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フィギライト  作者: シリウス
カガヤキの始まり
33/59

序章の幕開け

 聖堂を詩音に任せたシェトマが向かったのは、ミチビキ施設内の中枢部だった。当然、部外者であるシェトマがそう易々と侵入出来るような場所ではない。団員である身分証、合言葉にパスワード、果てには複製が困難な生体認証までもが導入されている。

 シェトマはスーツのポケットに手を入れ、詩音から得た暗号を取り出そうとした。

「ん?」

 ポケットの中に、固いカードのような感触があった。

 取り出してみると、それはエスカの団員証。さらに、団員証カードの裏には小さなスレイクのようなものが貼り付けられていた。

「これは」

 シェトマは聖堂の方面に向けて団員証をかざして詩音に感謝する。

 そして、改めて暗号を取り出して読み直す。

 ある程度の解読が終わり、書かれた道順に進んだ先で、詩音が『敵と遭遇するかもしれない』という旨で記載していた通りの状況になった。

「……なるほど。『テキ』というのは貴様のことか」

 シェトマに立ち塞がる男は言う。

「『敵』……。ほぅ、侵入者がそれを口にしますか」

 その一言で、相手も冷静に戦うタイプであることがうかがえた。

「残念ですが、あなたの快進撃もここまでです。これより先はあなたのような我々の思想に反する者を入れてはならない神聖な場ですので」

「外見だけの神聖さほど無意味なものだな」

 互いに睨み合いつつ、すぐに戦闘に入れるよう体勢を整える。

「あなたはエスカを誑かし、そして我々ミチビキを愚弄している。ここで消えていただかねば世界が可哀想です」

 男は話すが、シェトマは戯言として聞き流す。

「……いいでしょう。こうまで言っても変わりようがないのであるなら、語り合える術はこちらしかッ!」

 シェトマの不意をつこうとしたのか、男は話し終える前に剣のフィギライトを素早く構えてシェトマへと急接近、そして彼の首元に刃を当てる。

「……」

「……」

 男はシェトマに刃を当てた状態でそれ以上動かない。

 いや、動けなかった。

 シェトマも男とほぼ同時にフィギライト銃を取り出し、剣の刃が首に当たる寸前で接近した男の腹部に銃口を当てていた。

 剣をゆっくりと下ろす男。シェトマは銃口を男へと向けたままじわりじわりと距離を取る。

「フ、久しく楽しい戦いが出来そうです。申し遅れました。私は慈善団体『ミチビキ』第1のテーマ。『ベーリル』と申します」

「!」

 その名だけで、シェトマを奮い立たせるには十分だった。


 その頃、神々の領域であるティーラスにも動きがあった。

 ラペトリクの発言が皆を動かしたのだ。

「『銃』が我々側にいることが分かった」

 これはその場にいる神にとって朗報だった。

「やっぱりね!そうだと思ってたよ!」

「だろうな。特にシロのあいつは裏切れるような者ではないだろう」

「当たり前のこと」

 それぞれ反応を示すが、どの柱も表情が嬉しそうだった。やはり味方であることを信じたかったようだ。

「クアロスくんにも伝え」

「いや、それはいい」

 別領域の部屋に閉じこもったままのクアロスにも情報を伝えようとしたキャレルだったが、ラペトリクに止められる。

「え、なんで?」

「あいつは、分かってるはずだ」

「……で、でも」

 ラペトリクはその部屋への扉を見ながら言う。

「クアロスには、『理解』へ至るための時間が必要なんだ」

 キャレルもそれには反論することなく俯いた。

「なに、どうせすぐに出てくる」

 ラペトリクの謎の自信に疑問を寄せるキャレル。

「どういうこと?」

「クアロスの『クラル』が覚醒を果たしたからな」

 ティーラスにいるラペトリクとクアロス以外の全員が驚く。

「シロ以来の推薦枠だ。『マディケルト』……もしかすると『フェディシルト』へ昇格する可能性すら秘めている」

「「!!!」」

 余程衝撃的な情報だったのか、あまりの驚きに声すら出ないティーラスの一同。しかし、それはすぐに精悍な顔つきと期待へ変化した。


 高校の屋上に到着した英也と黒野は、祭壇の入り口が開けっ放しになっているのを確認してすぐにフィギライトを手にした。

