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ひねくれた愛の告白

「……そのままでいいから、聞いてくれるかな、羅夢。

 言っておくけど、今回のわたしはマジだよ。ガチでマジメだから。

 だって、だって! わたしはあなたに“本気の告白”をするつもりで、今ここに立っているから……決していつものおちゃらけでこんなところに立って、みんなの注目を一身に集めているわけではないから」


 遠くにいる羅夢をまっすぐ見すえながら――わたしは真剣な面持ちで彼女に語りかけた。

 羅夢が小さくうなずくのを見て、わたしは告白を続けた。


「でもね、強いて言うなら。強いて言うなら、この告白は“ひねくれた愛の告白”になるんだと思う。

 ……結局のところ、わたしたちは似た者同士だったんだよね。互いに素直じゃなかった。どころか、わたしたちは互いにひねくれ者だったとも言える」


 そこでわたしは息が詰まり、わずかのあいだ、感情を抑えなければいけなかった。


「わたしね、最近考えるんだ。わたしたちって、なんでこんなにも気が合ったんだろう、なんでこんなにも一緒にいたいと思えたんだろう……どうしていつもそばにいる人に『好き』を素直に伝えられなかったんだろう、ってさ。

 羅夢とケンカしてからね、そればかり考えてた」


 そしたらね、今分かったんだ。


「そのすべての答えは『わたしたちがひねくれ者だったから』で説明がつくことに……だから今からする告白は、すべてひねくれ者の柳田美希の告白。

 ――分かったね、羅夢」


 わたしはすぅと息を吸うと、一度呼吸を止めてから、一気に吐き出す。

 再びわたしは息を意識的に吸い、羅夢を見すえると――涙をこぼしながら、笑顔でひねくれた愛の告白を叫んだ。


「羅夢なんて大っ嫌い……!

 だっていつも毒舌だし、すぐに手が出るし、なんなら元不良でメリケンサックの扱いもお手の物だし、おまけに青空よりも曇り空が好きなひねくれ者だし!

 そんなあなたを好きになって、そんなあなたと一緒にいられて、そんなあなたとケンカをして……でも、そんなあなたが遠くに引っ越してしまうことを知ったわたしは、わたしの隣からいなくなってしまうことを知ったわたしは、それでも伝える――いつまでもあんたのことが好きだよ、このバーカ……!」


 言い切った。

 言い切った……ひねくれた愛の告白、全校集会で言い切った。

 これで思い残すことはない。


 ってことで、わたし……もうゆっくり休もうかな。

 おやすみ、羅夢。

 さよなら、羅夢。


 意識が薄れかけた、まさにそのとき――わたしは頬に強い痛みを感じ、たまらず覚醒した。


 えっ、わたし……今誰かにビンタされた?


 目の焦点が合うなり、わたしは目を見開いた。


 そこには――。

「バカはお前だ、このバカ!

 こんなに熱があるのに、なんで……こんなに傷だらけになってまで終業式に来る奴は、一人残らずバカだよ。このバカが!」

 目に涙をいっぱいため込んだ羅夢がいた。

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