299 お前もか・・・・
ギルバートの屋敷を出たセイは白、ミリアとベガを伴い王都を出てセコンド方面に向かって飛ぶと直ぐに夜営の準備をしている軍を見つけたがスルーしてセコンドの侯爵邸迄飛んでエアトリアと謁見の間で拝謁した。
「侯爵閣下、面倒な挨拶は省きます。本日はご報告に上がりました」
「あら、なんの報告かしら?」
「昨日、フロントのフォース方面の関所が襲撃され、フロントは速やかに盗賊討伐軍を編成して本日、それを実行し制圧いたしました。逮捕者約二千名。事情聴取した結果フォース第2第3騎士団と判明致しました。この事実を義父ギルバートが知り激怒され本日これからフォース領主モレル伯爵に対して宣戦布告を行います。現在モレル率いる軍は王都を出立しセコンド方面に進軍しております。モレルからセコンドの通過許可を求める書状があったかどうかとモレル率いる軍をセコンド領を素通りさせる意思がおありなのかの確認に伺いました」
「まあ、二千の盗賊ですって!フォース所属の騎士団がなんて事を!セイ、勿論、証拠はあるのよね。その者達が嘘偽りを言っているのではないの?」
「証言に関しては真偽官立ち会いのもと事情聴取を行い調書を作成中です。また、証拠の品として盗賊を討伐した際に押収した盗賊どもの装備、所持していた物が有ります。ご覧になりますか?」
「ええ、見せて頂戴」「此方が証拠の一部です。ご覧下さい」
セイはフォース騎士団団長の装備してた鎧と武器、そして、団旗とフォース領主のモレル家の紋章の入った領旗をセコンドの貴族達が見守る中、侯爵に見せた。
「確かにフォース領主モレル伯爵家の紋章。確認させて貰ったわ。しかし何故、盗賊なの?」
「我がフロントはフォースからフォース騎士団の通過許可を求める書状は届いていません。ましてや宣戦布告の通達も、そしてフォース騎士団からも関所で『投降して開門せよ』と言っていきなり火矢を射掛けてきて関所の門を破壊して関所を占拠して我が領内に侵入して来たのです。所属はどうあれ立派な犯罪行為であり、何により名乗りもせず関所の門を壊した者どもは騎士等ではなく我々は盗賊だと断定しました」
「確かに盗賊、強盗の類いだわ。でも、騎士団が勝手に盗賊行為をしたんじゃないの?」
「事情聴取の結果。現在フォースは8千の軍をフロントに向けて進軍中で早くて明後日に関所に到着する様ですし、騎士団に命令を下したのはモレルと証言も取れております」
「で、セコンドに助けて欲しいのかしら?」
「いいえ。セコンドがモレルにどう対応するかでフロントの対応も変わってきますのでどう対応するのかお聞きしたいだけです。フロントだけでも勝てますから」
「あら、大層な自信ね」
「自信ではなく事実です。もうモレルの敗北は決定していますから。我々フロントが宣戦布告をした時点で我々の枷はなくなりますのでフォースは食い散らかされるだけです。狼の群れの前にたかだか8千の羊の群れは何が出来るのでしょうね。2千の羊に対して我々が投入した部隊は250、過剰戦力でした。我々の部隊は無傷で制圧しました。狼の前には羊は無力ですよ」
「本当?本当に約10倍差を覆したの?無傷で?」
「ええ、無傷で」「セイ君抜きで?」
「指揮は取りましたが、自分は関所の制圧で100人を無力化しただけです。で、どうされますか?此方に乗りますか?それとも・・・・」
「我が甥、セイの言葉を聞いたであろう。フォースの傍若無人なやり方は呆れ果てる。此処まで戦の倣いを無視しフロントに軍を進めておる。皆の者はどうする?セコンド領をモレル率いる者どもに許可無く通過を許して良いのか?王家からは騎士団や近衛の通過を求める通達は届いておらぬ。ましてやフロントを叱責するような事実も無い。
王家にセコンドに向けての進軍を問い質したところ演習との事であったがその事実は王家は知らなかった。王家直轄地で演習をするのであれば我らの感知するところで無いが許可も得ず我が領内に進軍するは最早宣戦布告も同義。王家もまた激怒しておられる陛下の許可を得ず勝手に近衛を動かし王国騎士団まで利用する。前代未聞の事態である。
事前通達もなく軍を我が領内に入れ通過させる等持っての他、喩え近衛、王国騎士団であろうとも許すまじ。此を許すと他の貴族達の笑いものだ。セコンドは他の貴族から嘗められて良いのか?妾は嫌じゃこれ程の屈辱は無い!モレル率いる軍が一歩でも我が領内に入れば宣戦布告と見なし撃退する。よいな皆!
