263 フォースのヴァーサ
少しキャラクターが私の脳内で動き始めました
暫くの間水曜日と土曜日の週2回の投稿となります
読んでいただけたら幸いです
金封楼の宴から数日セイは忙しく動いた。
花街の一時的封鎖、診療所の開設に向けて準備。抗菌薬の作成等を行い、捕虜となった戦闘奴隷達の選定と引き抜きと言う名の購入等々。
奴隷達の購入に際してはほぼハルカとクリスとガガ、シルビアとミーナに任せたところ捕虜となった戦闘奴隷の約1割の500人にも上りセイは頭を抱えたが外壁内縁部にある仮設住宅の一角に新たに住宅を建てそこに住まわし契約を行った。
内訳はエルフ族130人これはクリスとの約束だったので種族だけで採用し50人はドワーフ族。約200人は獣人族。残りは人族という内訳となったが値段で揉めた。セイは其なりの金額を用意していたのだが軍は受け取りを拒否して変わりに馬を300頭を要求され選定させて欲しいとの事だった。
セイとしては問題なかったが『それだけで良いの?』とも思ったがまだ馬の選定が終えていない以上迂闊に返答が出来なかった。経験上馬以外のものがいるからね。交渉の末セイの思惑を伏せたまま皇帝陛下に献上する馬の選定がまだ終えていない事そしてその馬が今回の戦いでの報奨にされる旨を伝え選定を終えた後で構わないとの言質を取り決着を見た。
現在、王国、帝国で軍馬は不足しており帝国軍としては深刻な問題だった。帝国は多方面作戦を実施しており周辺諸国とも大規模な進行作戦はしていないが国境には其なりの軍を布陣しており緊張状態にあった。デフコン2(準戦闘状態)である。
そのなかで一番大きな進行作戦であった王国との戦争は停戦という一応の終結を迎える事になり結果は五分の引き分けならまだしも王国の敗戦に近い形で幕を引く事になりそうで王国以外の国は王国に向かっていた兵士が自国に向かって来るのではとの疑心暗鬼が生じ周辺諸国は軍備拡張を行い始めた。そういう事情が有っての今回の馬市である。周辺諸国の軍備拡張に伴い馬の値段も高騰の兆しを見せ始め帝国軍もそれなりに周辺諸国に合わせる必要もあり戦闘奴隷よりも軍馬が喉から手が出る位欲しかった。
元々皇帝が変わり肥大し過ぎた軍をスリムにして内政に力を入れるつもりの帝国としては迷惑な話だったが元々セイ一人で捕虜も馬も手に入れたもので捕虜はセイが制御できない為に帝国軍に丸投げしたに過ぎず馬と奴隷達と交換しただけの事だった。
そして帝国軍としては少しでも周辺諸国に軍馬を渡したくなかったという思惑もあった。結局セイは現状只で人材を手に入れた事になるが陣頭税の事を考えると頭を抱えたが500人全員がアロンを拠点とするわけでもなく何かしら働いて自給自足をして貰うのだからと頭を切り替えた。
ただ、その後元戦闘奴隷達にも家庭を持っていた者が居る事が判明して更に増える事になるのをセイは全く考えもしなかった。
そんな事が有りエルフ族の事はクリスに任せ獣人族の事はガイとガガ、人族に関してはシルビアとミーナに任せ生産系専門職のスキルを持つ者、鑑定系スキル持ち等はハルカ達に任せ丸投げしその合間に王国の各都市をまわりミリアとボルドを伴い欠損奴隷達を引き取っていった。『戦力増強?』
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時は少し遡る。此処は王国フォースの街このフォースを統治するモレル伯爵は野心家であった。領地と家柄、地理的関係から帝国の抑えというよりは王家の守護という意味合いが強く近衛士官を多く排出している家柄でもあった。領地に関しては魔の森からもフロントを挟んでいるため程遠く王都からも東に位置し領地の半分は山岳地帯で平地が少ない為にそれほど豊かな土地とも言えなかった。
モレル家は良く言えば武門の家柄で武を重視するあまり他家との繋がりも近衛や騎士団との関係を持つ家と繋がり文官との関係も冷めたもので武功を立てぬ者を軽視いや下に見ていた。謂わば猪突猛進型の脳筋の家系でそんな環境に育ったモレルの息子もその例に漏れず戦は猪突猛進で叩き伏せればそれで良いという考え方をしていた。
