314 それぞれの思惑
「どうしてそう思われますか?」
「戦略と戦術がちぐはぐだ。舞台で言うなら台本は良い出来だが役者が大根て所だ。それに王家に利益が行くように見え見えの罠が仕掛けてある。この台本を書いた奴台本だけ渡して後は高見で見物王家がモレルの私財をかっ浚ってフロントとセコンド、又は俺の経済的弱体化を狙った見たいだな」
「そこまで読まれてましたか。王家としてもこれ以上フロントとセコンドが力を持つ事は望ましくないのでその台本に乗りましたが参りましたな」
「宰相も抜けているな。セコンドと戦うのは王国騎士団と近衛なんだぞ騎士団と近衛は王家に所属しているんだ王家直轄の部隊を処罰するのは王家の問題だセコンドは関係無い村一つ貰うのはあくまでもモレルとの戦争で王国騎士団がセコンドを侵略した責任は王家に有るんだ。その責任をどう取るつもりだ?モレルの私財ってそう多く無かったぞもう既に無いし。台本を書いた奴は王家も踊ってくれる事を期待していたんだよ」
「あっ!」
「理解したか?セコンドが勝ったら賠償と身代金をどう捻出するかも考えておけ宰相のオーダーは最小限の被害だったよな。それと『フォースの街は壊滅させない』は既に果たしている。俺は言った筈だ適当なところで仲裁に入れと・・・シスかユイットの領地替えが目的だろうけど
モレルが王都を出た時点で抑えておけば良かったんだ。そうすれば王家は最小限の損害で済んだ筈だった。セコンドに対しては約束した村一つで済んだしフロントもフォースの占領迄はできなかった。サードに関してはどうなっていたかはもう今更だな。
賠償や身代金に関してはそいつに頼るなよセコンドと内々で処理しておいた方が良いぜ。こんなシナリオを書いた奴の事だ借りを作ればどうなる事やら貸す代わりに何を要求するか解らないぞ」
「台本を書いた者をご存知なのですか?」
「さあな、推測でしかないよ。このシナリオで一番得をする者は誰かって考えればすぐに解るさ戦争って奴は経済を活性化させるからな。お陰でフォースは商人が物価を高騰させて街をしゃぶり尽くす所だった。フロントでは商業ギルドのマスターが良くできた人物で物価の統制に協力してくれたし食料に関しては俺の一存で決める事が出来たから問題無かったけど。実際の武力戦争の裏に経済戦争を仕掛けてたんだよ。
そしてそいつの狙いは戦争が終わってからの物資の不足。今頃買い漁っているだろうな。余剰物資は全て俺が買い占めた後だから馬や武器・防具ってところかな。もしこの推測が当たっているのなら適当な理由を付けて内密に明日にでも強制捜査をしな恐らくモレル、コズンと繋がっているものが見つかったらどうとでも出来るだろ。こいつはオマケのプレゼントだ2人の屋敷で見付かった。これだけなら言い訳出来るけど問題は日付だ宰相が話しを持ち掛けられる前か後ろで変わってくるけど前だったら面白いよな」
「しかし相手はあの」
「相互御助組合の本部マスターだからってどうした?潰したら首がすげ替わるだけだろ喧嘩吹っ掛け来たんだそれも相手の土俵を装ってはいるが。騒乱予備、不当な物価の操作。王家を陥れようとした罪が適用出来るんだ王家がしないなら俺がするけどどうする。既に奴のフォースの商会は明日いや既に今日かにでも潰す段取りは出来ているんだ。次いでで潰してやるけどその私財は俺の物になるけど良いのか?このまま潰してもいいけど別の理由で潰して商業ギルド本部の連中に圧力掛けた方が王家に取って良いじゃないのか?明日1日俺が動くのは待ってやるそれまでに動かなければ俺が動く。商会なんて潰れても影響が出るのは1月か2月ぐらいでまたまたそこに利益を見出だせば商人が群がってくるし王家が少し潰した商会の私財の一部を投入すればそう影響は出ない筈だ。
羊はあくまでも羊でしかないんだ群れを作って大きく見せても狼の群れには食い散らかされるだけなんだよ一匹の羊で犠牲が済むなら大人しくしてるさ。奴らの怖い所は表面からではなく裏で動くところで暗殺や他の貴族を使うところだけどこの間大きな裏組織は誰かが潰した様だからそっち力は落ちている。やるなら今しか無いと思ったりして」
「わかりました。もう煽るのは止めて下さい。友人と相談して決めます」
「夜中に悪かった。今日は何かと忙しくてじゃな」
セイは結界を解きそのまま王都の屋敷からフロントに戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◇◇◆◆◆
セイが去った後、宰相は王都冒険者ギルドのモールを呼び出した。
「こんな夜中に僕を呼び出したのはそんな用件かい。笑えるね」
