79 ダンジョンもどき 4
「気を付けてな」
「分かってる」
なんか、ハティは空間の魔力を吸えなかったのが悔しいのか、ちょっとムキになっている。こういうときは好きにやらせた方が良いってのはなんとなく分かってる。ただ、対象が魔物なだけに、少しばかり要注意だ。
ハティは走っていくそのままの勢いで、洞窟を駆け下りる。
「やっ!」
ハティが近づいていくと流石にキノコも気が付きハティの方を向く。しかしハティのスピードに乗った攻撃に何も対応出来ずにスパンと胴を切り裂かれた。
胞子とか少し怖かったが、特にキノコはそういった攻撃をすること無く倒れる。する暇も無かったのかもしれないが……。
「うーん。もしかしてまじでそいつ弱い?」
「レベル上げには意味ないかも……。あ。また炭だよ?」
「せめてもうちょっとなんか落ちてくれると嬉しいんだけどな……」
キノコを倒した俺達は再び入口付近へと戻る。雨は先程と比べれば少し弱くはなっていたが、依然としてまだ降っている。
「もうちょっと魔法の練習してていい?」
「じゃあ……。次のキノコ生えるまでね」
「了解」
四回目となれば、流石にまたキノコが生えるだろうと自然に考えるもんだ。だいたいポップするまでに一時間くらいだろうか、それまでぎっちりと魔法の練習をすることにする。
気絶までは出来ないが、軽く吐き気がするくらいまで俺は何度も魔法を使い、その度に呼吸法で一気に魔力を吸収する。甘い魔力ポーションをがぶ飲みすることを考えれば超素晴らしい練習場じゃないか。
それにしても。やっぱりこうやって撃ち放題練習できるというのは素晴らしいな。普段は魔力が尽きるまでの僅かな練習しかできない。特に散弾銃のタイプは消費魔力も大きいため、たまに数発撃つくらいだった。
撃てば撃つほどイメージの作りもこなれて来る。
まじでこれは助かるわ……。
本気でやってると、あっという間に時間が来たようだ。
「止まって! 来たからっ!」
「ああ、キノコ?」
「うん」
そう言うとハティは一目散に洞窟の奥へ走る。
俺が追いついたときには、もうキノコは消えていた。
「ラドっ!」
「な、なんだよ」
「ちょっみて、ほら。これっ!」
ハティの手には、魔石が一つ乗っていた。ただ、ちょっと普通の魔石とは色が違う感じがする。だけど、間違いなく魔石だ。
「お? 炭じゃなかったの?」
「うん、当たりだよねっ。これ!」
「いやあ、どうなんだろう。そんな大きくないじゃん」
「でもほら、この魔石、多分属性付きじゃないの? 透かすときれいな緑だよ」
「……え? 属性?」
確かに色が違うと感じたのは属性だったか。属性の魔石はかなりレアらしく俺も見たのは始めてだ。ハティがよく分かったなと思ったが、ハティの言う通り属性付きの魔石なのだろうと感じる。
属性付きの魔石は、普段あまり市場に出回る事は無いのだが、高級な魔道具にはたまに使われたりする。あとは、魔法の杖も、その属性に特化したタイプの物だと、属性付きの魔石を利用して作られたりするという。
緑ということは、木とか樹木系の魔石なのだと思うが……。
炭だけだと思っていただけに、なかなかあのキノコは有用性が跳ね上がる。
……。
……。
ちょうど雨も止み、頃合いと判断した俺達はそのまま館へと帰った。属性付きの魔石に関しては、急ぐこともないので、スコットが来たら相談することにする。
それよりダンジョンについて調べないといけない。
俺は、いつものように書庫でダンジョン関連の本を探し読み耽る。以前も見たが、ダンジョン関連は魔物や罠の体験などを記した書物が殆どでなかなかダンジョンのシステムに言及しているものが見つからない。
そんな中、役に立ったのはまたあの「マフナ・コナ」の書籍だ。「魔脈とダンジョン」と題された本はかなり近いものを感じる。
