308 新兵ヘンリエッタ
「お前が今度入った新兵か?」
「・・・・・」
「名前は?」
「・・・・・」
「もう一度聞く名前は?」
「・・・・・」
ハルカはヘンリエッタの前に歩みより、いきなり顔面に馬上鞭を喰らわせた。そして驚き一瞬呆然となった引率していた兵士にも顔面に鞭を喰らわし
「この新兵に何を教えた?」
「何も教えていません」
「馬鹿者!」更に引率した兵士に鞭を振るう。「私はなんだ?「総司令ハルカ殿です」よろしい。私はこんな新兵に時間を取られる程、暇じゃ無い!軍の基本ぐらい教えておけ!」
「申し訳ありません。何も聞かされて居なかったもので」
更にその兵士に鞭を振るった。
「言い訳するのか?お前も教育する必要があるな。上官の命令は?」
「絶対です」
「上官に向かって反抗的態度は?」
「許されません」
「返事は?」
「い、イエス・マムです」
「よろしい。では、上官の命令に違反、反抗した場合はどうなる?」
「罰を受けます。最悪処刑されます」
「解っているじゃないか。意味の無い言い訳は反抗と受けとるいいな!」
「イエス・マム」
「罰として兵舎の周り50周走れ!その後通常任務にもどれ」
「イエス・マム」
その兵士は敬礼をして部屋を出てポーションを受け取り「ご苦労様」と言われ「これも任務ですしご褒美ですからから」と小声で話し立ち去って行った。
そう、これはハルカがヘンリエッタの為に打った三紋芝居である。説明するよりこの方がショックを受けるだろうし理解もしやすいと思ったのでエアトリアの側近でヘンリエッタと面識の無い兵士に頼んでひと芝居打って貰った。
そうと知らないヘンリエッタは鞭を打たれ反抗しない兵士を見て驚いた。そしてとんでもないところに来たと後悔もした。
兵士が去った後、ハルカは鞭を手で鳴らしながら「もう一度聞こう名前は?」
「・・・・・知っているんでしょ」
ハルカは鞭を振るって「答えになってない!「ひっ!」名前はと聞いたんだきちんと答えろ。少尉、貴様の名前は?」
「イエス・マム 華陽です」
「これが見本だ再度聞くお前の名前は」
「ヘンリエッタ・サージェ」
「ん?もう一度聞く名前は」
「ヘンリエッタ・サージェ・・・です」
「間違いないな?「はい」お前の身分は?」
「貴族、サージェ侯爵家息女」
「華陽この者を捕らえ即処刑する!密偵だ」「イエス・マム」
華陽はすぐさま命令を実行しヘンリエッタをねじ伏せ縛り上げた。
「華陽そこまで複雑な縛り方する必要あるの?」
「あら、この縛り方は(特殊な趣味を持った)高貴な方が特に好む縛り方って玉藻姉様から聞いてますえ」
「ふーん、そうなんだ。じゃ今度教えてよ」
「ええ、構いまへんえ。ハルカも覚えておいた方が良いかも♪」
「ちょっと、どういう事よ。密偵って?」
「この、書類内容とお前の回答に食い違いがある。名前と身分がな。先ほどの質問は本人確認のためだ。軍内部に密偵を潜入させないようにする為に行われる初歩的な作業だ。遊びでやっている訳じゃ無い、ー。この書類には名前はヘンリエッタ、身分は平民とある。お前は事もあろうかサージェの姓を名乗り、身分を貴族と回答した。身分詐称、虚偽の報告、密偵容疑。処刑するに十分な理由だ」
「ちょっと、ちょっと私と会った事あるはずよ」
華陽はヘンリエッタを殴り「ぐっ」「総司令に馴れ馴れしい口を利くな!」
「私はヘンリエッタと言う平民等会った事はない。華陽、少し拷問してこいつ素性を洗い出せ」
「イエス・マム。さあ取り調べ室と言う拷問部屋に行こうか」
「ちょっと、ちょっと待って。私はヘンリエッタ・サージェよ昨日までは・・・お母様に身分を剥奪されたの」
「華陽、待て。お前は元ヘンリエッタ・サージェなんだな」
「ええ、そうよ」
華陽が再び鞭を振るった。
「返事は先程教えた筈だイエス・マムとな。それと口の聞き方がなってない!」
再度華陽はヘンリエッタに鞭を振るい
「お前は此処に来た時点で最下級の兵士だ総司令に対して失礼な態度とるな!」
ハルカは薄く笑い鞭を鳴らしながら「返事は?」とヘンリエッタに返答を求める
「ひっ!い、イエス・マム」
「これはふざけているのでも遊びでもない。お前は昨日から平民でただのヘンリエッタだった訳だそれを先程貴族と答えた。此れがどいう事か解っているのか?お前も公的な場。軍による本人確認の手続きをしている場で身分を詐称した。身分詐称は処刑するに値する罪だと知っている筈だな」
「・・・・」
「まあ、昨日の今日だ一度だけ許してやる。二度と詐称するな。二度目は無いからそう思え」
「イエス・マム」
