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『勘違いしがちな赤根さん!』 ~飼い猫の名前を叫んだら、なぜか学校一の美少女が迫ってきた  作者: 波瀾 紡


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39/41

【39:赤根さんは「好き」と言わせる】

♡ ♡ ♡


 幸せな気分のままゲーセンから出た。

 気がついたらもう6時を回っていた。

 ヤバい。そろそろ帰らなきゃ。


 夏だからまだ明るいはずなのに、空が曇って薄暗い。

 雨が降るかもしれないから、早く帰らないと。


 だけど"素敵な作戦“はぜひともやりたい。

 だからゲーセンの前の道路で、ガタニ君と向かい合って立った。


 そして彼を見上げる。


「あのさガタニ君。これ選んでくれてありがとう」


 言って、片手でイヤリングに触れる。

 彼が私の顔を見た。

 うわ、緊張する!

 

「うん」

「ガタニ君、この色好き?」


 彼の目を見つめる。

 ガタニ君も優しく見つめ返してくれてる。

 優しい瞳にドキドキが高まる。


「あ、うん。好き」


 ──ふわぅっ!!


 ヤバっ! これヤバっっ!


 予想した通り、まるで愛の告白をされてるみたいだ。

 えへへ。えへへへへへ。

 脳内がメロメロになって、ほおが緩む。


「ど、どうしたの赤根さん。大丈夫?」

「う、うん。大丈夫。じゃあ帰ろっか」


 うっわヤバかった。今、完全に意識がトンでたよ。

 変な子だって思われたかな。


 心配したけど、ガタニ君は特に気にする様子もなかった。よかった。


 それから雑談しながら駅まで歩いた。


 ちょうど駅に着いたところで、とうとう空が泣き出した。結構大粒の雨だ。

 駅舎の建物内に入り、お互いの服を確認した。

 ほとんど濡れていない。


 うん、タイミングがよかったね。


 私とガタニ君は違う電車に乗るから、改札をくぐったらそこでお別れ。

 この雨は、これでデートも終わりだと悲しむ私の心の表われみたいだ。


 その時、突然ガタニ君が気づいた。


「あれ? 赤根さん、イヤリングが片方ないよ」

「え……?」


 指先で耳に触れると、確かに右耳のイヤリングがない。

 どこかで落としたんだ。


 背筋がさぁーっと冷たくなる。

 せっかくガタニ君に選んでもらったのに。

 もう失くしてしまうなんて。


 …………私のバカっ!


 バカバカバカっ!

 あまりに悲しくて涙が滲む。


「俺、来た道を探しに戻るよ」


 駅の外を見ると、景色が煙るほどの大雨が降っていた。

 こんな雨の中、小さなイヤリングを探すなんて無理だ。傘がないからずぶ濡れになるし。


「いや、いいよ。この雨だし、諦める」

「ホントに? 大丈夫か?」

「うん……仕方ない」


 この雨の中、傘もないのに探しに戻るわけにはいかない。

 私が一人で行くなんて言ったら、優しいガタニ君は手伝うって絶対に言うし。


 でも悲しい顔をしたら心配させちゃう。

 ここは平気なフリをしなきゃ。


「まあイヤリングはまた買えばいいよ、あはは! 今度また、お買い物に付き合ってくれるかなぁー?」

「うん、もちろん」

「よしっ! それなら全然大丈夫だからねっ! じゃあ帰ろっ!」


 努めて明るく笑顔を浮かべる。

 ガタニ君は少し不安そうな顔をしながらも、うなずいてくれた。


「う、うん……」


 二人で改札を抜けた。

 すぐに左右に分かれる通路がある。


 ガタニ君と私は違うホームから電車に乗るから、ここでお別れだ。


「じゃあまたね!」

「うん。気をつけて帰れよ」

「ありがとーっ!!」


 大きく手を振って別れた。

 そして電車に乗車。

 車窓から外を見ると、打ちつける雨粒。

 やっぱり私の涙みたいだ。


 あ〜あ。

 失敗したなぁ。悲しいなぁ。

 また涙が溢れそうになる。


 肩にかけたトートバッグを開いて、ハンカチを探す。


 あれっ?

 バックの中で光るコレは……。


 ああーっ、イヤリング!!

 バックの中に落ちてた!


 知らない間に耳から取れて、肩にかけた鞄の中に偶然落ちたんだ。


 はぁ〜、よかったぁ。

 今度は嬉しくて涙が出そうだ。


 ──あっ、そうだ! ガタニ君に教えてあげないと。


 優しい彼だもん。きっと心配してくれてるもんね。

 早く安心させてあげたい。

 そう思って電話をかけた。


「あ、もしもしガタニ君。イヤリング見つかったよ。カバンの中に落ちてた」

「そっかよかった」


 ──ん?


 ガタニ君の周りが騒がしい。

 ざぁーざぁーという雨のような音。

 そしてなぜかゲームセンターの電子音が聞こえる。


 もしかしてガタニ君──


「ゲーセンまで、イヤリング探しに戻ってるの?」

「あ、うん……」


 ちょっと言いにくそうにガタニ君が呟いた。


 傘も持ってないのに、わざわざ探しに行く?

 まさかそんな……

 いや、ガタニ君なら充分可能性はある。


 彼の優しさに涙が溢れそうになった。


「私も●●駅に戻るから待ってて!」


 そう言って電話を切った。

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