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第二話 死を乗り超える力

いろいろと詰め込もうとしましたが、うまくいきませんね。

そのせいでストックが4話まで溜まってます。

「っと…こんな感じかな」


素材と必要量を小さい巻物に書き込み、道具を準備しオレは父さんに声をかけた。

「それじゃ、行ってくるよ!」


うちは村の鍛冶工房兼よろず屋だ。

父さんが作った金物や道具を売ったり

冒険者さんからの依頼で武器や防具の修理もやっている。

母さんが医療品担当。

薬や包帯も売ってて、さらに村医者も一緒にやってる。

オレは2人の仕事を教わりながら手伝ってる。

今日の店番は父さんで、昼間は作業が出来ない。

そのためにオレが素材を採りに鉱山に向かう。


「おう!気をつけてな。灯りをしっかりと持ってけよ。暗い坑道じゃ、明るさが命取りだからな」


ランプだけでなく、予備のオイルと火打石まで渡された。

少々重くなるけど、なくて困るよりはいい。


「ありがと、お土産期待しててよ!」


鉱山は村に繋がっている山道を進んでしばらくするとある。

坑道入口に引かれたトロッコの線路沿いに宿や酒場が何軒かあり、今日も鉱夫や行商人たちで賑わっている。


「よぅ!クロ坊、この前は助かったぜ!」

声が大きいドワーフの男の人が声をかけてきた。


彼は同じ村に住む鉱夫のディッグさんだ。

以前トロッコを引っ張るウィンチが壊れた時に、倉庫にあった予備部品で治した。

もちろん確認は父さんのお済み付きだから大丈夫。


「どうってことないよ、ディッグさん。これから堀りに行くんだけど、良さそうなところないかな?」

「そんなら5番坑道だなぁ、1週間前に発破して昨日ちょうど補強が終わったとこだな。

明かりはまだ置いてねぇから、ちょいと危険かもしれん。だが、ほとんど手つかずだ」


「ありがと、ディッグさん。それじゃ、あんまり長引かないように気を付けるよ」

「おう、あと坑道の中でゴーストを見かけたって奴がいたからな。やばいと思ったらすぐ出てこいよ!」


ゴーストとは、ネザーゴーストの事で、魔物や人に取り憑き・乗っ取る化け物の事だ。

地面に紫に光る裂け目を作り、砕くように現れて落盤や崩落を起こすからここではかなり警戒してる。

いったいどんなものかは分かっていない謎の多いヤツらだ。

出くわさないことを祈ろう...


運搬用トロッコの線路沿いにある階段通路を、ゆっくりと降りていく。

通路に繋がる横穴からはそれぞれ人の声が聞こえてくる。

最下層近くになると「5番坑道」の看板が見えてきた。

ここまで来るとあまり人は居ないようだ、横穴はオレの足音だけが響いてるくらいに静かだ。


「グルグルグル…」


あっ、グローゲルルンだ。

鍋に入れる程の大きさの緑色に光るブヨブヨした塊が触覚のような大きな目を持つ虫系の魔物だ。

体に直接6本の爪があり、地面にひっかけて這いずるように動いている。


「おいでー!手伝っておくれよ」

「グルッ!グルグル!」


木の実を干したものをあげると嬉しそうに頬張り、肩に飛び乗った。

懐くと案外かわいいな、コイツを光源にもっと奥に進もう。

道しるべに松明を壁に取り付けながら道を進んでいくと、目当ての物を見つけた。


うっすらと水色に光る石を見つけた、これは...宝石の原石だな。

ピッケルで回りの岩壁を崩して行く。

よし!上手く傷をつけずに掘り出せた!

次は鉄と銅を取りに行こうかな。


ん?崩した岩壁に妙に光が反射する「壁」のようなものを見つけた。

他の岩壁とは違うなぁ、人工物かな?



壁に繋がる所を掘っていくと、大きな壁が出てきた。

なんだこれ?建物みたい。

一部だけ穴が開いていて中に入れそう。伏せてやっと入れるぐらいの狭さだ。

入ると、中には空間が広がっていた。

紫色に光るヒビが天井にあるのはちょっと怖いな、今にも崩れそうだ。

真ん中に四角い柱が立っている。真ん中が格子のような形になっていて強度が少し心配そう。

柱には石板がはめ込まれているが、どこの国のどの時代の字なのかはまったく見当がつかない。


不思議な柱と石板に頭を悩ませていると...


ケケケケケ....


囁くように何者かの声が響いた。


「グルッ!グル!」


ゲルルンが怯えだした、なんだか嫌な予感がする。

洞窟の中じゃコイツのほうが感覚が優れてる、でもって怯えてるってことはまさか...


ゴゴゴゴゴゴ!!


洞窟の中が大きく揺れてる!

まさか地鳴り!?

揺れに耐えきれず腰を抜かす。

だけじゃなかった...

天井のヒビを食い破るように、紫色に光る化け物が這い出した!


「シャアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!」


これがネザーゴースト...!始めて見た...

薄紫のゆらゆらした煙のような身体を所々覆うように赤黒い殻を纏っている。

大きな一つ目でこちらを睨みつけ、鋭い歯で噛みつこうとしてる!

