束の間の平穏
翌日からアイリスは使用人としての指導が入った。
俺はといえば、学園に向かう準備をしつつ、スキルの修練に励んだ。
支配スキルに関して分かった事は、魔法と同様に熟練度や意志の力によって、対象の支配難易度が変わるようだ。
物体自体を支配スキルで動かす事は出来ないが魔力支配で外的要因としてなら動かせる。
奴隷の所有者変更も出来たし、まだ思い付きはしないがやれる事はもっとたくさんありそうだ。
ただやれる事が多い上に、名前からの印象含めて悪用ができてしまう。
もしくは父に言われたように、利用しようと近付いてくる者も現れるだろう。
王都の学園にも行く訳だし、今後の対策は考えないといけない。
前世と違い幸せに生きたいと思っている。
でもそれは悪事に手を染めたり、誰かを不幸にしてなりたいと思っているわけではない。
貧乏よりは裕福になりたいけど、目立ちたくはない。
(考える事は山積みだなぁ)
そう思いつつもこれからの人生にワクワクしている自分もいる。
前世では、恵まれない家庭環境で生きる為だけに仕事をし、目的もなく惰性で生きている。
そんな風に見える人生だったと思う。
実際、自分でもそう思う。
だからって訳じゃないけど、今世はもっと自由に生きてみたいと思ってる。
良い家に住んで、良いお嫁さん貰って、良い子供に恵まれて幸せな家庭を築く。
そんな将来を俺は夢に頑張ろうと思う。
その為にはこのスキルとは内的外的、共に上手く立ち回る事が大事だろう。
だがまずは、目の前の訓練に集中だ。
意志の力はともかく、熟練度は日々の努力である。
アイリスを救う際に魔物の魔力をかき乱した時のように、自分以外のものへの魔力干渉。
これは自身の能力の練度が大きく関係するようで、話をして兄や父に手伝ってもらい検証したところ、兄たち相手だと支配は出来ないもののある程度、魔力干渉し動きに制限をかける事は出来たが、父に関しては全く魔力干渉する事が出来なかった。
その為、兄たちや父に協力してもらい毎日のように訓練している。
学園出立まで熟練度上げに勤しむ事となった。
ステータス
名前:フェイル・ドミネ・スカーレット
ユニークスキル:支配
スキル:
パッシブ耐性(火、水、土、風、毒、麻痺)
火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、魔力制御、魔力支配(New)、魔力変換(New)、鑑定(New)
魔力制御と魔力支配を鍛錬していく過程で珍しい鑑定スキルも獲得する事が出来た。
魔力を制御及び支配するには魔力というものをしっかり知らなくてはならない。
その為、自分及び周囲の魔力と向き合い瞑想のような事をしていたら、偶然にも獲得出来たのである。
鑑定スキルはかなり有益なスキルだ。
商人はもちろんのこと、冒険者や貴族ですらお抱えとして雇いたがる。
もし習得出来れば、まず生活や職に困らないと言っても過言ではないくらいに鑑定スキルは有益なのだ。
ただ鑑定スキルにも勿論、熟練度が関わっているらしく練度が高くなると、潜在特性や熟練度の数値化、鑑定情報の詳細化など行えるようになるようで、是非ともこっちも熟練度は並行して上げていきたいものだ。
そんなこんなで色々していたら学園に向かう日も目前となった。
向かうにあたって使用人を連れていくかで少し揉めた。
一応、俺には専属使用人としてアイリスがいる。
ただアイリスは使用人としての経験値はとても低い。
なんせ、ついひと月前までは奴隷だったのだ。
身内ではない人間が多くいる王都に行くのは精神的に良くないんじゃないかと思い、アイリスに領地にいるのはどうかと伝えたが断固拒否された。
「私はフェイル様の奴隷であり、専属使用人です。お仕えする方と離れる訳にはいきません!」
「あ、はい」
想像以上の勢いで押されてしまった。
その後もたじたじながらも説得を試みてみたが、頑なに付いていくと…結論、俺が折れました。
あれ?俺が所有者でアイリス奴隷だよね?
まぁ、本人の意思なら尊重するけどね。
次兄「将来は尻に敷かれそうだな」
長兄「…」
母「あの子は逞しく育ちそうね〜」




