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挿話4.素質はある

スペンサー公爵邸の日常。



 その日、部屋を出たアイヴィーは玄関先が見える二階から、スペンサー公爵がルイスに何かを告げてから仕事に出かける姿を見ていた。扉が閉まりスペンサー公爵を送り出してからは、ルイスは近くにいる使用人たちとにこやかな様子で談笑を始めている。


「…………」


 ルイス。私の前では圧倒的に変態ドM以外の何者でもないのだけれど、他の人の前ではしっかりとしているし、あの柔らかい雰囲気に和まされるのよね。騙されてる、みんな、騙されてるのよ……!





 午後。

 スペンサー公爵の不在を確認しているため、こっそりと資料室へ向かっていたアイヴィー。周りに人がいないのを確認してから、扉を開ける。


「わっ」

「えっ」


 中にはルイスがいた。

 一人で大量の本を持って、少し驚いた様子でこちらを振り向いている。


「あなたここで何してるの」

「お嬢様こそ……」


 私は旦那様から言いつかった通りに、この本の整理をしているだけです。と言ったルイス。

 しまった、あの時話してたのはこれの事だったのか。

 アイヴィーはぐっと眉間にしわを寄せる。


「お父様に秘密にしてよ」

「えー?」


 並べられているお目当ての資料に手を伸ばしながら、ジトっとした視線を向けたアイヴィーに、ルイスはいつもの軽い調子で答える。そうは言っても、聞かれない限りは黙っていてくれるんだろうけど……。


「ルイスはワザと任務を失敗したりして、お仕置きされようとかは考えないのね」


 さすがに父──スペンサー公爵の前では、あぁいった本性を晒してはいないのか、と思っていたアイヴィーが、何気なく呟いた言葉。しかし、その言葉を聞いたルイスは、ぱちりと目と口を開いて驚いたような表情を浮かべて固まった。

 ……しまった。余計なことを言ったかもしれない。


「旦那様は失敗したところで言葉で軽く叱咤されるだけですので……」

「いや実践済みかい」


「それに、旦那様はしっかりと仕事をした時の方が……」

「いや!いい!聞きたくない!」


 アイヴィーは耳を抑えて叫んだ。

 あのルイスが、しっかり仕事をした方が喜ぶ何かがあるなんて知りたくない!しかも、それが自分の父に対してだなんて!


 ギュッと目をつぶって耳を塞ぎ、ひたすら母音を叫んでいるアイヴィーを見て、ルイスはニンマリとちょっと悪い楽しそうな顔を浮かべていた。


「なにしてんの」


 また扉開けっぱなしで、と廊下から立ち止まってこちらを見ていたテオドールが、呆れたような顔で言った。


「きいてよテオぉ~~」


 アイヴィーの縋るような声に、やれやれと言った様子で部屋に入ってきたテオドール。思うままに話したかったが、かわいい弟にルイスが喜ぶ父との何かを聞かせるわけにはいかない!とハッとしたアイヴィーは、何をやってもご褒美になってしまうルイスに頭を悩ませていたと説明する。その話を聞いたテオドールは、きょとん、とした顔をする。


「サーチェス卿に何されても喜ぶ姉さんと一緒じゃないの?」


 テオドールに素直な瞳で、何が違うの?同族嫌悪?と、言われて、「や、やめて!一緒にしないで!」と喚くアイヴィー。

 そんな二人の様子を、ニコニコと見守っていたルイスであったが、ふとテオドールと目が合った。じっ、と何かを期待するような目を向けてくるルイスに、どうしたの?とテオドールは問いかける。


「テオドール様は、絶対にSの素質があると思うのですが、決してそのようなことをしてくださいませんので……。」

「…………」


 テオドールは、本能的に分かっていた。言えば言うほど、何かすればするほど、何をしてもこのMを喜ばせてしまうだろうという事を。そのため、普段は極力普通に接し、時に適度に無視し、ミスをしてお仕置き(ごほうび)を求める目をしている時は、優しい笑みを向ける。分かっていて、完全に回避している。故に、テオドールにはSの素質が、確実にある。


「いつかテオドール様に思う存分攻められたいです。」


 ニコッと、まるで純真な少年のような笑みを浮かべながら、まっすぐとテオドールに向かってそう言ったルイス。


「やめて!!テオに変な期待して変な希望を抱かないで!!!」


 かわいい弟に変な性癖推しつけないで!と叫ぶアイヴィーの傍で、テオドールは少し考えた末、無視することを決めたのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 積極的なルイスが… ~_~; 確かに、相手するのはちょっと遠慮したい。ww
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