前回読んだ「魔素の発生源」では魔脈についての考察が深く書かれていた。その中でダンジョンに関しては、魔脈の位置に沿ってダンジョンが存在するような事が書かれていたくらいで、そこまでダンジョンについての事が深掘りはされていなかった。
それに対してこの本はダンジョンに焦点をあてているようだ。
まず話は魔素溜りとダンジョンの関係から話は始まる。
まさに今回は、俺が魔力を魔素溜りに吸わせてしまったところで、何かが発展しちゃったのではと考えているのだが。どうやらそういった簡単なダンジョンは稀に存在するようだ。
この本ではそんなダンジョンを「泡沫ダンジョン」と呼んでいる。
ダンジョンと泡沫ダンジョンの違いについてだが、この本ではダンジョンコアが存在するのがダンジョンで、存在しないものを泡沫ダンジョン、としている。
ダンジョンコアというのがどういうものなのかはわからないが、あそこにはダンジョンコア的なものは見つからなかった、そう考えると泡沫ダンジョンと考えられるのかもしれない。
ちなみにダンジョンはダンジョンコアを破壊されることでダンジョン自体が不安定になる。ダンジョンの規模によっては再びコアが生成される場合もあるらしいが、ダンジョンそのものが崩壊することもある。
そのため、どこのダンジョンでも、「ダンジョンコア」の破壊に関してはかなり厳しく禁止されている。ダンジョンからのドロップ品がこの世界では文明を支える大事な物として存在している。
ダンジョンが国家の経済すら支える存在だと聞けば当然だろう。
ダンジョンは基本的に国で管理されており、ダンジョンコアの破壊は極刑すらある重大な犯罪として扱われている。
泡沫ダンジョンかあ……。
「魔素の発生源」でも書かれていたが、ダンジョンそのものの性質というのはとても自然なものとは考えられず、神などの何らかの意思の介入の可能性が無視できないとある。
その中でダンジョンをダンジョンとし認定するには何個かの条件があるようだ。これはマフナが自分で考えた理論なのか、それとも一般的なものなのかはわからないが、割としっかりと定義づけされている。
1.ダンジョンコアが存在する。
2.ダンジョン内で魔物を生成できる。
3.ダンジョン内で生成された魔物は、殺されると消え、稀にドロップ品を落とす。
4.ダンジョンボスが居る。
5.ダンジョン内の魔素濃度は自然界より数倍の濃さを持つ。
6.ダンジョン内の地形や罠などの構造物は破壊されても時間とともに元に戻る
泡沫ダンジョンは特にダンジョンコアが無いものが殆どで、いずれ時とともに消えてしまうという。
コアが無いのになぜ存在するのかと言うと、それが魔脈からの魔素の流入らしい。それが魔素溜りが消えるのと同じで、魔脈の圧が落ち、ルートが消えてダンジョン自体も消滅するという話だ、そのため「泡沫」と名付けたらしい。
魔素溜りから、泡沫ダンジョンへの進化は、噴出する魔素が多いことや、他に何らかの刺激で異常発生として起こると書かれていた。そしてそれについてエルフに泡沫ダンジョンを作る秘術が残っているとされていた。
そして、世の中のダンジョンはもともと数万年の間に発生しては消えていく泡沫ダンジョンが、さらに何らかの要因で、形質異常として進化したものではないかとマフナは記している。
ただ、流石にマフナも泡沫ダンジョンが、通常ダンジョンへと進化した現場などを見たことが無いためあくまでも仮説の中での話だと締めていた。
……。
原作では、マフナはエルフの集落で暮らしていた。これはもしかしたら泡沫ダンジョンを作ることが出来るエルフの秘技を求めていたのかもしれないと感じる。
それにしても……。
この本の内容から考えると、あのダンジョンもどきも消えてしまうのかもしれないな。ちょっと寂しいぜ。
あるうちになるべく通って魔法の練習をしまくりたい。




