車に乗り込み出発する。


王都までは2週間程かかる。

のんびりとした旅路だ。

護衛を雇っているが貴族の馬車を襲う野盗は多くはない。

野盗は貴族を襲って身代金の要求なんて面倒な事はしない。

商人の馬車を襲撃して直接、金品などの商品を奪う事が多い。


貴族の馬車は大抵、貴族紋を馬車に刻印している。

なので、商人の馬車と間違われて襲われる事もない。

だが、襲ってくるのは野盗だけではない為、護衛を付けるのが一般的だ。


一般的であって、全く襲われないという訳ではない。

街道沿いで街と街の中間地点辺りで、森に近く都合よく待ち伏せが出来そうな場所で、馬車が襲撃されているのが見えた。

遠目なのではっきりとは見えないが馬車に家紋らしきものが見える。

つまり貴族の馬車である可能性がとても高い。


人の欲とは業が深いもので、家督争いによる暗殺や怨恨による襲撃など、人は理由さえあれば…たとえ理由が無くたって、人は他者を貶める事が出来る生き物だ。


(正直、関わりたくないなぁ)

貴族の馬車が襲われている。

何も考えていない野盗風情なら、ちゃんとした護衛を雇っていれば問題はないだろう。

だがこれが先の暗殺や計画的襲撃だった場合、大抵そういう事にはその道のプロが雇われる。

つまり敵戦力は未知数となり、そこへ救援に向かうということは、向こうの事情に関わるということ。

下手したら、こちらまで飛び火する可能性があるのだ。


ただ遠目で見える雰囲気では、どうも後者の気配が濃厚だ。

知りもしない他貴族の厄介事に首なんて突っ込みたくない。

とはいえ、王都までの道はこの道しかない。

頭を抱える。


「坊ちゃん、どうしますかい?」

パイソンさんは貴族でないものの、うちと懇意にしている為、貴族同士のしがらみなど面倒事があると、うっすらと理解してくれている。

俺、個人としては一ミリも関わりたくない。

でも、今は貴族の馬車に乗っている。

つまり周りからは貴族として見られる。

たとえ、当主の息子であったとしても、貴族の一員である事に変わりはない。


仕方ない。

「俺は貴族だ。やる事をやるしかないよ」

「まぁ、そうでしょうな」

「手伝ってくれるかい?」

「坊ちゃんの頼みだ。出来る事はしますよ」

「ありがとう。パイソンさん」


近付きつつ向こうの状況を見る限り、まだ戦闘は続いているようだ。

手持ちの手札で最高戦力はAランク冒険者のパイソンさんなので、パイソンさんに正面戦闘を切ってもらい、俺は後方に回り込み襲われている貴族の援護に回る。


シンプルだが時間もあまり無い為、急いで行動に移す

「申し訳ないけど、パイソンさんたちに正面を切ってもらって時間稼ぎをよろしく。俺が後方に周り込んで向こうの援護に回るよ。向こうと合流したら火魔法で空に合図を出すから、勝てそうにない相手だったら撤退をしてね」


「おいおい、坊ちゃんそりゃないぜ。俺が負けるって?」

「パイソンさんが強いの知ってるよ」

「それじゃあ「でも、パイソンさんは人殺しじゃない」」

「そりゃそうですけど…」

「相手が対人のプロだったら、不意を突かれる可能性もあるから、パイソンさんたちがそこまで危険を冒す必要はないよ。いいね?」

「わかりやしたよ」

「それじゃ、作戦開始だ」


「アイリスはここで待っててね」

「お気をつけください、ご主人様」

俺はそっと馬車から降りて街道から距離を離して裏に回り込む。

そして、それが気付かれないように、パイソンさんたちが大立ち回りしてくれる。

パイソンさんたちは上手くやってくれた。

向こうの戦力はパイソンさんたちを脅威と認識してくれて、戦力の大半をパイソンさんの方へ向かわせた。


回り込んだ俺は声を掛けつつ状況を確認する。

「スカーレット家が救援に来た!士気を下げるな!」

馬車はまだ無事の様だ。

こちら側の襲撃者は4人、護衛は2人俺を入れて3人にしても数的不利ではある。

だが、見た感じ相手は相当疲弊しているようで、倒せなくとも撃退なら出来るだろう。


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