それから様々な質問をされて反抗的な態度を取るとヘンリエッタは鞭で殴られ従順になっていった。
「最後に人物鑑定を行う。構わないな」「イエス・マム」
鑑定を行った結果ハルカは驚いた。
個体名 ヘンリエッタ・サージェ 16才 ♀
種族 ヒューマン(エルフ族クオーター)
職業
Lv 3
LP 300
MP 350
魔法属性 光 闇 地 無
スキル 生活魔法 Lv 2 裁縫 Lv 1
礼儀作法 Lv 2 舞踊 Lv 2
ユニークスキル 精霊眼 Lv 0
精霊召喚 Lv 0
「ふーん、酷いステータスだな。なんの努力もしていない。ヘンリエッタを着替えさせて例の現場へ連れて行って作業をさせてちょうだい。私も後から行くから」
「イエス・マム。ヘンリエッタ二等兵付いて来い」「イエス・マム」
ヘンリエッタと華陽は敬礼をして部屋から出ていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◇◆◆◆
華陽とヘンリエッタが退室した後
「ポーラもう良いわよ。ヘンリエッタのステータス見たでしょどう思った?」
「『精霊眼』の事でしょ。珍しいわね純粋のエルフだったら生まれて直ぐに開眼しているのにもったいないわね」
「『精霊眼』ってどういうスキル?」
「レベルが低いうちは精霊が見える程度なんだけど練度が上がれば鑑定に近い能力や魔物の弱点が解ったりするんだけど欠点は魔力を結構使うのよ。最初のうちはスイッチの切り替えが出来ないからONになりっぱなしで魔力切れが頻繁に起こるの。種族がヒューマンだから開眼してなかったのが救いね。赤ん坊の時に開眼していたら多分死んでいたわね」
「エルフはどうなの?エルフの場合は生まれながらに魔力が多いし自然と精霊が仮契約してくれて精霊がスイッチを切ってくれるの」
「彼女の場合どう育てたら良いと思う?」
「そうね、彼女はっきり言って素養は有るけど体力も魔力も無いからそこから初めてレベルを上げてから決めればいいんじゃないかしら」
「まあ、基礎体力も幼児だしそこから始めるとして光の素養が有ったから錬金術師、薬師、回復師の路線で行って魔力は今ままじゃ『精霊眼』が突然開眼したら危ないわね。やっぱりパワーレベリングした方が良いかも」
「直ぐに魔力量を底上げするにはそれしか無いわね。それとも下級精霊と契約するかね」
「今日のところは土木作業だけで、明日から日中は土木、日が暮れたらポーション作りの手伝いか怪我人の手当てでやりますか」
「そうね。それが良いわ」
「今から侯爵に報告に言って来るわ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◆◆◇◇◇
「ハルカちゃん、どうだったうちの娘」
「素養は特別?特殊でしたね。これがヘンリエッタ嬢のステータスです」
「えっ!貴女、鑑定を使えるの?レベルはいくつ?」
「まあ、侯爵だから良いけどスキルの詳細を聞くのは頂けませんが・・・」
「そうだったわねごめんなさいね。で、レベルは?」
「レベルは5です。ここだけの話しですが召喚者はアイテムボックスと鑑定は必ず持ってますから」
「そうなのね。そんな事話して良いの?」
「少々思う所が有りましてセイ君が売り払った奴隷の中に元勇者が2人と後数人犯罪奴隷としてフロントで売られていますよ。既に買い手がついたかも知れないけど」
「ふーん。そうなの。で、その情報を私にリークした理由は」
「訳あってレベルもスキルもリセットされて加護も消されて使い道は鑑定とアイテムボックスしかないですけど売れ残っていたら軍で戦闘奴隷として使うのも良いのかもって思っただけですよ。即戦力にはなりませんが物資の運搬には使えますしそいつら人を殺してますから道具としては訓練次第では使えるようなるかもしれません。フロントでは多分戦闘奴隷は買わないでしょうから安ければお買い得かも他所の貴族の戦力になるくらいならセコンドの戦力にした方がましかなと思っただけです」
「なるほどね。考えておくわ。それでヘンリエッタの事だけど」
「ええ、見ての通り全く使い物になりません基礎体力は幼児レベル魔力はエルフの血筋のせいか少しは有りますが『精霊眼』が問題で有用なスキルらしいですが開眼すると制御出来る迄ずっと使われ続ける事になって直ぐに魔力枯渇が起きるそうです。素養は訓練すれば回復師、薬師、錬金術師にはなれると思いますが現状のままでは魔力量を増やす訓練をしても直ぐには魔力量を殖やせません。侯爵はお嬢さんに何を望んでいますか?」




