259 酒の肴
セイは鮎の塩焼きを料理長に渡し試食してもらい。焼き上がった鮎を平皿に盛り付け他の料理人達にも食べて貰った。
「どうかな?エールやポン酒に合うと思うんだが」
「凄いな。確かに酒に合う。エールが進む味だ。好みによるがこのほろ苦さも良い。何より鰭にまぶした塩によって鰭が焼け焦げず形を残しているのも凄い。盛り付けも魚が游いでいるように見せるこんな料理は見たことが無い」
「まあ、野外で食うなら串に刺したまま化粧塩なんかせずに焼いて食べるが此処は料亭でもあるから少し上品にしてみた。見たところ膳もあるし少人数だからな。で、どうだ?」
「勿論、合格です。ご自由にこの厨房を御使い下さい」
「じゃ、そうさせて貰おうか。少し頼みたいんだが、俺一人だと仕込みもしていないから助手を貸してくれないかな?それと俺が作るのは後、2品。吸い物と、オードブル?を作るから後は宜しく」
「勿論です。お客様に料理を全部作って貰ったらこちらの立つ瀬がありませんから」
セイは鮎、フォレストボア、ブラックオークの肉と背油を取り出し背油を炒め油にしてフォレストボアの唐揚げとローストポークを作り、厨房にあった鰹ぶしを削り、昆布を水洗いして軽く湯を潜らせて一番出汁を取りフォレストボアのつみれを作り椀に入れ大根を短冊切りにして人参を梅の花びらの形にして椀に載せ醤油と塩で味を整えた一番出汁で吸い物を作り、鮎の塩焼きにして各皿に盛り付け醤油と大根おろしに檸檬を一緒に料理が冷めないうちに食べるようにとの伝言をして座敷に運ばせ土鍋で御飯を炊き炊きあがった御飯と余った一番出汁を収納した。
「お客様はもしや醤油、味噌等のカロンで仕入れた調味料の数々の使い方をご存知なのですか?」
「セイと呼んでくれ。俺の故郷で使われ慣れ親しんだ調味料なんでだいたいは知っているがそれがどうした?」
「セイ様がお作りになられた料理どれも素晴らしい料理でした。是非、ご教授頂けませんか?」
「俺が作れるのは簡単な家庭料理なんだが一品だけなら今から味噌を使った料理を作ろうか」
「ありがとうございます」
「見たところ、香草、茸、葉野菜、馬鈴薯等根菜もあるな。まずはソースを作るか。味噌に砂糖と酒と蜂蜜を混ぜた味醂擬きを入れてかき混ぜる。これでソースは出来上がり。大きな鉄板が有ればキングサーモン一匹を丸ごと焼いても良いけど今回はキングサーモンを捌いて切り身にする。
先ずは軽くフライパンに油を少量入れてスライスしたニンニクを炒め下ごしらえの済んだ根菜を入れて火が通るまで炒める。次にサーモンをフライパンで焼き適当なタイミングで葉野菜やピーマンやパプリカなんかを適当に入れて火を通し最後に先ほど味噌で作ったソースを絡めて軽く火を通せば出来上がり。それともう一品。
先ほどは一番出汁を取ったが、先ほど使った昆布を再度煮立てて出汁を取り、鰹節も入れる。雑味は有るが煮物や味噌汁等に使う分には問題無いから二番出汁にキングサーモンのアラを入れて酒を少々大根、人参を入れて煮込み最後に味噌を濾しながら味噌を溶かして味を整える」
味噌独特のなんとも言えない匂いが立ち込める。『この匂い落ち着くなぁ』
「チャンチャン焼きと三平汁の出来上がりだ。三平汁は賄いで食べてくれ。本当は豆腐が欲しいがなにぶん時間と材料が無くて今回は見送ったけどまあ今後、カロンに行けば色んな食材が手に入りそうで楽しみだ。
味噌、醤油、ポン酒は使い勝手の良い調味料だから色んな食材と組み合わせてアレンジすれば良いんじゃないかな?」
「セイ様、勉強になりました。ありがとうございました。精進させて頂きます」
