261 宴もたけなわこれで良いのか?異世界文化
歌劇は演劇と無声映画の組み合わせで皆は楽しめたようだ。歌舞伎よりも言葉がストレートなので理解しやすかったが歌詞と演技が噛み合っていないように思えた。これは俺の翻訳スキルのせいなのかわからない。別れのシーンで声張り上げて姿勢良く歌うんだ『確かに上手い』『凄い声量だ』『悲しい場面で精一杯大きな声で高らかに歌うってありなのか?』文化の違いってことで気にしないでおこう。
歌劇も終わり次の演目はミリアだった。舞台は暗転し備え付けられた薪に炎の精霊『サラマンダー』が現れ薪に火を灯し水の小精霊達が幾つもの小さな水球を造り出し風の小精霊達が小さな水球を浮かし風によってランダムに移動させるその動きに合わせて光の小精霊達が水球を照らして幻想的舞台空間を造り出しているそしてその舞台の上空に水のレンズが浮かび光の小精霊がレンズに光を集めスポットライトとレザー光線のように細い光を交差させたりしながら動かしていた。
『まるでディスコの様だな。此れでお立ち台が有って羽扇子を持って女性が踊ればクラブだ』
華やかな光のショータイムが数分続き観客達と歌劇団のメンバー達は驚き、ため息をついた何処からともなく「綺麗」と呟く声が聴こえたがそのステージを演出しているミリアは舞台にいる訳でもなく胡座をかきポン酒をグビグビと飲んでどうやら酔っぱらいながら精霊達に念話で指示出しているようだった。残念エルフである。
俺やエルフ以外の観客達は精霊達が見えないがかなりの数の小精霊達が集まり俺にはミラーボールが出来上がってそれが移動している様にも見えた。
その光のステージが一旦消え暗転になりいよいよ玉藻と華陽登場となった。アミカの奏でる横笛の音色と共に舞台の中央に暗転の内に設置された椅子に玉藻と華陽は座し三味線を持ち弦を撥で弾く静寂を破る軽快なリズム激しく動く左手、紛れもなく何処かで聞いたアニメソングそれも劇場版某小さな名探偵の物語。観客は庭出て腰をくねらせ踊り出す。劇団の女性は扇子を持ち出し舞台の袖で扇子をくねらせ『私を見て』って感じだ。
『某クラブだなぁ。誰だこんな事流行らせた奴は。侘び寂もあったもんじゃない』俺は思わず頭を抱えた。そして曲が変わり今度はハードロックにそして最後には興奮して魂の叫び、野生の血が滾ったのか三味線を燃やすパフォーマンス迄した。
『文化の流出は良いがこの演出はどうなんだろう?この世界の貴族達はこれをどう受け止めたんだろう?』元ネタを知っているだけに妙に和洋折衷でアンバランスな昔の洋物映画に出てくる日本のイメージが思い浮かんだ。
『まだ、津軽三味線の方がこの庭には合っているような気がする。昔の召喚者が残した文化だろうし祇園や吉原なんかの郭遊びなんか知るわけ無いか期待したのが間違いだったな。仲間や招待客が喜んでいるなら良しとしよう』
『アルファ、シータ庭に潜んでいた奴等はどうした?動かないようだけど』
『ミリアが闇精霊を使って眠らせてシータが確保したよ。父さん』
『そっかご苦労様シータ。確保した連中は別室を用意させてクリス達に尋問させるから後で連れて来て』
『『ラジャー♪』』
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宴も終わり会議の時間だ。
「さて、花街の顔役達も楽しんで貰えて何よりだ。顔役達を集めた理由と今後の事についてブラームに説明して貰う。ブラーム議事の進行を頼む」
「承知しました。セイ様」ブラームは盗賊達の中に性病を患った者が見付かりその大元の感染源がこの花街であること。そして、領主自らがお忍びで視察され鑑定によりかなりの者が梅、淋しい病に感染している実態を把握した事を告げた。
「お前達に花街を任せていたらこのざまです。はっきり言って此のまま放置する訳にもいきません。花街だけの問題ではなくアロン全体の問題となっています。因って行政として介入する事にしました。これは決定事項です。拒否は許しません」
「行政介入だと!ふざけるな!」
「話は最後まで聴くように!何故、此の場に花街の代表格であるお前達を呼んで会合を開いたのかその意図が解りませんか?行政介入は決定事項です。お前達に此の花街を任せていたが為に感染症の巣窟となってしまいこと花街だけの問題ではなくなったのは先程述べた通りで花街全体で責任を取って貰います」
「ブラーム様。責任とは?」
「花街全体の感染症の根絶と今後の感染症に対しての対策ですね。それについて話し合いたいのですよ」
ブラームは感染症対策の方針と今後について方策を顔役達に説明した。
「「ふざけるな!なんで俺達がそんな事をしなくちゃならない!」」
