310 戦場
セイがフォースを占領した日の夜明けアレン達がフォースに入場しボルドにに後を任せ悠斗とラインバッハ連れてセコンド入りして、ファルコに2人を任せてボーダーに行き、サリナ率いる医療班とクリス率いるエルフの部隊をセコンド迄空輸して医療班は野戦病院の開設、ハルカとクリスはどう連携するか相談した。
スカイ達の偵察、斥候達の報告によりサードから進軍して来るのはサード領コズン伯爵と判明寄り子達の兵を集め王国騎士団と合流を計りフロントに進軍する事をモレルと密約を交わしていた。その文書をカール達が王都のモレル邸から盗み出し、事前にギルバートに見せフォースが片付いていたら元フィフス領を取り戻す算段をつけていた。
フィフスに展開して各村の鎮圧にセイの制作した弓と矢を使用した。抵抗する貴族に威嚇で屋敷の側に着弾させただけで貴族達は戦意無くし投降呼び掛けると素直に従って投降に応じた。反抗した貴族は10ある村の内3つが反抗する貴族が納める村だった。またフィフスから離反した村は2つ一つはサードもう1つはシスへと離反した。反抗した3家はフォースとフロントの間に有り独立、他の貴族の飛び地にする訳にいかず已む無く鎮圧に踏み切ったという事情が有り、フォース方面に援軍を送り込む事が出来なかったがセイの制作した武器のお陰で事情は一変してしまい。丁度、制圧が完了して占領に入った時期がセイがフォース方面の対策時期が完了した時期だった。
ギルバートは迷っていたフォースの予備兵力をフロントに回しフロントの兵を前線に押し進めるかその時の一報がカール達が入手したモレルとコズンとの密約だった。この密約は衝撃的であった。そこでセコンド連携を取りファルコ達を傭兵に仕立てコズンが行動に出ればこちらから打って出れば良いしコズンが単独で直接フィフスを攻めるつもりならそれでもよかったのだが、時期が問題だった。フォースに攻め込む時期とセコンドの進軍時期がこの世界ではほぼ同じ(実際は1日のズレがあったのだが)と予想され、流石に3方面同時に指揮は取れないと判断してコズンへの宣戦布告は見送っていたがフォースを片付けた今、問題無くコズンに宣戦布告を叩きつける事が出来る。
サード軍がセコンドの領内に足を踏み入れた時、サード軍前方1kmに500の騎馬兵団が現れサード軍の進軍を止めた。
その騎馬兵団から3名が飛び出しサード軍の前に立ちはだかり
「此より先はセコンド領であるいかなる者か知らぬがセコンドは許可無き進軍は認めぬ自領に引き返せば今回は見逃してやるがこのまま進むのであれば容赦無く盗賊として討伐する」
「我々はサード軍である。王国騎士団と合流すべく進軍中である盗賊とは笑止。貴様達こそ兵を下げよ王家に逆らう気か!」
「ああ、あのセコンドに進軍している賊のことか?お前達王家から出兵の要請を受けたのか?当方はなんの要請も受けておらぬ。また、王家に問合わせたところ王家は知らぬと返答があった。当家に無断で領地を進軍する事を決して許さん此より先に進むのならサード領主コズン伯爵からの宣戦布告ととらえ一戦交えさせてもらう」
「その数の騎兵で我が軍を止められぬものかどうせセコンドも我が領土なるのだこの者を血祭り上げてセコンドを蹂躙してくれるわ!」
「たった今、宣戦布告はなされた!サード軍はセコンド、フロントの敵と見なし討ち取る!」
駆け寄ってくる兵士達を尻目に3人はフロートボードに素早く乗り矢の届かない上空まで舞上がり待機していたペガサスに乗り悠々と自軍に戻って行き各員に告げた。
「宣戦布告はなされた各員戦闘用意、突撃! ヤシャシーン!!」
号令と共に500騎の騎馬隊は槍を持って突撃を開始しそれを見たサード軍5千も「蹴散らせ!」突撃した。両軍激突する100m手前で500騎の騎馬兵は左右に別れサード軍の左右の側面に回り射線が空いた途端、後方に待機していた弓隊がセイ特性『貫通』『加速』『速度増加』を付与された矢を放ち音速を超えた矢はソニックブームを撒き散らし前方の騎兵をなぎ倒していった。
最高射程3kmの特性の矢は的に当てる必要はなく逆に当たると人間相手相手だと肉片しか残らないため敵の頭上を狙う様に指示しておいた。
(実は試射の段階でカロン近海で海に向かって発射したところ幅10mに渡って海が割れた)
