307 貴族の娘って
少し話しは遡り、此処はセコンド侯爵家別邸。
「ヘンリエッタご機嫌いかが?」
「お母様どうして此方へ」
「少しは反省したかしら?今日は貴女にお話しいいえ此処から出るチャンスを与えに来ました」
「本当ですか?」
「ええ、本当よ。今のセコンドを取り巻く環境を知っていますか?」
「いいえ、興味ありませんから」
「つくづく貴女には失望させられるわね。まあいいわ、現在、フォースと戦争状態にあるのもうすぐセコンド領に敵が攻めて来るわ。敵の兵力はフォース軍1万と王国騎士団と近衛が6千後はサードがそれに呼応すれば5千ってところかしら此方はフロントと協力するけど3千と1千の傭兵で迎え伐つ事になるわね。
幸いフォース軍は全軍フロントに進軍したから私達が受け持つのは王国騎士団と近衛の6千とサードの5千3倍近い兵力の差が有るわね」
「だったら逃げなきゃ。お母様逃げましょう」
「本当に教育を間違ったわ。貴女は貴族をどう思ってるの?貴族は領民の命と財産を護る為に存在するのその見返りに領民は税を納めてくれてるのそんな基本的な事も知らないなんて情けない。説得なんて無意味だわ。いいことよくお聴きなさい。フロント軍に傭兵して入るかセコンド軍の最下級兵士になって参戦するか此処で自害するか教会へ行って修道女になるか今すぐに決めなさい」
「嫌よ嫌!特別な私がなんでそんな事しなくちゃいけないの嫌!逃げるの!」
「そう、わかったわ。貴女が逃げるという選択したのならそれでも構わないそのドレスを脱いでこの屋敷から身体1つで出て行きなさい。逃げるという選択をした時点で貴女は貴族ではないし、侯爵家の者では無いわ。そのドレスもアクセサリーもみんな領民が自分達をこういう時の為に支払ったお金で得た物よ貴女にそれを身に着ける資格も無いし帝国の捕虜になっている家臣や貴女の父までも見捨てるというのなら私もそれなりの覚悟を決めました。貴女が特別というのなら身体1つで生きてみなさい。簡単でしょ貴女は特別なんだから」
「そんな~」
「貴女が命令して家臣達が従うのは貴女が侯爵だったから貴女がそのドレスを着て食事に不自由していないのは貴女が単に侯爵家に生まれ領民達が税を納めてくれたから貴女自身に従った訳ではなく侯爵と言う役職に従っただけ。貴女を侯爵と言う役職から外せば少しは反省して理解してくれると思ったけど甘かったわね。
もう一度言うわ最下級兵士として参戦するか裸でこの屋敷から追い出されるか選びなさい。それとこの手紙を読みなさい」
「これは?」
「貴女がお兄様の屋敷で会った少女よ。貴女が平民と蔑んだ・・彼女いえハルカはいま臨時だけどセコンド軍最高司令官をやっているわ。私からお願いしてね。ハルカは兵士達全員の前で個人の武と指揮官としての能力を見せつけ兵士達はそれを受け入れたわ。『鋼鐵の少女』『冷血の聖女』なんて呼ばれてるのよ。
それともう1つフロントの彼、お兄様の養子になったのよ帝国貴族で唯一の領主。王国では侯爵待遇普通なら王家が辺境伯爵家の養子なんて認めるはず無いのに認められてフロントだけでなくセコンドまでも大きな利益をもたらしてくれているのそんな彼が250人の傭兵を率いて2千も捕虜にしたのよ。
それこそ特別って言えるでしょうね。ハルカにしてもセイにしても自分達は何も特別って思って無いわ。人が自分には出来ないと思って諦めて特別って思うのが特別という本当の意味よ。そのメモ早く読みなさいハルカから貴女にってね」
ヘンリエッタはそのメモを読んで
「何よこれは!」
ヘンリエッタは真っ赤になってメモを握り絞めた。エアトリアは更に煽り
「あら、これって『貴女が蔑んだ特別で無いただの平民の私が出来る事なんだもの特別な貴女は簡単に出来るでしょ。私に貴女が特別優秀だという事を見せてご覧なさい。出来るものならね。戦いから逃げたっていいのよ別に貴女がいなくても何も変わらないから貴族としての矜持がない貴女はせいぜい政治になるのがお似合いよ 元侯爵閣下へ貴女が蔑んだ平民ですら無い奴隷の身分の者より』って読めるんだけどこれはちょっとねぇ~」
「お母様すぐにこれを書いた者を殺して!!」
「それはダメ!」
「どうして!実の娘が此処まで馬鹿にされているのよどうして!」
「そんな事も解らないの本当にお馬鹿なんだから。いいことよく聴きなさい!もうハルカはセコンド全軍を一人で掌握しちゃってるの。さっき個人の武を示したって言ったでしょ。セコンドの精鋭50人が攻撃してわざと受けきって一歩も動かず精鋭達を倒したのよねぇ。それに、暗殺は出来そうかな?アプリ」