また、フォースに隣接する領主に告げるモレル率いる軍と開戦と同時にフォースに攻め入る。兵を集めよ」
「「「「「「「「「「オー!!侯爵閣下に栄光あれ!!」」」」」」」」」」
「セイ、これでそちの回答になったかな?」
「はい。ありがとうございます」
◆◇◆◇◆◇◆◆
「ごめんなさい。こんな茶番に付き合わせてしまって」
「いいえ。士気を上げる事は大切ですから。それとフロント戦場はフォースとの緩衝地帯に移り早くて明後日開戦すればその日か日を跨げばその翌日にはけりを着けます。多分その日はそれにかかりっ切りになるでしょうがセコンド軍が関所を攻める日は門だけ壊すの手伝いますのでハルカに伝えて下さい。関所を攻める司令官にも仮面をした助っ人が来ると」
「助かるわ。必ず伝えるわ」
「それとお嬢さんはどう決断しましたか?」
「ハルカちゃんの挑発に激怒して乗ったのは良いけど悲惨な目にあっているわ」
「あいつも容赦しないですからね」
「でもあそこまでするのね。貴方達の世界の新人兵士の訓練は」
「軍は今まで育ってきたところの常識とは全く違う理不尽なところだと刷り込ませますから何せ魔物がいないので軍は人を殺す為に存在しますからね。まあ、災害救助の為にも活躍してますが」
「魔物がいない世界なのね貴方達の世界は一度見て見たいわ」
「こんな感じですね」
セイはスマホを取り出し都会の風景写真を見せた。
「なにこれ!」
「これが俺達が住んでいた国の都の夜間の景色です」
「光がこんなに!眩いくらい。こんなに沢山の魔道具が使われているなんて凄いわ」
「・・・・・」『説明したら面倒だ。黙っておこう』
「侯爵閣下、書状も預かったことですしそろそろ行かないとまずいのでモレルに書状を叩きつけてきます」
「あら、もっと見たかったのに・・・そうね気を付けてね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
侯爵邸を出てミリアと共にモレルが夜営する陣地に降り立ち
「フォースの領主モレル伯爵はいるか!モレルはいるか!」
「貴様、何者だ!伯爵様を呼び捨てにして無礼な!」
「黙れ!俺の名は、セイ ワタヌキ エドワード帝国アロンの領主だ侯爵待遇の俺が伯爵ごときに何故敬称を付けねばならん。今日はフロント領主、セコンド領主の名代でやってきたモレルを出せ!」
セイは魔力を解放して周囲を威圧すると周囲の者は身体が恐怖を感じ硬直して動け無くなった。周囲を無視して先に進もうとすると傍らにいたミリアが
「あら、バーラじゃないの?久し振りね100年ぶりくらいかしら」
「えっ?ミリアおばゴホン姉さん?」
「なんであんたが此処に?それにその首輪。まあ、あんたで良いわモレルの所へ案内しなさい!」
その時我に返った者が
「侵入者だ!出逢え!出逢え!」
「うるさい!黙れ!」魔力をのせたセイの言葉に周囲の者達は腰が砕けしりもちをついたり失禁、気絶、恐慌状態に陥る者ほとんどの者が戦意喪失してしまった。威圧を放ったまま仲間を呼んだ者の前に立ち
「おい、誰が侵入者だ、誰が侵入者なんだ?俺は身分と氏名を名乗り此処に来た理由を説明したよな辺境伯、侯爵の名代で来たと言った筈だ。どうやら死にたい様だな」
男は首を何度も横に振りながら「すみません。殺さないで下さい」
「じゃ、モレルを此処に連れて来るか、案内するかどっちが良い?」
「案内します」
「します?「させていただきます」よろしい。案内しろ。バーラお前も一緒に来い」
男はビクビクしながらモレルの天幕まで案内した。「この天幕です」
なにやら「そこっ」「お願い」「もっと」「あ~いい」等と変んな声が天幕の内側から漏れている。
『モレル、お前もか・・・・』




