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 俺に魔法を撃たせ、次弾を用意する間に囲んでしまう。そういう作戦なのだろう。結果仲間で勝ち取れれば良い。そう思ったとしても。

 実際に撃たれることを想定すれば男たちの動きに戸惑いが混じる。


 俺はそれを見越して腰の剣をすらりと抜く。作ったばかりの太極剣だ。


「なっ!」


 意外だったのだろう。魔法使いと思ってた相手が剣を手にしたんだ。

 脅しが効かないなら手心を加えない。俺はビンと剣を鳴らしながら一気に目の前の男の喉を突く。魔力の乗った剣先は朝日を受けギラリときらめき、いともたやすく肉を貫く。そのまま横に払いながらもう一人も袈裟斬りにする。


 すぐに飛び掛かろうとしていたのはずの後続の三人は、予想外の展開にたたらを踏む。


 それを見ても俺は止まらない。何かをしようとしていた二人。先に膝を撃ち抜いた男たちに兇刃を向け後顧の憂いを断つ。そのまま剣指をリーダーに向けた。

 状況を見て慌てて立ち上がるリーダー。お前の順番はまだだ。


「ぶちかませ」

「ぐ!」


 さすがだ。魔力視によって俺の魔法の発動も見れるのだろう。男は体をひねりながら剣を抜き銃弾を弾く。それを見ながら足は突っ立ったままの三人に向ける。


「くっ。来るなっ」

「もう遅い」


 目論見通りだ。あのリーダーの男以外はそこまで使えない。俺のスピードに全くついてこれない。一人、二人と仕留めていく。心の折れた人間を斬るのは少々抵抗はあるが、スイッチが入った今、俺は躊躇無く剣を振るっていた。


 最後の一人を仕留めた俺に対してリーダーがようやく間合いに入ってくる。その目は怒りに狂っていた。


「くそっ。魔剣士とはなっ!」

「護衛もなしに二人だけで街道を歩いているんだよ? 戦えないわけが無いじゃん」

「この人数差だぞっ!」

「あんた位のが集まってたら、やばかったかもね」

「ふざけやがって」


 男の剣が唸りを上げて振り下ろされる。俺はそれを避けながらじっと見極める。返す剣が振り上げられるが俺は半歩後ろに下がりながらそれも避ける。薄皮一枚と言いたいところだが俺にまだそんな間合いの見極めは出来ない。せいぜい大豆一つくらいだ。


 ――可能な限り最小の動きで、相手の攻撃を避けろ。


 最近スコットがハティにやらせようとしている動きだ。普段は魔法をメインにやってる俺だが、流石にその練習は見ていて気になっていたんだ。かっこいいからな。


 それに俺の剣は軟剣のたぐいだ。相手の攻撃をぎっちり剣で受けるには向いていない。避けて相手のスキに切り込む方が向いているんだ。


 男は怒りに駆られ、直情的な攻撃になっている。こういうのは御しやすい。男の動きに合わせ、体を左にずらす。向左平帯 (シャンズオピンダイ)の手。男の鮮血が飛ぶ。そのまま独立掄劈ドゥーリールンピーに繋げば、相手は後ずさるしかなかった。


