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1. 転生と神童

チートなしでのんびり成長を書く予定です。

「行きましょう御使い様。貴方が示す、その希望の先へ。」


「俺は別に元は普通の人間なんだから、いい加減普通に呼んで欲しいわー」


 城壁の上には一人の男が立っていた。顔に薄い火傷の跡が残っている若い男だ。男は誰かと話しているようである。


「そうは行きませんよ御使い様。私は貴方に救われて、今ここに立っているのですから。」


「俺の方こそ、君に助けてもらっているんだよなー。じゃあ、とりあえず他の人もこの状況から救おうか。」


「そうですね。我らがこの地獄を照らす、光とあらんことを!」


 そういうと、男は城壁から魔物の群れに飛び込んだ。


「ちょっと待って、そこ飛び込むのはダメーーーーー」


「わははは、楽しくなってきましたね!!」


 そのまま、男は魔物の群れに飲み込まれていった。

 これこそが、後に「ツウェルガの奇跡」と呼ばれた、追い詰められた人類に希望の灯火が灯った瞬間である。



==========



「この苦しみからやっと解放されるのか...」


 俺は漫画家で、苦節10年やっと自分の作品がネットでそれなりにバズり、連載に行き着くところまで行った。


 そんな矢先に、今までの不摂生が祟ったのか、ステージ4の末期癌が見つかったのだ。どうも、膵臓癌らしく、一般的にかなり発見が大変らしいのだ。そんな、俺は色々な治療を一応受けたのだが、結局は大して効果が出ず、今まさに死のうとしている。

 

 もう、まともに頭も働かない状況で俺は願った。


「もし輪廻転生があるのなら、次は苦しみがない人生を送りたい。」


 そして、俺はそこで意識を手放した。




 次に気づいた時には、俺は異世界のフェル村の狩猟を生業にしている一家の第一子として生まれていた。

 それを自覚したのは2歳になった頃で、生まれた直後の記憶はあやふやになっている。言葉をちょっと話せるようになって、やっと自我が芽生えてきた影響か、現状を把握できるようになった。

 

 どうやらここは、異世界で文明レベルが中世くらいの大きめの村のようだ。なぜ、異世界とわかったかというと、村の人が宝石みたいなものを持って、ライターみたいに火をつけていたからだ。どうやら、魔法みたいなものを使えるらしい。


「もしや、これは今スタートダッシュを切れば、将来的に無双できるのは!」


 俺は期待に胸が膨らんだ。

 他にも、魔物狩りや見たことのない材質の工芸品、魔道具らしきものなど、初めて見るものが盛りだくさんだ。

 

 色々目移りしてしまうが、こういう時ほど焦らず一歩ずつ積み上げていくことが大事だと、俺は知っている。

 

「だから、まずは言葉を覚えなければ!」


 そのため、俺は積極的に両親に話しかけ、早々に言葉を覚えた。

 そして、教会に足繁く通い、だんだん文字を書けるようになるのだった。

 前世では、そんなに物覚えがいい方では無いが、必死に覚えたのだ。


「次は魔法だ!!おやじ...お父さん!魔法を教えて!」


「お!うちの賢者様はもう魔術を学ぼうとしているのか!けど、ちょっと早いかなー?」


 ここで退いてはダメだと本能的に察した。


「魔術って何?魔法じゃないの?なんでオレ...僕には早いの?なんで皆んな宝石持って魔術を使うの?」


「う...もう、なぜなぜ期に入ったか、さすが我が家の神童様だ...」


 色々根掘り葉掘り聞いたところ、以下のことが分かった。



・魔物が使うものを魔法と呼び、人間が使うものを魔術と呼ぶ


・人間は本能的に魔法を使用できないかわりに、どうやら魔法を魔術として体系的にまとめて、操れるようにしているらしい


・魔術を使用する時に使う宝石は魔臓器と呼ばれ、人間や魔物から取れる(魔物の魔臓器は魔石と呼ばれることも多い)


・人間(人類)のうち人族は必ず魔石を使わないと魔術は使えない(他の種族は特定の属性なら、魔石が無くても使えるらしい)


・魔石を使うには、自分の魔臓器から魔力を流すので、子供には負荷が強い



「おお!お父さん、めっちゃ物知りだね!!」


「それは、この村の自警団で数少ない狩人でもあるおかげで、顔が広いからね。」


(程よく煽てた今がチャンス...!!)


「お父さん、僕魔術の練習したい!お願い!お願い!!お手伝いもっとするから!!」


「うーーーん、そうは言ってもなー」


(むむむ...中々難しそうだな...)


「やらせてみればいいじゃない!」


「お母さん!!」


「そうはいってもな、サーラ(母の略称、本名はサーラリス)、あれはもうちょい先だろ。」


「いいじゃない、こんなにやる気があるのよ。あとお手伝いもた〜くさん手伝ってくれるよのね。」


「え...ほどほどでお願いします...」


(しまった、お手伝いの件は後出しで出せばよかった...)


 父さんは「そうするかー」といいながら、透明の小指くらいの大きさの魔石を持って来た。


「これは?」


「お前が4歳の誕生日の時に渡そうと思っていた魔石だ。魔力を込めると微かに光るだけの、クズ魔石とも呼ばれる。最初は、これくらいの魔石で魔力をこめる感覚を覚えて、徐々に大きな魔石で試すんだ。」


「まだ、僕に早いと言ったのは、この魔石でも負荷が大きいから?」


「いや、負荷は何度も使わなければ大丈夫だが、単純に間違って口に入れて、飲み込まないか心配していた。けど、うちの天才くんなら大丈夫だろ。」


「あ、そういえばそうか。」


(あぶな...俺そういえば今はまだ小さい子供だった)


 それから、俺は魔石を灯らせるのに熱中した。確かに、何度も灯らせようとすると、右胸にある魔臓器が苦しくなった。まるで、短距離走で全速力で走った時に、肺やその周りが痛くなるのと同じような感覚だった。

 

 そうやって、魔力の扱いを練習し、知識を貪欲に吸収して行ったところ、両親だけでなく村でも神童と呼ばれ始めて、両親は更に喜んで親バカになって行ったのだ(笑)

 

 今思うと、きっとこの時が人生で一番家族と幸せな時間を過ごした時だったのだと思う。


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