全校集会
最初に言っておくことがある。
このとき、すでにわたしは麻衣の仕掛けに気づいていた。
それだから分かるし、それゆえに言える。
結局のところ、わたしは素直であって、まったく素直ではなかったのだ。
あの子は……麻衣は冷徹だった。
最初からあの子は、わたしと羅夢がケンカすることを見越していた。
もっと言うと、冷徹が取り柄のあいつはすべてを見越していたのだ。
「押してダメなら引いてみろ作戦」をこのわたしに伝えることで、その作戦通りに動いたわたしが羅夢とケンカすることも、わたしと羅夢の仲に亀裂が入り、気まずい関係になることも、すべて。
わたしが羅夢に“本気の告白”をするのだと、麻衣は本気で信じていた。
それだからあの子は……わたしが羅夢とケンカしたことを聞いても、何も興味を示さなかったのだ。
「あはっ、待っててね、麻衣。冷徹なあんたも動揺するような告白を……今からリアルタイムでしてあげるからね」
もっとも、あんたのためではないけど、とわたしは心の中で付け加えてから――全校集会が行われている英麗女子高等学校の体育館、そこにフラフラと入った。
わたしの様子を見た生徒たちは皆、ビクッとすると、わたしのために道をあけていき……面白いことに、とうとうわたし専用の道ができていた。
徐々にざわめきが大きくなる体育館。
演台で生徒たちに向けて話をしていた校長先生も、びっくりしたように演台から離れ、付近にいた教頭に何やら耳打ちをしていた。
結局、教諭らはわたしの傷ついた身体を見ても誰も駆け寄らず、いわゆる棒立ちになっていた。
それに構わず、わたしはよろめきながらステージに上がった。
人のいない演台に立つなり、わたしは口を押さえている羅夢の姿をすぐに見つけ出した。
……羅夢。
感傷に浸ろうとしたそのとき、不意にわたしは大きく咳きこんだ。
咳きこみ、咳きこみ、さらに咳きこむ。
いつまで咳きこんでいるのだろう、と自分でも心配になるくらい、たくさん咳きこんでから――それまでずっと気にしていた喉の渇きにも屈せず、わたしは愛する者に向けて告白を始めた。
そう、ひねくれた愛の告白を。