ゲルルンだけでも逃がそうと、つかんだ瞬間


「グルッ!グルルッ!」


カッ!と目の前が真っ白になった!

身の危険を感じたのか、ゲルルンが強い光を出した!


「キュオオオオオオオオオオオオオオオーーーーー!!」


強い光に怯んだゴーストは壁を破って坑道に逃げていった、助かったぁ...


「ありがとう...助かったよ!これは後でお礼しないとな」


光源どころか命の恩人にもなるなんて、思いもしなかったよ。

と思ったのも束の間だった。

さっきゴーストが這い出た天井が崩れ、折れた柱の半分がこっちに倒れてきた!


マズい!潰されるッ!


「目覚めたな、我が器よ」


へ?


倒れてくる柱が止まった?

時間...じゃなさそうだ、砂埃が舞って欠片がボロボロと落ちて来てる。

何かに引っかかった訳でもない?

となると、柱だけが止まってる!


「汝に与えし力は芽吹いた!死の記憶を呼び覚まし、乗り越えるのだ」

「乗り越える?死の記憶?どういうこと?というか誰!?」


突然目の前が真っ白になり、見たこともないはずの景色が頭の中に映り込んだ。

鉄の板を組み合わせたような機械が揺れて、上に載っていた車輪がついた大きなものが落ちてきて潰される。

今まさにオレに起こっている状況と似てる...


これが、死の記憶...

誰の記憶だろう?

痛くて、苦しくて...

悲しかったに違いない。


他人事には思えない感覚がして、こんな最後を迎えてしまった誰かの無念のために...

そして今、オレ自身が生き延びるために...


死を、乗り越える!


「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


叫んで腕に力を籠める。

ビキビキと浮いた柱にヒビが入り、バーンッ!と音を立てて柱が粉々に吹き飛んだ!

助かった、でも安心してる場合じゃない。

早くみんなにゴーストが出たことを知らせないと!

柱から外れた石板をカバンに入れ、ゲルルンを抱き抱えて走る。

洞窟から出て坑道に入ると、さっきのゴーストが居た!


「シュアアアアアアアーーーーー!!!」

「やぁ、さっきはどうも...」


ゲルルンの光で相当怒ったみたいだ。

ゴーストを放ってはおけない、このままだと鉱夫や土木大工達が危ない。

さっきはいきなりだったから何もできなかったけど、今は違う!


柱を砕いたみたいに、コイツにも効くかな?

唸るゴーストに掌を向ける、意識を集中して...

掴んだ、よし!


「キュオオオ!」


掴んだのはいいけど、ものすごく暴れるぞコイツ...

柱の時みたいに握り潰せない、抑え込むので手一杯...

急に力が抜ける、振り払われたみたいだ。

オレ一人じゃどうにもならない。

でも方法はある、その為にこいつは地上におびき出す。

坑道から出たら近くの倉庫に対魔物用武器が置いてある、酒場にいる冒険者さん達に力を借りないと。


「ほら!こっちだよ!」


階段通路の方向に逃げる、うわっ!さっきの地鳴りで小石が通路に散らばってる、走りにくい!


「おわっ!」


小石を踏んで転んで...ない!浮いてる!?

転んだと思ったらそのまま宙に浮いたまま飛んでいた。

なんだよこれ...でも驚いてる場合じゃない!

そのまま通路の中を飛んで行き、階段通路に付いた!

壁には入り口と繋がる通話管がある、先にこのことを上に伝えなくちゃ!

フワフワと浮きながら近づく。

通話管のフタを開けて大きく叫んだ。


「こちら5番坑道!ゴーストが出たぞ!」


後は上からの返答を待つだけ、だと思ったけど...


「シャアアアアアアアーーー!!!」


追いつかれた!


「わぁっと!!」


とっさに壁を蹴って避けた!

さっきまでオレが立っていた所からギィン!と金属がひしゃげる音がした。

なんてこった、通話管を噛み潰された!

しゃーない、このまま連れていくしかない!

ゴーストはぐしゃぐしゃになった通話管を吐き出すと、こっちに飛びかかってきた!

そのまま通路に向けて飛び続けた。


普通に上ってたら間に合わなかったな...

なぜ急に風魔法が使えるようになったのか、考える余裕すらなかった。

思ったよりもゴーストが速い、追いつかれそうだ。


レールの途中にトロッコが停めてあった。

よし!足止めに使おう、でもって壊れたら後で治す!


さっき掴んだ時と同じように、手を伸ばす。

さらにその先に、見えない手を意識して力を込める。

トロッコが浮いた、掴んだ!

そのまま自分の速度を下げずに、引っ張る!


「そぉりゃっ!」


ガィン!とウィンチが外れる音がしてトロッコが吹っ飛ぶ。

ガシャーン!とゴーストに勢い良くぶつかった!


「ギュアアアアアアアーーーーー!!!」


だいぶ遅くなったな、これで準備する時間が出来そうだ。

こうして謎の力とやらのお陰でオレは死を乗り越えた。

あの時見た記憶の謎は、奴を倒してから考える事にしよう。

お読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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