「しかし、こんな想定は予想して無かったよ」
「確かにこんなに早くしかも効率的にフォースを陥とすとはね。それも無傷で全く予想の斜め上を狙ってやるんだね彼は恐れいったよ」
「このシナリオに乗れと言ったのは君だどうしたら良い?」
「想定には無かったけどせっかく彼がお膳立てしてくれたんだ強制捜査すれば良いその書状だけでも取り潰せるけど本部ギルドマスターの身柄拘束と本部の捜索も次いでやって見逃せ無いもの以外は目を瞑ってやればぐうの音も出ないさ。はっきり言って彼らは頭に乗り過ぎた。
奴らのシナリオではフォースとサードが勝つと思ってセコンドとフロントを支配領域にって思っていたけど。僕らのシナリオは全く逆で結果的にセコンドとフロントが勝つのは判っていたから強くなりすぎない様にってシナリオを書き変えた結果がこれだ。彼が言う様にまあ、王国騎士団がセコンドに勝ってフロントに進行したとたんに壊滅するだろうね。セコンドが籠城戦に入れば尚更6千の兵力じゃセコンドは落とせ無いし宣戦布告を既にしているのならフロントはセコンドに入って大手振って援軍として戦える。
近衛の500騎が待機しているって君から聞いていたけど間に合うのかな?それに僅か500騎で止められるのかい?はっきり言って隊長クラスは強いけどそれ以外は弱いよ。フロントの一般の兵士達は冒険者のCランククラスで小隊長以上はBランク以上だよ。人選を間違えたね。せめて騎士団団長か冒険者ギルドの僕にでも依頼してくれたら良かったのに」「なんで?」
「500騎もの近衛でセコンド領に入ろうとするからさセコンド領へ攻め込んでいるのは近衛と騎士団だろそこへ近衛500騎がセコンドに入ったら後続だと思うのが普通で仲裁に来たと素直に信じる方がどうかしてるセコンドが勝っているなら尚更足止めするだろうね。戦費回収の為にね。
最悪は6千の兵士が壊滅する。
どれだけ生き残りがいるか解らないけど捕虜は王家が引き取る以外ないしその賠償額たるや如何程になるやら想像もつかない。近衛や騎士団の実家から徴収できるのは身代金だけだし実家が見棄てればそれまで。
だから王家の為にって訳じゃ無いけど両方に易がある様に君に提案したのさ。元々のシナリオを書いた奴を潰せってね。
それに僕の事まで読んでる節があるよ。君が言ったよね彼が『今回は見逃してやる』って言っていたって流石に深読みかも知れないけど結果的に彼の一人勝ちでフロントが1万5千の兵士達を壊滅させた事になるフロント損害はどれだけあったのかは知らないけどサードに進軍してかつフォースを占領できるだけの余力がある事だけは事実だ。もう認めるしかないよ。今回は僕らの負けってね。だったら勝ち馬に乗って最小限の損害で事を済ませるのが得策で内々に賠償を払ってまあ、詫びとして国庫に納める税の軽減で手を打って貰って占領されたフォースとサードは退去して貰うのに内々に金か税の軽減かしないとフロント、フィフス、サード、フォースそしてセコンドと帝国のアロンが彼らの領地になって王家と同等もしくはより巨大になってしまう。
そうなったら簡単に帝国に呑み込まれて王国は滅びるしか無いね」
「確かに4つ街を領地にしたら王家以上の力を持つ事になるけど脅威ってだけで彼らは王国貴族だよ何故帝国が出てくるんだ?」
「自覚が無いのかな?王家は間接的にフロントとセコンドの力を削ごうとしたんだつまり彼に喧嘩を吹っ掛けたんだ。それも既にばれてるし彼はこうも言っていたらしいね『この始末どうつけるか楽しみだ』ってね」
「あっ!」
「せっかく占領した街をただで開け渡すなんて考えられ無いね。何かしら対価は必要になるよ。力で抑えつけるのかい?彼は帝国貴族でも有るんだアロンとフィフスは繋がっているし彼の獣魔にはワイバーンが4頭もいるんだ彼、個人の戦力だけで国家なんて消し飛ぶんだ。王家を滅ぼし自分達の領地だけ治めて後は帝国に献上してしまえばって最悪を想定したらそうなるね。そうならない様に彼は提案したんだよ。優しいね。
彼は眠っているドラゴンと同じだ下手に起こすと火傷じゃ済まなくなる旧冒険者ギルドも彼に喧嘩を吹っ掛けて大怪我を負ってるし本当に僕らの亡くなった古い友人によく似てる」
「そうだね。彼の怒りを買う前に提案に乗る事にするよ」
「それでねちょっとした意趣返しに潰した商会の私財を渡すのならこちらの分の動産だけ差し引いて処分が長引く不動産や奴隷達を商会の名義変更して渡せば面白いと思う。どうせこっちの腹は痛まないしね」
「確かに。賠償はそれでいこう。茶番に付き合って貰う為にもね」
「さて、この分だと僕も忙しくなりそうだ。準備だけはするか」




