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挿話9.お茶会の後

「30.増えるお菓子」のアイヴィーとのお茶会後の話。レオナルド視点。



 皇宮のサロン。

 無駄に広いこの空間の窓際に腰を下ろしているレオナルドの元へ、一人の騎士がサッと近づいてきた。


「スペンサー様を門までお見送り致しました」

「ご苦労」


 報告に来た部下を下がらせたレオナルドは、ふっと先ほどのアイヴィーとの会話を思い起こしていた。


──隈……ねぇ


 グレイソン(あいつ)は元々、そんなに隈が目立つタイプではない。彼女がそれに気づいたという事は、二人がそれだけ至近距離で顔を見合わせていたということ……。

 そもそも、あの日、グレイソンは暗躍中であったはず。今まで任務中に、あいつがその姿を誰かに見せた事なんてあったか?


 レオナルドは、手に持つティーカップの揺らめく水面に視線を落としながら、口元を引き締める。


──いや、まさか。


 そんな……。

 以前、行われた茶会の後で、グレイソンは情報収集の手間を省くために彼女の好意を利用していると言っていたが……。

 レオナルドは瞳を閉じ、悶々と頭の中に浮かんできた一つの可能性を黙考する。しかし、カチャ、と目の前の食器が下げられていく音が聞こえ、ゆっくりと瞼を上げる。テーブルを挟んだレオナルドの目の前には、洋菓子をもりもりと頬ばるヴァネッサの姿がある。


「よく食べるな」

「? おいひいですから」

「…………」


 先ほどまでアイヴィーが座っていたその席に腰を下ろしているヴァネッサは、テーブルに並べられている茶菓子を次々と、黙々と平らげている。止まることなく手を動かし、皿から口へとまるで吸い込まれているように消えていく茶菓子たち。

 その細い体のどこにそんな量が入っていくんだ。と、少し険しい視線を向けるレオナルドは、つい先日見た、皇宮内で大量の料理を流し込むようにして食べ続けたハオシェンの姿を思い出し、胸焼けを覚えた。


「これもやる」


 レオナルドは、スッと手前にあった茶菓子をヴァネッサの前に差し出す。

 すると、ヴァネッサは一度瞬きをした後、珍しく少し嬉しそうな表情を浮かべた。そんな彼女の様子をじっと眺めながら、レオナルドは口を開いた。


「なあ、もしかして……」

「なんですか?」

「……いや、なんでもない」


 レオナルドは中が空になっているティーカップに目をやり、控えていた者にお茶のおかわりを命ずる。

 そんなレオナルドに、話しかけておいてなんなんだ、という視線を送るヴァネッサであったが、すぐにお茶と共に運ばれてきた追加の茶菓子に意識を奪われた。


「スペンサー様とのお茶会、もう少し増やしてもいいんじゃないですか?」

「……君が出される茶菓子を食いたいだけだろう。」


 レオナルドは、未だ能面な表情でありながらも、どこか美味しそうに茶菓子を食べ続けているヴァネッサを見ながら、少しくだけた表情で「それに、そんなに頻繁に会っても話す話題がない」と言って笑った。



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