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10. 理解し合うために

前話の解像度を上げる内容だけで文字数が多くなったので、ほとんど話が進んでいません...

 トリスの提案を受けて、早速俺らはこの村の魔道具屋に向かった。


「こんにちは〜、エドナ婆さん、いる??」


 トリスは元気な声で、店の奥にいるだろうエドナ婆さんを呼んだ。


「何じゃい!?やかましいわ!!」


「エドナ婆さん、店番しなくていいの?」


「ふん、こんな寂れた店、誰も来んわ!」


 そうは言っているが、エドナ婆さんはこの村の魔道具作りを一手に担う凄腕の魔道具師なのだ。


「それよりも、用事がないならさっさと行きな!作業の邪魔じゃぞ。」


「ちょっと待って!作ってもらいたいものがあるんだけど!!」


 トリスは説明をしようとした。しかし、話が長くなりそうだと思ったエドナ婆さんは、トリスをカウンターの近くの椅子に座らせ、自身も椅子を持ってきて座った。


「とりあえず、何があったかから話してみな。」


 トリスは、経緯を説明しようと思い、ここまでのことを思い出すのだった。



==========



 少し時間を遡り、ドラクが去った後に俺とトリスはどうすればドラクと仲良くなれるかを話し合った。


 俺は、最初に言った。


「まず、大前提として、全員と仲良くなる必要はないよ。」


 トリスは驚いた顔をした。


「例えば、トリスはポメド嫌いでしょ?何で?」


 トリスは少し考えて言った。


「すっぱいからかなー」


「もし、すっぱくないポメドだったら?」


「え...でも、触感が嫌かも」


 俺は心の中で苦笑しながら言った。


「そんな感じで、人間どうしても好き嫌いが出てくるから、全員に好きになってもらうことはできない。だから、無理に好きになる必要も好きになってもらう必要もないよ。」


 トリスは少し安心した顔をしたところで、俺は問いかけた。


「けれど、トリスはお昼に出てくるぺスティ(パスタみたいなもの)の上にかかっている赤いソースは好きでしょ?」


「え、あれポメドだったの!?」


(しまった!これ親父がわざと隠していて、後で驚かせようと楽しみにしていたのかも。親父すまん...)


 意外とお茶目な親父なのだ。


「そう、こんな感じで人も違う方面から見たりして、もっとその人のことが分かれば、『その人の全てが嫌い』とはならないと思うんだ。」


「なるほどね!じゃあ、ドラクに色々な僕を知って貰えばいいんだ。」


「そう、そしてそれには、まずドラクが何に興味があるかを知るべきなんだ。」



----------



 村の端っこで、目深に帽子を被った二人組がいた。


 お昼時ののんびりした時間にも関わらず、周囲を気にしてこそこそと話込んでいる。それを見た大人達はとても訝しげな表情を向けるのだった。


「お、おい!例のブツは持ってきたか??」


「へへへ...お客さん、最高のブツが手に入ったんですぜ。これ1本で最高にハイになれますぜ。」


「お前なんかキャラ変わってねえか...とりあえず、誰かに見られる前に、早く渡せ!」


「お客さん、焦っちゃダメですぜ。とりあえず、そちらも出すもの出してくれないと。」


 お客と呼ばれた相手は、少し間をおいて覚悟を決めたように話出した。


「ドラクのことについてだな。いいよ、知ってる範囲で話すよ。」


「お願い!それ話してくれたら、欲しがってた漫画を渡すね!」




 一瞬変なノリをしてしまったが、ドラクの子分からドラクの話を聞くことができた。

 ちなみに、こそこそしていたのは、ドラクにバレないようにするためだ(笑)


 聞いたところ、元々ドラクはあそこまで嫌な性格ではなかったらしい。リーダー気質はあったが、元気で誰も仲間はずれにしないタイプだったらしい。


 行商人であったドラクの両親は、そんなドラクをいつも喜んで褒めていたらしい。ドラクの父はよく村々を巡り、母は偶に父を手伝いに付いて行っていた。

 その間は、まだドラクに長旅させるのは早いので村の祖父母に預けられており、ドラクは二人のお土産話を楽しみに待っているのだった。


 しかし、ある時両親は行商中に魔物に襲われた。

 

 そして、村に帰ってきたのはドラクが両親にプレゼントしたツルで作った腕輪だけであった。


 それ以降、ドラクは魔物を憎んだ。


 そして、強くなろうと思い木剣の素振りを始めた。

 しかし、いくら鍛えても、まだ幼いドラクには真剣を持って魔物に挑むことは許されない。

 それに苛立ったドラクは、強そうなやつに力試しで挑み、勝つことで力を示そうとした。


 一方で、倒された相手はドラクの子分になって行く。その数が増えたせいで、ドラクはお山の大将状態になった。

 そして、中途半端に強くなったため、まだ魔物を狩れない現状に一層不満を抱えていたのだ。


 そして、トリスを嫌っているのは、


・トリスが魔物の悪魔の子であると思っていること

・トリスが弱そうなのに、村で最強な親父の子供でいて恵まれていること(狩りにも連れて行ってもらってる)

