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フィギライト  作者: シリウス
ミチビキの狙い
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ハードレムの真実

 ティーラスとの接続が完了した即席祭壇にて、アイシアと話す無相とカフ。二人のすぐ近くで毛布を被り身を隠すファレルに苦笑しながら、現状の報告含め情報交換を進める。

「——と、まぁ、そんなわけで今、『プレシェドル』は我々と共に行動しているわけです」

 カフによる報告が終わると、アイシアは状況は把握出来たとして無相へ話を振る。

「リンクが切れてハードレム・スレイクが機能停止することはあったけど、まさかそっちが先に壊されるとはねぇ。これからどうするか、もう考えてる?……なんて、愚問かな」

 無相は数秒無言で考えてから、口を開いた。

「『ディレーサー』の件、これを進める」

「……そうなるよね」

 カフにとっては初耳となるその案は、すぐにアイシアの方から情報が開示された。

「カフ、でいいんだよね。君にも説明しておくね。ムーくん、こんなだから話してないと思うし」

 顔色こそ変えないが、どこか不満そうなオーラを纏う無相。

「よろしくお願いします」

 対してカフは紳士的に返答し、情報収集に努める姿勢を見せる。

「『ディレーサー』っていうのは、簡単に言うと『ハードレム・フェルシアス』たちのことで、これは要するに」

「ハードレム・スレイクの代替となる……?」

 思わず口に出てしまったカフ。アイシアは「おや」と感心と少しの驚きを見せてから続ける。

「その通り。そもそもこの『ハードレム』は、君たちの使う言葉で言えば『保護』っていう意味でね。スレイクである必要はないんだ」

「なッ!?」

 カフは驚きを隠せず、無相の顔を見る。無相は全てを知っているというように無反応でいつも通りの表情のまま、無言を貫いている。

「ちょ、ちょっと待ってくださいね。えー、『ハードレム』は『保護』……。はっ!あ、あの、『保護』の他に、『制限』だとか、『封印』というような意味は……?」

「『封印』?いや、そんな意味は特に……ねぇねぇラペくん、『ハードレム』に『封印』なんて意味、ある?」

 アイシアはティーラス内でそばにいたのであろうラペトリクに質問する。

「あー……、すまん。『ディレーサー』が必要になるとは想定外でな」

 ラペトリクの回答に普段のようなキレがないので首を傾げるアイシア。

「……俺が『封印』の意で書物をまとめたことがある」

「え!?な、なんでそんな嘘を」

「人類が一番納得しやすそうなストーリーを組むためだったんだ。彼らは頭が回る。俺らが下手に隠そうとしてあれこれ言い訳をすれば、簡単に見破られてしまう。……いや、この場合、見破られるというよりは、余計な心配をかけてしまうという方が正しいな」

 ラペトリクは自身が『ハードレム』を『封印』という意味で人類に伝えたことを苦々しく思い出しながら話す。

「『デイロ』に触れることなくかの大戦が落ち着いたということを人類に納得させるには、そうする他なかった。それに『封印』の意味も今となってはあながち誤りというわけでもない。ハードレム・スレイクによって世界各地のヴァーゲス・スレイクは守られ、人類はハードレム・スレイクを守り続けさえすれば良い。時代の流れの中でスレイクについて知る者は自然淘汰され、ついに現代においては『証のフィギライト』を持つ者ですらそのことを知らぬ世となっているわけだからな」

 ラペトリクの言うことに一理あると理解するカフ。しかし、アイシアは難色を乗せた声色で返す。

「ラペくんなりに、彼らのことを思ってのことだってのは分かったけど……。でも『封印』とするなら、矛盾にも気付く可能性だってあるよね」

「……」

 ラペトリクはこれに反論せず、視線を落とした。

「矛盾……。タクマくんは理解しているようですね?」

 その意味がまだ掴みきれないカフは質問の矛先を無相に向ける。無相は首肯して答えた。

「簡単なことだよ。封印なんて言っておきながら、君のも含めてフィギライトが使えている。それが一番の矛盾点」

 カフは目を見開いてから、思わず自身のフィギライトを入れるジャケット裏の空のホルスターを見る。

「『ハードレム・スレイクが機能しているから』って理由で『特別な』フィギライトが使える状況、なんて言われてるみたいだけど。本当にそれが真実だって誰が言えるの?」

「そ、それは……。いやしかし……」

 聡明なカフですら身じろぎしてしまうほどに、その理屈は真っ直ぐだった。

「そう。ムーくんの言うように、もし『ハードレム』が『封印』なんて意味なら、その封印用のスレイクを経由する形?なのか理屈はよく分からないけど、なんだかんだでヴァーゲスを使えていることになって……。結局、人類さん側が『やる気』じゃん!ってなるわけよ」

 アイシアのアシストを受け、それについては理屈があると返答を試みるカフ。

「待ってください、それについては、現代のスレイク起動は神々への脅威となるほどなものではないから、見逃されているのだと……」

 しかし、そんなカフの言葉は一蹴される。

「あーのーね、ラペくんがどう書物に書いたのかは知らないけど、ぶっちゃけ脅威かどうかで言えば、全スレイクの起動でさえ我々にとっては脅威足り得ないよ。それに、やろうと思えば、あの大戦で君たち人類側に一切の優勢を許さないような戦い方だってできたし」