「はっきり言って我々としても面倒なんですよ。余計な仕事が増えるし花街だけの事で納まるのなら行政介入等せずにお前達だけを処罰すれば解決なんですよ。それをしないのは何故かそして何故此のような会合を持ったかその意味を考えて欲しいものですね」
「ブラーム様。こう言っちゃなんですが私共にも中央への太いパイプがございますそれを使って貴方様を交代させる事も可能なんですよ」
「ほーっ、嚇しですか?止めた方が良いですよ。このアロンはもう中央の権力は届かないと思って下さい。皇帝陛下より軍権以外の全権委任を受けた領主のセイ様が居られるのですから喩えお前達が中央の宰相殿と繋がりがあったとしてもこの件に関しては領主であるセイ様による決定事項なので覆る事はないでしょう」
「軍権?以外の全権委任?」
「帝国軍を動かす以外の全権委任です。因みに治安維持の為の警備、外敵から守る為の防衛の為の軍備はもう既にアロンの街に編入されて帝国軍ではなく彼らはセイ様の独自の軍となっており帝国軍はセイ様の要請が無い限り治安出動は出来ない事になってます。この意味お解りかな?」
「アロンは中央の手が届かない所になったと言う事でしょうか?」
「情報を録に集めて居ないようですね。先の王国との戦争で多大なる武勲を上げられ内戦でも活躍されその報奨として皇帝陛下よりこのアロンをセイ様は賜ったのです。当然、代官の任命権はセイ様にあり中央の人間がどうこう出来るものではありません。残念でしたね」
「俺からも一言。はっきり言って強制的にこの花街を閉鎖して顔役達を捕らえ感染症を流行らし放置した罪で財産没収してその財源で一から花街を造り直した方がこっちは楽なんだ。だがなこの金封楼のように全うに商っている店もある十羽一欠片にするのもちょっとおかしいと思ったからこっちから出向いて表向きは自主的に花街が感染症対策に乗り出したって事にすればお前らを罰せずに済むんだがなぁ。で、どうする?」
「一つお聴きしたい事がございます」
「なんだい?女将」
「私共の選択肢の事は解りましたが御領主様の意図が読めませんそれとメリットは?」
「俺としてはどっちでも良いんだ。敢えて言うならお互いが納得して遺恨を最小限に抑える事かな?この案件花街に取ってメリットも有るんだぜ。病気を気にせず安心して遊べるって客の安心感を買えるんだ。それと遊女達にも安心感を与える事になるぜ。
今のままじゃ感染症のせいで短期間の使い捨てになって元が取れるのかな?「あっ!」それと、まあ此方の都合メリットだがな軍や冒険者達の事とまあ商人達も含むかなぁ。軍は特に一部を除き男所帯だ当然、性欲処理に此の花街を利用している訳だが感染症が蔓延している場所に兵士を送り込めないだろ。
当然、此の花街の出入りは禁止される。短期間なら我慢もできるだろうが我慢出来なくなる者も必ず出る筈だ兵士による婦女暴行が横行し始めたら領主としては目も当てられない。
それと感染症ってな結構微妙な問題でも有るんだぜ。警察隊には伝えてあるが妻帯者や婚約者が居るものに取ってシビアな問題が起こる特に性病は粘膜感染と言って大体場合は性行為に因って感染する例外も有るが夫や婚約者に因って感染したらどうなるのかな?」
「それで、警備隊員のお客さんが来なくなったのか・・・」
「確かに問題ですね。信じて人に裏切られた気持ちになるでしょうね」
「と言う事だ。兵士や警察隊の隊員には常に万全の態勢で持って職務に励ん貰いたい。それが引いてはこの街の住民の為になるしそれが住民の安全を守る領主の務めでもある。俺のメリットは其ぐらいだ。感染症対策の部分では花街の事位自分達で責任を取れ。俺達は街全体の住民を診なきゃならないんだ。花街全体で金ぐらい出せ」
「しかし、特効薬は品切れの上高価でして・・・」
「そのへんの実務はブラームと相談しろ。俺としては先程提示した用件をお前達が呑むかそれとも拒否するのかそれだけだ。拒否するならお前達に責任を取ってもらい花街を潰して更地にして移転するだけの話だ。好きに選んでくれそれともう一つ選択肢があったな教会に願い出てこの街全体の感染症の対策に乗り出して貰うってのも有りだ。寄付が幾ら掛かるか知らないがその場合でも診療所と認可、遊女達の定期検診だけは譲らないがな。ブラームこの案件後は任せる。必ずこの場で答えを出せ。此処に来ていない顔役達には警察隊と共に決まった事を伝えて拒否または抵抗するようなら感染症放置の罪で財産没収の上投獄しろ。
それと此処に来ていない顔役の中にどうも暗殺者を放った奴がいるようだ。長官、容疑者は確保してあるから隊員を寄越して詰所で尋問してくれ。隷属の首輪の使用を許可するターゲットが俺とは限らないからその点も留意するように。「「承知しました」」明日報告してくれ。では後は頼んだ」