「黒野くん、あれって」

「どうだろう?無相くんなら、あんな状態のままにしないはず……とは思うけど」

 一歩ずつ警戒しながら進んで行くと、祭壇から声が聞こえ始めた。

 英也はフィギライトを強調して見せて黒野に『戦闘の可能性はあるか』を確認する。だが、当然黒野にもそれは分からない。黒野はフィギライトを構え、首を横に振る。

 そしてついに祭壇の内部が見える位置にやって来た二人。同時に、祭壇の中からの声が止んだ。

「だ、誰ですか」

 英也が質問する。すると、祭壇の奥の方から、青いフィギライト銃を構えた体勢のグェンが近付いて来た。

「……誰だっつう前に、テメェが名乗るのが筋じゃねぇのか?」

 グェンは英也の額に狙いを定める。

 英也は咄嗟に構えていたフィギライトを手にしたまま両手を上げて戦闘意思がないことを伝えようとした。

 直後、圧縮された空砲が英也の頬を掠めていった。ピッと薄く線状に切れた傷口から血が下方へと伝う。

「く、黒野くん!」

 若干のパニックになりかけている英也は慌てて黒野に助けを求める。しかし、黒野は冷静にこの状況を把握していた。

「お、落ち着いて、白道くん。大丈夫、一旦引いて」

 黒野はこういった場数を多く踏んできたのか、一瞬で攻撃に順応していた。

「……グェン、その辺にしときなよ。これ以上暴れたら、それこそボスから嫌われるよ」

「嫌われッ、ち、違ぇよ!俺はそんなんじゃ」

「あーはいはい。分かったから。とにかく、訓練以外でのフィギライトは控えて」

「……チッ」

 どうやら祭壇の中でも何かがあった様子。黒野が覗いている中、グェンはフィギライトをホルスターへとしまった。

「白道くん、も、もう、多分大丈夫」

 そしてグェンに向けて一礼する黒野。そのまま一歩ずつ祭壇へと進入して行く。

「ちょ、ちょっと待ってよ黒野くん!」

 先ほどの攻撃に少しトラウマを覚えつつある英也も、何とか勇気を振り絞って祭壇へと駆けて行った。


 廃校舎グラウンドに立ち尽くす鉄仁。目の前に映る建造物の変わり果てた姿に言葉を失っていた。一階に相当する場所の壁が破壊されており、瓦礫の山が見えていた。二階以上の部屋はというと、他の一階部分と残されている柱類でなんとか持ち堪えている状態だ。

「えぇ……?な、なんだ、これ……。いつ崩れてもおかしくないぞ」

 物理にも明るい鉄仁には、この建物がいかに危険な状態かがすぐに理解出来た。

「この柱……。これが無けりゃもう終わりだったってことか……」

 中に入り、瓦礫で足を怪我しないよう気を付けながら進む。

「ん?これは」

 鉄仁は瓦礫の中に埋もれていた小さなカメラを拾い、上を見上げる。すぐ近くの柱に小型のカメラが取り付けられていたらしい跡、細い配線が剥き出しになっていた。この惨状を見るに、おそらくはここで起きた事件と同時に破壊されたのだろうと推測する。

「……何があったんだ?」

 鉄仁はカメラを元の場所へ戻し、奥へと目を向ける。

「ここだけ、瓦礫がないな」

 一部だけ不自然に地面が見えている場所があった。まるでそこに誰かが倒れていたかのように、塵や埃も大幅に少なくなっていた。

「無相が……?いや、あいつにこんなこと出来るわけないしな」

 鉄仁は手に入れた情報から状況の分析を試みるが、まだまだ真相に辿り着けそうにはないと悟った。

「もうちょっと調べてみるか……。ん?」

 情報が不足していると考え、先へと進もうとした時だった。

「ど、どうなってんのよ、これ」

「あー、こりゃまたヤバめマシマシ?ちょい魔王級的な?」

 鉄仁の耳に、聞き慣れた声が届いた。

「……」

 声の方へと進路を変える鉄仁。

「わっ!ちょっと歩きにくいね、衣奈ちゃん」

「怪我しそうな破片があちこち、こりゃあ要注意じゃのぉ」

 声は二つ。どうやらここを怪しいと踏んでいるのは自分だけではなかったようだと少し安心しつつ、二人の姿を探す。

「お、おーい。お二人さんも、無相を探しに?」

 手っ取り早い方が良いかと声を上げる鉄仁。その声は目論見通り二人に届き。

「鉄くん!」

「わーお、これはこれは鉄ちゃんじゃーん」

 廃校舎に向かった三人は合流を果たした。

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