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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

盲目

作者:

とある女性に恋をした男性の、本の数十分間を表しました。

視界に鮮明な赤色が差し込んでくる、反射的に彼女の方へ意識が向いた。

交差点越しに映る君は、目を離す隙に簡単に消えてしまいそうな、淡く、優しい、そんな雰囲気が彼女を覆う。

ロングコートに身を包み、スマホから垂れるイヤホンの紐は耳へと繋がっていて、雪とは相対的で鮮明な赤いマフラーを惹き立てる様な黒髪が良く似合い、冬の雰囲気と同化している様な、品のある女性だ。

冷たい風が流れると共に、マフラーに顔をそっと潜らせるしぐさに、不覚にも「かわいらしい」と感じてしまった。

胸が高鳴る。

胸の奥から心臓の鼓動が耳まで伝わってくる、気ずけば足が彼女の方へ1歩1歩進んでいた。

一目惚れ____

"そんな気がした"

今声を掛けなければ、今彼女を見逃せば、もう二度と彼女に会えないかもしれない。

必死に足を早める、僕は彼女に釘付けだった。

こんな感情は初めてだ、心の奥から緊張が体中を一瞬で支配する。

僕は縋る想いで、交差点越しの彼女から引き寄せられるように足を運ばせた。

瞬間、「プーッ」という甲高い機械的な音が耳を刺激する。

"クラクション"、コンマ何秒遅れで気がついた。

先程までの記憶がフラッシュバックする、彼女に気を取られ、交差点越しへ無我夢中に走っていたからだろうか。

気がつけば僕は、交差点の中心に立っていた。

その時、空気を打ち断つ様な衝突音が響めく。

中心にいると認識してから約2秒程だろうか、状況に理解が出来なかった。

体全身の力が一斉に抜け、地面に倒れてゆく感覚だけが残る。

視界いっぱいに広がる白線が、暗赤色の液体で染まっていく。

「轢かれた」

自ら流れる血液を目にし、疑惑が確信へ変わる。

ボンヤリとした視界の先に微かに見える、"赤色"。

「マフラーだ」

恐らく彼女が首に巻くマフラーだろう、雪とは相対的で目立つ鮮明な赤色がトリガーだった。

意識が朦朧とする最中、必死に彼女へと意識を集中させる。

無駄だった。集中しようとすればする程、思考が止まっていく感覚を痛感する。数秒前までの景色が嘘の様に記憶から遠のいてゆく感じがした。

自ら流れる血液は、彼女が首に巻く赤色の様に美しく、それはまるで彼女を彷彿とさせ、なんだか心地が良い。

まるで彼女に包まれている様な気がして、心做しか温かさを覚えた。

「バカみたいだな。」

本当にそう思った。

あの時、信号を認識出来ていたら。

もし、走り出さなかったら。

もし、彼女と話せていたら。

考えた所で、無意味そのものだった。

彼女は僕の脳から次第に離れていき、瞼が自然と下がる。


「好きでした」

そう呟くと共に、視界がフェードアウトを告げる____。

初投稿です。

レビューお待ちしております。

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