「暗部総動員しても無理かと。人質っと考えみたのですが戦闘に関してはハルカ様が最弱のようで。気配を消したり軽い毒を盛ったりはセイ様のお宅ではお遊びのようで『あら、此処でもやっているのね♪良い事よ日々是政戦場って』と言われアルフ殿に問い合わせたところ日々研鑽させて頂いていると回答がありました。それに今ではポーラ様も華陽様もおられまして時たまポーラ様には麻痺毒を、華陽様には背後を取られまして『精進なさい』と修行をつけて頂いております。はい」
「アプリコット達でさえ無理なのにどうしろと?」
「だったら奴隷なんだからその主人から奪えば良いのよ」
「浅はかな悪知恵だけは働くのねそれはもっと無理ねぇ。ハルカの持ち主はセイだものどうやって奪うの?」
「お母様は実の娘よりセイやハルカが大事なの?」
「貴族としても人間としてもセコンドの領主としてもセイやハルカが貴女より大切だし気に入っているわ。セイが私に献上という形でくれた物だけで白金貨10枚は下らない。セコンドにもたらした利益だけでも大金貨20枚その上セコンドそのものの利益を考えて産業を活性化するように取引してくれている。ハルカは身分は奴隷だけど帝国から召喚された異世界人の一人よたまたま王国の戦争に巻き込まれ奴隷にされただけ能力も知も貴女より数段上よ。国家が囲いたくなるほどにね。セイが一番敵に回したく無いって言わせる程に彼女は有能よ。人格も優れて人がどうやったら従ってくれるか解ってる。貴女は特別って言うけど貴女の価値ってなんなの?侯爵令嬢って肩書きだけしか無いじゃない。お金を稼ぐ事も出来ない。政治も経済も外交や交渉すら出来ない。ただ侯爵令嬢ってだけで侯爵家の財産を浪費しているだけ外交道具として使えそうだから置いているだけの存在なのよ。その価値すら下がっているわ。
さっきも言ったけどもう見切り時なの今回の戦争で武勲を上げた兵士に引き取ってもらうわ側室でも構わないから少しばかりの持参金をつけてね。それくらいの価値しか貴女には無いのよ」
「そんな~、そんなの嫌」
「貴女、貴族の娘でしょ、貴族の娘は外交の道具になって他家へ嫁ぐのが普通でしょ。貴女が交渉すら出来ないんだと内外に示したんだもの他家の正妻になんかなれる訳ないじゃない。かといって家柄が邪魔して他家の分家筋の正妻っていうのも難しいから侯爵家と縁を結んでも良い家の側室として子を産む道具ぐらいしか使えないのよ。それも賞味期限が有るから時が経つほど腐っていくしね。見切り品として売り払うしか無いじゃない。それとも貴女は特別だから侯爵家を継いで気に入った殿方を婿にって思っているの?私はハーフエルフよ生粋のエルフより寿命は短いけどヒューマンより3倍は長い寿命があるのよ。
旦那と家臣達の生存と行方を探す為とセコンドの将来を思って引退したのよ。貴女しか直系で丁度良い年齢の子供が居なかったから貴女の弟のヒースが成人して政務が出来るまでの繋ぎだったのよ。貴女の周りを見て解らなかったのかな優秀な者を揃えて彼らが全てやってくれたでしょ。無能だから故に、解らない故に何もしないで家臣達に任せておけば数年は維持してその内優秀な婿にって思っていたのよ。貴女が仕出かしたことで事態は想像を超えてしまったけど。貴女以外は良い方向に転んだからいいけど逆に言えば僥光だったわ貴女が侯爵だったらこのセコンドはどうなっていたのか想像出来ないもの。他の貴族の笑い者になっていたか下手をすると逃げ出して最悪の選択していたかも知れない。
いい。逃げ出すのは最悪の手段なのよ喩えセコンドが無事だったとしても戻って来られると思う方がどうかしてる。そんな領主誰が認めるの?自分だけ逃げ出して護ってくれない領主に誰が税を払ってくれるの?兵士達もそう領民達を護る為に戦うでしょうが自分達を置いて逃げ出した領主に誰が忠誠を誓ってくれるの?
セコンドが滅びればもう貴族じゃなくなるの逃げ出して命は助かっても貴女は持ち出した物を食い潰すだけ哀れな末路が待っているだけよ。
いくら頭の悪い貴女でももう解ったでしょ平民の服と着替え一着と金貨1枚分のお金だけあげるから一人でこの屋敷から出ていくか、貴女が最下級兵士として今回の戦いに参加して有能である事を示しなさい。たった今から貴女の身分を剥奪します」
こうしてヘンリエッタは兵士となった。