「チャンチャン焼きにしても三平汁にしてもあまり洗練された料理とは言えないけど食材を変えてアレンジすれば座敷で出す料理になるよ。じゃ俺は座敷に戻って客として楽しませてもらう事にするよ。後始末頼めるかな?使った食材で余ったら厨房の賄いとして使ってくれ」「「「へい♪」」」
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セイは離れの座敷に戻ると玉藻達は練習を中断して食事に没頭していた。
『遅い夕食になったもんなぁ。さて、俺も食べるか。久し振りの醤油♪』
慣れ親しんだ醤油の味にセイは無自覚に涙を流していた。
『やっぱ俺、日本人だ。生まれ育った味覚は否定できないや本能が訴えてくるもんな』
「主様の料理は大変美味しゅうございます♪」
「そうか、口に合って何よりだ。そんなにガッツかなくてもまだメインの肉料理が来るぞ。アミカ」
「あい♪」両手にフォレストボアの唐揚げを持ちリスのように頬を膨らまし微笑むアミカをセイは微笑ながら眺め玉藻達を見ると。「それはあちきの!」ミリアと唐揚げの取り合いして壮絶なバトルを繰り広げていた。
「おい、騒々しい。やめろ!行儀良く食べろ。座敷が壊れる。華陽を見習え」
「「申し訳ありません」」
「メインの肉料理が来て足りなければ作るか注文すれば良いんだから大人しく食え」
『全く、頼むから故郷の味の感傷浸らせてくれ』
喧騒も収まりった頃、キングサーモンのムニエル(ソースはホワイトソース)メインのワイバーンのステーキが運ばれて来てステーキは醤油と大根おろしの和風ソースで美味しく頂いた。〆は土鍋で炊いた御飯に一番出汁をかけてキングサーモンの切り身をほぐした出汁茶漬け。
「「「「「ごちそうさまでした♪」」」」」
「ふーっ、腹も落ち着いたから適当に酒を持って来てくれ。俺はポン酒を。取り敢えずは冷やで」
「はーい♪」各々好みの酒を注文して人心地着いた頃、囃子方が到着。『ん?』やけに人数が多い何故?『あれ?大工道具もあるけど?』
「お客様、少々騒がしくなって申し訳ありません。突然の依頼だったので準備が出来ていないもので突貫で作りますからお許し下さいませ」って言われたけどこれってなんだ?
「なに二時間もあれば完成します」ってなに?
「ちょっと待て。今からなにをするんだ?理解が追い付かないんだが・・・」
「なにをって即席の舞台を作るんでさぁ。お客さんが踊りと囃子方を呼んだんだろ?ステージを作らないと踊れないからな。いつもだったら前もって準備するんだけど突然の依頼だったんで準備出来なかったんでさぁ」
「舞台って?俺の理解を越えているが庭に野外ステージを作るってことで良いのか?」
「なに言ってんだ?踊りと言えば舞台が必要だろ。演目は歌劇に剣舞だからな」
「それが此処での常識なら俺が舞台を作る。二時間も待ってられないからな。簡易なもので良いなら10分もかからない」
「へっ?お客さん。いくらなんでもそりゃ無理だ」
「まあ、見てろ土台だけなら簡単に作れるから高さは1・5mで構わないな?」
「ああ問題無い」
セイは外壁部分での堀で収納した土砂の一部を取り出し庭に高さ2m長さ15m幅10mの舞台と両側に舞台に上がる階段を作りだしついでに離れの座敷に続く花道も作った。
「野外ステージならこれで良いと思うがどうだ?」
「へっ!十分でさぁ。ところで座敷に続いているこれは?」
「俺が故郷じゃ花道って呼んでいる。舞台演劇の道具の一つで役者の登場や捌ける時に使ったり演目によって色々使い方が違うが今日は俺の連れも踊ると言っていたから舞台への移動に良いだろうと思って作ってみたんだ」