音速を越えた『ドーン』いう音と共に見えない衝撃波に薙ぎ倒され次々に倒れ5千の兵士達はパニックに陥り我先に逃げ出した先に今度は『衝撃』の矢が打ち込まれ逃げ出した兵士達が倒されサードの兵士達は退路を絶たれた事を知る。兵士達は心を折られ戦意を喪失してしまい指揮官も何も出来ず慌てふためきおろおろとするばかりだった。包囲が整いファルコが「射て!」と号令をかけ麻痺毒を塗った矢がサード軍に雨の様に降り注ぎ、「射ちかた止め!」の号令と共に矢の雨は止まりそこにはもう立っている敵兵士の姿はなかった。僅か5分で戦闘は終わった。いや一方的な蹂躙だった。
「念のために告げる我々はこれより掃討戦に入る。生きている者がいたなら大人しく投降せよ」
投降する兵士はいなかった。いや、投降する事が出来なかった。幸運にも麻痺毒のためかすり傷程度の兵士達も戦闘不能となり地に伏していたからだ。
ファルコ達は約半数を残し不意討ちに備えさせ掃討戦に入りスリーマンセル(三人一組)を組ませ一人は警戒、一人は麻の収納袋に死体を入れ、重傷者には止血の為に下級ポーションをかけ一人は捕縛という役割分担をして次々に自分達の役割を果たしていきその間に救護班が馬車を用意してまだ生きている重傷者を馬車に乗せ後方に待機していた野戦病院の天幕に運び込んだ。
野戦病院では運び込まれた重傷患者を召喚者達に鑑定を行い区分けした。欠損、骨折、内臓の損傷、頭部打撲による内出血等である。欠損、骨折はポーションで処理、脳内出血と内臓の損傷は中級ポーションを飲ませるか外科手術するかに別れた外科手術と言っても切開して下級ポーションをかけて止血、ポーションが飲める状態になれば中級ポーションで内臓や脳の修復を図る。
問題は脳内出血だった。大きな外傷のある患者は発見出来るが外傷がないまたは軽傷だが意識がないそんな者をある程度レベルの高い鑑定スキルを持っていないと判別出来る訳もなく。戦場処理にはセイと悠斗、そしてラインバッハが出てそういう患者を2人は鑑定をかけて探し回り、患者を見付けてはその場で治療した。戦場処理が一通り終わる頃には日がくれようとしていた。セイは淡々と機械の様に治療を行っていたが悠斗とラインバッハはそれぞれ違う思いで複雑な心境だった。
「サー、質問良いですか?「ん?」何故、敵に高価なポーションを使ってまで治療するのですか?」
「理由か、何故と聞かれても困るな。多分、刷り込みだろうな。「刷り込み?」ああ、俺や悠斗は此処に来て一年にも満たない。悠斗はもう2年近くになるけどな。この世界と俺達がいた世界とは道徳や倫理観が大きく違うんだ。俺達の世界の歴史を振り返って観ると人どうしの戦争ばかりしていた。
戦争の理由は様々だけど俺達が生まれる少し前に世界中を巻き込む戦争があった。まあ、きっかけはもう少し前の戦争で一人女性が戦争で敵味方の区別無く治療を行う人がいてな戦争で多くの怪我人を見てほっとけなかったんだろうな。その女性の姿を見てお前の様に敵の命を救うなんてと言う人が大半だったと思う。でも彼女を指示する人達も出てきてそういう組織を作ったんだ。
そしてさっき言った世界を巻き込む大きな戦争が起こった。その時に様々な兵器が開発された。兵器の種類は言わないけどその兵器を使うと大量の命が奪われるそんな兵器だ。実際その兵器は使われそして気付いたんだその兵器でお互い戦争したらどちらも滅びるって。その戦争が一応終わっていろんな取り決めが世界中の主要な国の代表が集まって決められた。捕虜の扱いや大量殺戮兵器の使用の禁止なんかをな。
そして、俺達が生まれて命、特に人の命は大切で尊いものだと教えられた。言っておくが今回が初めてなんだぜ人を殺したのは」
「えっ、サーは今回は参戦してないじゃないですか」
「此処で出た死者は俺が作った武器で死んだんだ。同じ事さ。こうなる事は解っていた。戦いじゃ無く蹂躙してしまう事も味方の損害を最小限する為の取捨選択だと割りきっていたけど罪悪感はあるんだ。俺、個人のせめてもの償いってのもある。まだ助かる命なら救おうってな。これで答えになったかな?
まあ、治療費は払える者には払って貰うし払えない者は仕方ないさ。今回の戦争の経費はまだ爺さんに払って貰ってないし今回の分の使ったポーションはこんな時の為に作っておいたポーションだから問題はない。
それと覚えておけいずれこの世界も変わる時が来る人間が欲張り過ぎたら滅亡するんだ。神々が降臨するだけでこの大陸が簡単に吹っ飛ぶんだ。王や皇帝なんてちっぽけな存在なんだ神々こそ特別なんだ。小さな存在と比べてどうする。お前が特別なら小さな存在を護れ。力ある者は力無き者を護る。高貴なる魂を持て。
『ノブレスオブリージェ』俺達の世界にはこんな言葉ある。『貴族の義務』だそうだ。領地、領民を護るってのが最低限の義務だ。これからお前がどう成長するかで人生が変わる。まあ、頑張れ」
「イエス・サー!」