 独立掄劈の体勢のまま俺は相手を挑発するかのように、片足を上げニヤリと笑う。


「なんなんだ! てめえもかっ!」

「……僕も? どういう事?」

「ガキのクセに。どいつもこいつもっ!」

「えっと? 僕は攻撃されたから返しただけだけど?」

「……なんでこんなのがもう一人居るんだっ!」


 ダメだ、なんか知らないけどパニックになっている。だけどなあ、二人って……。


「その、もう一人って誰?」

「知るかっ! あの悪夢のようなガキ……。思い出したくもねえ」


 ここで俺は一つの推測をする。


「もしかして、おじさん。イタルカ解放軍の残党。かな?」

「……し、知らねえ」

「それで、シュトルツ領に、落ちのびた?」

「う、うあああああああ!」

「ちょっ!」


 図星だったのだろうか。シュトルツ領と言う言葉に男が反応しがむしゃらに剣を突き出してくる。もう俺の話を聞こうともしない。


「縛鎖のマナよ、咎人を絡み取り……」


 男の剣を捌きながら詠唱を始める。男は俺の詠唱に僅かに反応をするが力押しをすると決めたようだ。更に顔を強張らせ、果敢に斬りかかる。

 だが、そんな荒れた剣……。


「その力を封じろ!」


 剣指を男に向ければ、魔法の鎖が男に向かって伸びる。男は必死に剣でそれを弾こうとするが、そんなことはさせない。俺の剣が男の目を突けば優先順位は変わる。慌てて俺の剣を弾いたときにはその足首に縛鎖の鎖が巻き付いていた。


 男は必死に魔力を練り、俺の魔法に抵抗しようとするがやがて濁流に吞まれるように俺の魔力に流される。魔法の効果があらわれれば、すぐに男の力が抜け膝をつく。


 ――さて……。


 俺は剣を腰に差し、右手でもう一つの魔法を準備をする。


「我が魔力よ 胸襟の鎖となり その心を白日にさらせ」


 そう、自白効果を持たせる魔法だ。何か言いたく無さそうな雰囲気があったのでとっとと魔法で対処するのが良い。

 そもそも教会の連中が俺達を追って来るのを警戒しての行動なんだ。


 ただ、こいつらがバッソ達の仲間であったのなら堕ちた英雄のその後を知っておきたいというのは当然のことだ。


 ……。


 ……。


 やはりこの男はバッソ達、イタルカで革命を起こした野盗らの残党のようだ。そしてあの魔法使いサーベロと同じように元々盗賊をしていたような男らしい。

 原作と同じくバッソはイタルカの領主を討伐する事には成功したが、革命軍自体もかなりの損害を受けたようだ。

 ――サーベロの兄貴が居れば……。

 この一言に、俺はやはり原作小説の流れに干渉していたようだと悟る。

 確かに、あれだけの魔法使いがいればそれだけで革命軍にとっては戦略的にもかなり状況が違ったのかもしれない。


 そして、領主の一族を殺したバッソ達はそこから自分たちが領地経営をするまでには至らなかったようだ。バッソは革命軍を速やかに解散し、税を払えずに逃げていた農民たちはそのままそっと家族の元へ戻ったりと、ちりじりに別れた。

 その中でさすがにバッソは革命軍の頭として賞金首になってしまう。農民へと戻ることなくどこかへと消えていったらしい。


 ただ、野盗上りの盗賊たちはそのまま領主の館に居座り好き放題し。やがてファルデュラス候の軍に討伐される。その時に逃げた野盗たちの中にこの男はいたようだ。


「それで、シュトルツ領に?」

「……砂糖で景気が良いと聞いた」

「で、その子供に逢ったと」

「……そうだ」

「シュトルツ領主の息子だね?」

「……そうだ」

「どんな感じのやつだった?」

「……お前と同じだ。生意気で、大人を小ばかにして――」

「もういい」


 俺と同じなわけねえだろ。大人気小説の主人公だぞ? 見た目も完璧、人間性も完璧。おまけに強さも完璧。比べようが無いだろう。

 でもまあ、エリックがバッソと戦うことは無かったようだが、それで何かの成長が滞ったらそれはそれで困るんだ。一応こいつらがシュトルツ領に行ってくれたのは良かったかもな。


 実際エリックの実力は相当な物の様だ、さらにその周りにいる女の子も並みの腕じゃ無かったと。対バッソの時はもう少し戦争的な感じで領民達も武器を取って戦っていたが、野盗対応だとそこまでは必要なかったのだろう。


 うん。


 そうこうしている間にそこそこ時間が経ってしまっていたようだ。ガタゴトと角笛馬車の姿が見えてきた。



※剣指:剣を持ってない方の手の人差し指と中指を立てたような状態。相手のツボを付いたりする。

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