表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

回顧録 PTAベジータとトランクスくんとキーホルダーのおもひで

作者: 赤おじ


 中学生の頃、友人にトランクスという男がいた。


 当然あだ名である。なぜこのようなあだ名が付いたのか説明しようとすると少々回りくどい。

 彼の父親がPTA役員か何かをやっており、我々の前に姿を晒すことが多かった。

 そしてその父親は重度のM字ハゲであった。我々はベジータと陰で呼んだ。ベジータの息子であるため、彼はトランクスとなったのだ。

 彼には何の落ち度もない。無論父親にも落ち度はない。中学生という生き物は、只々ヤミクモに残酷である。


 ◯


 今もあるかは知らないが、ボタンを押すと喋るキーホルダーが当時流行した。

 そして不幸なことに、学校帰りのコンビニにドラゴンボールのそれが入ったガチャガチャが設置された。

 我々は競ってガチャガチャを回した。そしてトランクスのキーホルダーを手に入れた。


 我々は学校で無闇ヤタラとそのキーホルダーを押した。

 一度押すと「スーパーサイヤ人は悟空さんだけではない」

 二度押すと「ここにもいたと言うことだ・・・・・・」と喋る。

 それだけで笑った。今思うと何がそんなに面白かったのか。トランクスくんも笑っていた。


「トランクスくん、俺がボタン押したら、同時に喋ってくれ」

 カチカチ。

「「ここにもいたと言うことだ・・・・・・」」

 ヒヒヒーーーヒヒ。

 

 一体何がそんなに面白かったのか。


 とにかくそんな事をしていた時、校内放送で筆者の名前が呼ばれた。

 当時中学3年生。受験のための校長との面接練習だったのだが、すっかり失念していたのである。

 校長はとてもコワイ。筆者は泡を食って校長室へ駆けた。

 ポケットに件のキーホルダーを突っ込んだまま。



「スーパーサイヤ人は悟空さんだけではない」


 面接練習、入室しお辞儀をした筆者のポケットからその台詞は飛び出した。お辞儀の動作でボタンが押されたのだ。

 校長は「オヤ?」というような表情をしていたが、それがキーホルダーから発せられていることに気付かず空耳と思ったらしい。筆者は脇汗ダラダラであった。


 その後面接練習はつつがなく進行した。15分程だっただろうか。すっかり筆者は気が抜けていて気付かなかったが、退室の際にもお辞儀をするのだ。


「ここにもいたということだ」


 お辞儀と共に飛び出す台詞。またしても「オヤ?」という表情の校長。

 筆者はしどろもどろになんとか失礼します、という言葉をひねり出して、ザリガニのように退出した。

 後に校長からは「君、クマにあったんじゃないんだから、後退りではなく普通に出て行きなさいよ」とお小言を頂戴した。



 数年前、トランクスくんに会った。

 

「まだベジータにはなっていないよ」


 なるほど確かに、彼はまだトランクスだった。


「でも最近、朝起きると枕に髪の毛が2,30本くらいくっついてるんだよね。これってヤバい?」


 彼は今でもトランクスのままだろうか。

 ベジータになっていなければいいが。




ハゲを差別するつもりは 毛 頭 ありません。

筆者にはハゲの友人がいますし筆者は包茎で苦しんでいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