「なッ……」

 世界の根底がひっくり返されるような言葉の数々に対して口数が減るカフ。

「人類側があれこれ仕掛けてくるのなら、こっちにだって考えはあるんだぞってことになるわけさ」

「……」

 難しい表情をしたまま見切れ状態で映るラペトリクは、無言でそれが誤りでないことを証明する。

「つ、つまり、じゃあ本当に、ハードレム・スレイクは、あくまでその他のスレイクを『保護』するために存在していたもので——」

 カフが恐る恐る脳内整理のために知り得た情報を口に出すと、それに続いてラペトリクが発言した。

「『封印』など、初めからされていない」

「そう、でしたか……」

 カフは俯き、片手で顔を覆った。

 そして、それと同時に不適に笑い始めた。

「……ふ、フフ、フフフ……」

「「え?」」

 突然の笑い声に気味悪がる無相とアイシア。

「……シェトマはやはり大したやつだ。世界を導く、か……。ボスの器に相応しい世界観を持っていたんだな」

「こ、怖……」

「カフ、どした?」

 独り言を発するカフに、さらに引き気味の無相とアイシア。

「……あぁ、いえ、失敬。こちらの話です」

 そうでなかったら一体何だったのだと言わんばかりに困惑する二人を他所に、カフはラペトリクに向かって声をかける。

「アイシア、そしてラペ、と呼ばせてもらいます。……改めて、我々は『ゼツボウ』という、こちらの言葉でネガティブな意味を持つ組織を構成しています。とはいえ、あなた方にはすでに我々の情報は筒抜けでしょう。しかしながら、我らがボス、シェトマ・トークが立案したある計画については、あなた方でもまだ不透明な部分が多いのではないかと思います」

 その言葉に登場したシェトマ・トーク立案の計画について興味を持ったラペトリクは、アイシアよりも前のめりになって情報に耳を傾ける。

「彼は、かの大戦時に人類の要を担った人物、『シロ』の末裔です。現代では俗称として『白の復讐者』などと呼ばれることがしばしばあります」

 ラペトリクは首を捻る。その程度のことであれば全て知っているためだ。

「……と、ここまではすでにご存知のこととしてお話しします」

 前提として必要な条件であったことを理解したラペトリクは、口を開くことなく情報開示を待つ。

「シェトマの計画、それは人類の保護——すなわち、『人類の真なる解放』を目的としています」

「真なる、解放?」

「はい。これは『シロ』らの組織『キボウ』のうち、唯一『消失』しなかったメンバーの『クロ』によって明かされた情報になるのですが——人類は神の『実験対象』である、と」

 刹那、場の空気が変わった。

 無相も、目を丸くしてカフを見ている。

「……カフ。あなたは……いえ、あなた方『ゼツボウ』は、つまり」

 ラペトリクは淡々と、しかし重みのある声でカフに言う。

「『デイロ』を討つための組織」

 カフは頷いた。

「その敵対勢力が『デイロ』などという名であることは、シェトマも私も知りませんでしたが」

 ここでアイシアが口を挟む。

「驚いたわ。名前はさておき、あいつらの存在を知っていたとはね……。でも、シェトマのその計画、具体的には何をしようっていうのさ?君たちゼツボウだけで『デイロ』に何か仕掛けられる方法なんて、あるかな」

 その質問を待っていたと言わんばかりに、カフは無相の肩に手を乗せて答える。

「この『プレシェドル』、タクマくんを計画に入れれば、その組織が動かざるを得ない状況を作れます」

 それを聞いてアイシアは若干の思考の後、一つの答えに行きついた。

「……まさか、シェトマの計画って、『管理者(プレシェドル)』のリンクを半ば無理やりに切断して、敢えてハードレム・スレイクを無防備な状態にする——」

「えぇ。当然、他のスレイクの力を封印していると『勘違い』されているままのハードレム・スレイクが無防備になれば、第三勢力に真っ先に狙われると考慮して、です」

 ラペトリクはその計画を頷きながら静かに傾聴する。

 アイシアも、実際に遂行可能な作戦内容に驚きつつ、カフの続きを待つ。

「ここで言うその第三勢力は、かの大戦後すぐに創設されたとされる、人類にとっては最も長い歴史を持つ組織の、慈善団体『ミチビキ』です。彼らの正体はいまだ完全に明かされてはいませんが、上層部にフェルシアスがいることが分かっています。我々同様にフィギライトを持つ以上、その力を封印・制限するハードレム・スレイクが機能を失い、封印が解けることを望んでいる可能性は低くないとシェトマは考えたのでしょう」

 カフから説明されるシェトマの計画は、ここで一旦情報の整理が必要ということになった。

「……もしかしたらシェトマは、あるいは知っていたのかもしれませんね」

 カフはティーラスの映る祭壇のスレイクに向けて小さく呟く。

 その後、ティーラスとしてはシェトマとも話がしたいという流れになり、カフもその対話に賛同。シェトマが今、ミチビキに囚われていることを話し、次の動きは決まった。

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