 

 が原因らしい。


「俺も、トリスとドラクには仲良くなって欲しいから、頑張ってな!」


「うん!ありがとう!!」


 俺らは、子分に感謝して漫画を渡し、家に帰りながら話し合うのだった。



----------



 家に帰り、俺らはとりあえず父親に頼んで、ドラクを一緒に狩りに連れて行けないか尋ねた。


「ごめんな、トリス。流石に、力が弱いのに勝手に魔物に突っ込んで行きそうな子は連れて行けない。ドラクのことは、俺も彼のお祖父さんと話合ってみるから、少し待ってくれないか?」


 俺らは悩んだ。こういう場合、保護者からの説得は大体うまくいかないものだ。

 そうなると、原因の根本解決には、「トリスが魔物ではなく」かつ「それなりに強いと思わせる」必要があると考えた。


「ハル、僕が魔物みたいに化け物のような力を持ってないけど、それなりに戦えることを示すんだよね。それって、ドラクと喧嘩しろってこと?」


「うーん」


 俺は悩んだ。


「とりあえず、ドラクが八つ当たりでトリスに危害を加えてくるのは論外だから、そこは親父経由で最悪どうにかして貰えばいいと思う。」


 そして、言葉を続ける。


「一方で、今回はドラクのトリスに対する不満を解決してあげれば、仲良くなれる可能性はある。だから、トリスの力を示すのはある意味正しいと思うんだ。ただ、喧嘩をする場合は怪我が危ないし、何よりどうなったら『トリスが弱くない』と判断するのかが不明確だよね。」

 

 俺は、少し見方を変える提案をした。


「そもそも、一番いい関係の構築方法は、二人が共通の敵や問題に取り組んで、お互いに相手が必要だと感じて協力するのがいいんだよね。ただ、今回は魔物という共通の敵を狩りに行くことができない。だから、同じ遊びを通してトリスが弱くないことを示してあげれば、ドラクの誤解もスムーズに解けそうかなーーー」


 俺は、ここまで言ったが、ほとんど諦めていた。


「ドラクはそもそも遊びに誘っても来ないだろうし、いくら面白い話や絵を描いてもダメ。最初にも言ったけど、別に無理して仲良くなろうとしなくてもいいんだよ。」


 トリスは首を振って答えた。


「ドラクのことを聞いて、むしろもっと仲良くなりたくなったんだ。ドラクと同じように、僕も父さんみたいに強くなって魔物を狩りたい。だから、ドラクとは仲良くできると思うんだ。もう少し頑張ってみるよ!」


「とはいっても、うまい方法が思いつかないな〜」


「大丈夫!」


 そうして、トリスは大きな光ネズミの魔石を見せた。


「ドラクが興味を持ちそうな遊び道具を作って、それを使った勝負することで、僕が弱くないことを分かってもらおうと思うんだ。」


 俺は、トリスの考えを聞いて、試してみる価値があると思った。



==========



 トリスはエドナ婆さんにざっとした経緯と、ドラクが興味を持ちそうな遊び道具の製作を依頼をした。


「うーーーん」


 エドナ婆さんはシワの多い顔に更にシワを寄せた。


「お主、その魔道具を作るのがどんなに難しいかわかっとるかの?」


「え、でも光ネズミの魔石で作れるでしょう?」


 エドナ婆さんは大きなため息を吐いた。


「小僧、少しお勉強が必要じゃな!ちょうどいい。エマーーーどこじゃーーー」


 エドナ婆さんは大きな声で呼んだ。


「はーーーい、お婆ちゃん、呼んだ?」


 ひょこっと店の奥から、優しい目をした茶髪でロングヘアの女の子が出てきた。




 その時、強烈な感情が俺の意識のスペースまで侵食して来た。

 こんなことは初めてで、俺はめちゃくちゃ驚いたのだ。


 そして、俺はこの感情を知っている。




 これは、一目惚れだ。


またもや、ある日の晩御飯


トリス「おお!今日の晩御飯はペスティの上にポメドのソースが乗ってるんだね!」


親父「!!!」


トリス「ふ...父さん、甘いよ!いつまでも、何も知らない子供だと思わないことだね!!」


そう言って、トリスは豪快に口の中に入れた。


親父「すまん、ポメドが無くてチリュー(唐辛子みたいなもの)で作ってみたんだ!」


ハル(親父お茶目だなーーー(白目))


トリス「ばばばばば...」


この日、トリスの嫌いなものが一つ増えた。

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