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四輪駆動のエンプレス  作者: ODN
第2章:ライバルの名は「京商」
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第9話:MS対決、女心

 こういちが持ってきた、なつこのマシン。

 オレンジ色のシャーシにピンクのボディが女の子らしい。

 丸いキャノピーに尖った2本耳がトレードマーク、サンダーショットだ。

 通称「山椒」というらしい。少しかっこ悪い。


「このサンダーショットMK2、おまえと同じMSシャーシなんだが……見てみろ」

「すごくかわいい!うさぎみたい……うわ、めちゃくちゃ軽い?」


 持ち上げてみるとみかどの超帝より3割くらい軽く感じる。


「別に速さのために重量を削ったわけじゃないわ!マスダンパーのような重りが嫌いなのよね。あとブレーキもつけてないの」

「ブレーキが重要なコースなのに、これで走れるんですか?」

「ふふ、これを見て」


 そういうとマシンを持ち上げてテーブルに放り投げる。


 がしゃ!


「なにこれ、ビタって止まった……」


 マシンはテーブルにぴたりと着地した。

 その様子はまるでタイヤがテーブルに吸い付いたかのようで、気持ち悪いくらいに跳ねない。

 物理法則を無視したような挙動をしている。


「これは……減衰ゴム入りのなんちゃらでありますな」

「なにっ?!知っているのか木暮!?」

「うーん、MSシャーシの3分割されたシャーシの隙間にバネを仕込んで柔らかくする改造をフレキシブルなんちゃらって言うのでありますが。あ、なんちゃらまでが正式名称ですな。通称フレキ。この仕組みはジャンプからコースへの回帰性、復帰率を上げるものなんだけど。バネの部分にショックアブソーバー代わりのゴムを仕込むことでサスペンション化し、制振性、つまり着地性能も高めているのでありましょう」

(民明書房刊「フレキシブルなんちゃらってなにさ」より)


 わかりやすく言えば、ジャンプしてもコースにきちんと戻ってくるための仕組みだといえる。

 それに追加で制振性までサポートできる、先ほどの放り投げでの着地でもわかる通りに。

 触らせてもらうとシャーシのフロント、リアの接続部分でぐねぐねとねじれる。

 そしてゆっくり元に戻ろうとする。


「これすごい……あたしのと同じシャーシなのに別物だ……生きてるみたい」

「ふふふ、この仕組みとコースにあったモーター、ギアを装備しているからブレーキなんていらないのよ♪」

「すごいです!一緒に走らさせてください!!」

「じゃぁ決まりね、こういち、コースの準備を」


 コースレイアウトは、

 ・スタートし直線2枚からドラゴンバック 

 ・ストレート1枚着地ですぐコーナー

 ・テーブルトップ登ってストレート1枚でコーナー

 ・降ってストレート0.5枚でコーナー

 ・20度>40度の複合バンク

 ・レーンチェンジからストレート0.5枚で最終コーナー

 ドラゴンバックはスロープの上りと下りが直接繋がった、アーチ状のセクションである。

 ジャンプした時の落差が大きいのが特徴だ。ドラゴンバックのあとにすぐコーナーが配置されているため、ジャンプを短くしないとそのままコースアウトしてしまう。

 テーブルトップは上りと平らなストレート部分、下りを繋げて台形状になっているセクション。

 ここもジャンプを誘ってくるあたりがいやらしい。

 バンクとは坂道状のコーナーのこと。

 ブレーキセッティングを間違えると減速が激しくなるので注意が必要だ。

 レーンチェンジはレーン交代だけでなく、コーナーとジャンプの複合ユニットとなっている。 

 要するに、坂道とコーナーが複雑に絡まりあったコースとなっている。


「さぁはじめましょう!こういち、スターターお願い」

「わかりました」


 電子式のシグナルに赤い照明が点灯する。


(すごい、こんなものまで……ホンモノのレースみたい……)


 みかどはおもわず息を飲む。


「シグナルに注目!」


 一瞬の間を置いて……シグナルグリーン!!ほぼ同時のスタート。

 ストレートの加速感は断然、みかどの超帝が速い。


「がんばれー!!」

「とんでもない加速するじゃない!並のマシンじゃないわね」

「おぅ、いきなりぶっ飛んだ当たりモーター引いてるんだよ、こいつ」

「へぇ……でもこのコースには合わないわ」


 超帝は1つ目のドラゴンバックをハードなブレーキングでギリギリ1枚分のストレート区間に収める。

 一方、ノーブレーキですぃすぃと快適に抜けていく山椒MK2。

 モーターはライトダッシュだが、ブレーキの有無でここまでの差が出るのか、と思えるほどの速さである。

 ドラゴンバックのブレーキングで減速した超帝に食らいつく。


「ドラゴンバック1個で追いつかれた!?」

「コースに合わせたセッティングってわけ。ホームコース所持者をバカにしないでよね!」


 そして、テーブルトップを登ったあたりであっさりパスされる。


「速度はそんなに速くないのに……バランスよくどこでも減速されず走ってるんだ……すごい。ミニ四駆って、ただ速いだけじゃダメなんだ……」

「そう。速いモーターはもちろん武器だけど、切れすぎる刃は己をも傷つける可能性があるの」


 テーブルトップ降り後のコーナーが曲がれず、超帝がコースアウト。


「あぁ……コースアウトしちゃった……」


 その後も安定した走りできっちり周回した山椒MK2の勝利。


「まぁ、ざっとこんなものね。重量の軽さ、走りの軽快さ、そして安定性が物を言う、わかったかしら?」

「すごいです、完敗です。勉強になりました」

「ふふふ、同じMSシャーシ使い同士、これからも仲良くしましょうね」

「はい!また胸貸してください!!」

「で、胸はどこに置いてきたんだ?」


 また全員の目がなつこの胸元に集まる。


「きーーーーーー!お、い、て、き、て、など、いなーーーーい!!」


 火野のペチャパイいじりは二人の鉄板ネタのようだ。

ーーーーーーーーーー

解説:

・フレキシブルなんちゃら

本文で説明した通り、現在のトレンドの1つ。

ジャンプの降りでバンパーがレーンに引っかかっても、ぐにゃっとシャーシが曲がって素早くレーンに戻ることができる。

レーン接触で弾かれないので安定した着地が可能。

他にもメリットが多々あり、使用者も多い。


・テーブルトップ

通称TT。

ジャンプ台と平面、そして降りが組み合わさった障害。

組み方にもよるが、攻略が難しい。


山椒(さんしょ)

サンダーショットの略称。

うなぎ食べたくなりますw

ーーーーーーーーーー


勝負に負けたが得るものは多かったか?

次回第10話「男の戦い、これがレースだ」よろしくお願いいたします。


※カクヨムにも同じものを投稿しています。

※アルファポリスには外部リンクとして登録しています。

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