悲しみの過去とほんの少しの可能性と
森を抜けたころには日は沈み切っていた。
「それで、こんなとこで野宿か….」
「仕方ないでしょ?このままいって追剥に会ってもいいの?w」
笑いながら言っているが、おそらく本当のことなのだろう。だがここで一つの疑問が彼に襲い掛かる。
「そういや、なんで俺なんかをこんなところにこさせたんだ?」
「そんなの決まってるじゃない。あなたが好き….だか……プフッ」
「ちょっと龍平ww真っ赤よwwww」
ミカエラが言う通り龍平の耳や顔はやけどでもしたかのように真っ赤になっていたのだった。
「本音を言うとね、誰でもよかったの。ただ、違和感なくこの世界に適応していける人が私世代でなかなかいなくて。いわゆる中二病の高校生なんてほとんどいないってことw」
「なるほど、特に意味はないと」
あきれ返った様子の龍平は、その場に横になって眠りにつこうとしていた。
「そうともいう」
そしてミカエラも小さな声でつぶやいた後、すぐ隣に横になった
「ほーれ龍平君。こっちおーいで」
「うっせー!」
そして、ミカエラのお腹が鳴った
「そういや飯食ってなかったな、なんか作ろうか?」
そういった瞬間ミカエラの目が輝いた。だが
「あ、すまん。食材何も持ってきてないや」
目を見開き固まったミカエラは目から汗が流れてきていた。きっと疲れたんだろう。運送だ。そうにちがいな….
「あんたが食材持ってきてないから悲しんでるのよ….あーあ、おーなーかーすーいーたーなーーー」チラッ
「何か龍平の昔の話でも聞けたらおなかいっぱいになるかもなぁ…」チラッ
「うぐっ、こいつ….」
「あーあ、龍平のせいでお腹ペコペコだなぁ….」チラッ
「あーもうわかったよ!なんでもきけよ!なんだって答えてやるさ….はぁ…わすれるんじゃなかった」
「男に二言はないわよね?」
ニヤニヤしながらミカエラが見てくる。いやな予感しかしない
「それじゃあまず聞くけど、龍平本当に一人っ子?」
ごはんのことでとがめられるのかと思ったら、まったく別のことが来たことで、少し変な間が開いてしまった
「………そうだけど……」
「昔居たの?」
「……..」黙り込んでしまったが、黙り込むのはあまりよくないということを思い出した龍平はあえて質問を質問で返してみる。だが、龍平はそんな質問をされる覚えもなかったから聞いたもののミカエラの答えは
「なんでそう思うんだ?」
「龍平さ、この間私が一緒に寝たとき…ってわかんないか…第一あれは寝たっていうのかな…..まぁいっか」
「いやよくねーよ!何時だよそれ!」
「忘れなさい…..それよりも、その時にあんた私がうなされてたから手を握ったら【おねーちゃん】って言ってたから、龍平もしかして昔、おねーちゃんいたの?」
「くそが….いねーよそんな..やつ…あ、そうだ今からでもどこか店あいてな…」
龍平が話題をそらそうとして瞬間ミカエラが話を無理やり戻す。
「今日こそははっきりさせてもらうよ….それでいたの?いなかったの?」
「……..」
「今回は言ってもらうよ?」
「チッ」
龍平も今回ばかりはあきらめたのか、ためらいながら口を開いた
「姉がいたよ。それがどうかしたのか?」
ミカエラがさっきまでのきつい口調から一変して、優しい声色で話し始める
「いや、別に無理やりあんたの過去をさかのぼってみてくるってのもできるんだけど、それは何か流石に私でも駄目だと思って、ちゃんと本人の口からききたくて。何があったの?」
「言わなきゃダメか?」
「言ってもらわないと。龍平と私は付き合ってる?っていうか、結婚してもらうために来てもらったっていうの覚えてる?そんな相手に隠し事されてたら、さすがの私でも裏でなんて思われてるか、とか。結構気にしてるんだから。とりあえず教えてほしいの。何があったの?」
そして、しぶしぶ龍平は自分の過去を語り始めた。
「俺には3年前まで姉がいたんだよ」
「それで?なんで過去形なの?」
「親が離婚したんだよ。それで、まだ高校終わってないからお金もかかるし、父方につくことになって、ねーちゃんは母親についてく事になってた….」
「ちょっと待って。なってたって龍平たちの意志は?」
「そんなの叶うわけないよ、二人で一緒にいたいって言ったって、もう決まったことだからって。それ以来あってない」
「何それ」
「それが現実なんだよ….」
「でもなんで龍平の姉さんは母親のほうについていくことになったの?」
「女には女と一緒にいたほうがいいし、龍平より年上でもうお金はあんまりかからないからいいだろうって、そしたらねーちゃんが、私が龍平より年下だったら一緒に入れたのにね。って……..それ以来、年下しか好きになれなくて。それでもうここまで言ったら一緒だし。ほかに聞きたいこととかないのか?」
「もしかして龍平ってシスコンだった?」
「ブフッ..」
あまりにもストレートすぎて、思わず笑ってしまった。
「案外そうかもな。ねーちゃんといつも一緒にいたし。親が離婚して以降何もやる気起きないし。好きだったのかもなw」
「もう克服してるの?笑って話してるけど…」
「してるわけないだろ…..たまにねーちゃんの顔がちらついたときには叫びたくなるw」
「じゃあなんで笑ってんのよwww」
「笑わねーとやっていけねーだろ?」
ミカエラはこの時に龍平の心の強さが少しわかった気がした。あれだけ泣いてても、一緒についてきてくれるのだから。
そして、ミカエラは一つ目標を思いついた。まだ、不確実な条件が一つあるのだが、「たぶんそれは大丈夫かな♪」と、頭の中で考えたつもりが口に出していたらしく龍平が不思議気に聞いてきた。
「何がだ?
そして聞こえていないと思っていたミカエラは
「え?なにが?」
「口に出てたぞ…汗」
そしてようやく自分が声に出していたのを気付いたミカエラは
「あー、あんたが姉に対してシスコンだったんなら、私にもまだ可能性あるのかなって」
けだるそうにミカエラから眼をそらし答えた龍平に「ふーん。まぁ、それはむかしのこ…と….!?」
ミカエラが突然耳に息を吹きかけた
「あれ?どうしたの?w」
「明日は俺の分しかご飯作らないでやろうか?」
「えっ、それだけはやめ….ん?wあれ?どうしたの?耳真っ赤だよwww」
「うっせ….」
「えー、なんで赤くなってるの?」
「なってねーし…ほら!早く寝るぞ!明日も早いんだろ!」
「はーいwww」
ミカエラは完全に龍平の反応を楽しんでいた。そして、同時にこれはいけるかもしれないと小さな決意をミカエラは固めるのだった。
そうして
「そんな意思を枕にしなくても…腕枕してあげようか?w今なら天使の羽のお布団付きだよー」ニヤニヤ
「石だと首いたいし、少しだけな…別に使わなくてもいいけどさ、使わせてくれるなら…使ってやろうではないか!ふははは」
そういってミカエラとは逆の方向を向ききっちり羽を布団代わりにして眠りについたのを確認して、ミカエラも眠りについたのだった
次の日は雨だった。しかし雨をしのぐために入る洞窟のような場所はどこにもない...見渡す限り、平らな道が続いていた...果たして彼らはどうするのか?