まっ、王家からすれば暴れん坊だが個人の武量はあるし忠義はあるのだからそう問題視することもないだろうと思い家柄もあるし近衛の士官として採用したがこのモレル近衛の士官になった事でその息子が頭に乗りモレルの隣接する領地にちょっかいをかけるようになり度々問題を起こしその都度王家が仲裁に入った。
そんな事をやらかすモレル領だから当然、隣接する領地は緩衝地帯を設け、直接領都に入られないようしていた。フロントやセコンドも緩衝地帯を設け街道には関所が置かれているが簡素な物だった。
そんなフォースの領主にこの息子有りってことで自分の力を見せ付けたい思いからフロントを狙っていた。当然、フロントとフィフスとの戦争でフロントを狙い出陣したが王家が異例の対応の早さを見せ挫折、そして諦め切れないフォースの領主の息子ヴァーサはセコンドとフロントに密偵を送り込み騎士団の内情を調べさせた。
セコンドにおいては帝国遠征の煽りを受け騎士団の半数の馬が無くフロントに至っては主力部隊が王都に駐留その上装備や馬も無くフロントへの帰還もかなり時間がかかりフィフスに駐留する部隊をかなりの数を派遣したとの報告が届けられた。ヴァーサはフロントに攻め込むチャンスだと思った。
「フロントにはろくな兵力が無いセコンドからの援軍も期待できまいフォース全軍5千を持ってフロントを攻める」
「ヴァーサ様フロントを攻めるのはお止め下さい。戦争を行う名分がございません。王家にどう説明するのですか?」
「名分はあるではないか元々関所があった付近の村は我が領地だったところ先先代のフロントの領主が不当に奪ったそれを俺が取り返すのだ立派な名分であろう」
家臣達もそれほどちゃんとした教育を受けていない為何も言えなかった。フロントの現当主のギルバートの父親は優秀な領主だったフロントの発展に寄与し開墾も進め領民も誘致して今のフロントがある当然、隣接していた貴族特にフォースの当時の領主は面白くなかったギルバートの父親は文武両方に才能があったが他者からみれば文武の文に秀でているよう見られていた。当時境界線が曖昧で境界線付近で開墾した者が領主を選ぶ事が出来た。当然選ばず自主独立という事も出来たがその場合は大抵が攻め滅ぼされた。
ヴァーサの言った事は事実であり事実で無い確かに境界線が曖昧で村とまで呼べない程の集落を先んじて占領したのはフォースの領主だったがその集落の開拓費用を出して開拓したのはギルバートの父親だった。当然、ギルバートの父親とフォースの当時の領主はもめにもめて結局、力と力のぶつかり合いとなった。
結果、フォース軍が村からの撤退を余儀なくされそのままフロント軍はフォースへの進行する直前に王家の仲裁により現在の境界線が双方同意のもとに決まり干渉地帯と関所が設けられた。はっきり言ってギルバートの父親にとっては不満の残る結果であったが曖昧な境界線をやや有利に引くことが出来たぐらいで手を打ち王家の顔を立て小さな貸しを作ることで好とした。
ヴァーサはその経緯を都合良く解釈しただけで極端に言えば千年前は俺達の祖先が統治していたからそこは俺達の領地だと言っているのと同義だ。まだ王家の仲裁が入っていないのならその主張もかなり無理があるが力を背景に主張出来るが王家の仲裁が入り両者同意での条約が結ばれたのだからヴァーサの言い分は通らないまさに侵略行為である。
ヴァーサは速やかに徴兵を行い速やかに進軍する予定がスムーズに進軍を行う事が出来なかった。
「何故、準備が整わんのだ!」
「申し上げます。フォースでの食料や馬の餌である穀物類の余剰物資全て誰かの手により買い占められて現在他の街や村から買い上げている最中で少々時間がかかると思われます」
「今回の作戦は時間との勝負だフロントの戦力が整わぬうちにフロントを蹂躙して我々の領土を殖やすのだ」




