ある夜更けのこと ~ 騎士団長はポーカーフェイス ~
ある夜更けのこと。
寛ぐ私の前に静かにやって来たその人は、感情の無い顔で切り出した。
「私は王と王妃を護る騎士団長」
(いきなり話し出したし、自己紹介だし)
「この国一番の騎士」
(自分で一番って言ったよ)
「警備をくぐり抜けて忍び寄る暗殺者たち」
(前触れなく不穏)
「ドアから大量の暗殺者」
(普通にドアから)
「私は暗殺者たちを倒しながらひとまず逃げた」
(戦略的撤退というやつね)
「暗殺者たちは王ではなく私を追って来た」
(え、どういうこと?)
「王の方に行くと思ったのに想定外」
(王様置いて逃げたん!?)
「広場で激しい戦いになった」
(広間じゃなくて広場。外まで逃げたんか)
「多勢に無勢、私は自転車で逃げた」
(急に文明の利器出てきた)
「頑張ってこいだ」
(必死か)
「逃げ切った先は渋谷」
(突然の日本、しかも都会)
「渋谷でトモダチと偶然会って」
(騎士団長のトモダチが渋谷に???)
「大通りの防犯カメラを見つけてピース」
(騎士団長真顔ピース)
「そこで目が覚めたの」
「とりあえずお前は王様護れよ。自転車に乗って自分だけ渋谷に逃げてんじゃないよ。夜中にやって来て真顔で話し出したから何かと思ったじゃん。騎士団長が無表情で自転車こいで逃げてる情景が浮かんだわ。もう逃げ切ったんだから明日の期末テストの勉強しなさい。しないならもう遅いから寝なさいよ……ってか寝てたのか、騎士団長よ」
「いい夢だった」
「いい夢だったのかよ」
「騎士団はポーカーフェイスがデフォ」
「それお前基準な」
「お休みなさい~」
(結局勉強しないんだ……)
中学生は終始無表情のまま再び夢の世界へ旅立って行った、ある夜の話。
読んでくださり、ありがとうございました。
九割実話です。( ゜∀゜)
後日、うちの自転車騎士団長は、満点が百点とは思えない点数のテストを持って帰って来ましたが、本人ノーダメージです。
いわく「零点じゃなかった!」と。
騎士団長は脳筋がデフォ……と、私が遠い目をしたのは言うまでもないことでしょう……。
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