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ノイズが走る。
やがて明瞭になっていく音声。
「天使達の起動が確認された」
「君たちは今どこにいるだろうか。もうこの声も聞こえていないのか」
「まぁいい。はるか先の未来で、誰かがこれを聞いていると信じて、独り言をするよ」
「それにしても、いざ始まってみると案外あっけない。でも、これぐらいあっけない方が、やはり美しいと私は思う」
「あれだけのものが無駄になったという事実も相まって、清々しい気分だ」
「ところで君、私の煙草を盗んだだろう」
「あれは君が思っている以上に良い物だぞ。大切にしてくれ。正直最後に吸いたかった」
「代わりといってはなんだが、今日は爺さんの代から大事にされていた酒を開けることにしたよ」
「ふふっ、しかしこれがまた笑える話でな。こいつが絶妙に美味くない。いや、美味いんだが思っていたほどじゃないんだな」
「これも君が盗んでいったせいだとしておくよ」
「…………あぁ」
「なんだか、ずっと心が落ち着いているよ。安らかだ」
「……それにしても今日は暑いな」
「太陽も近い」
「だが、外は静かだ」
「……夢を見ているようだな」
「君は見てないだろうけど、こっちは天国と言うのに相応しい光景だ」
「……天使はやはり、美しくなければならないな……」
「…………なぁ。それでも、私は。本当に、君が正しいと思うよ」
「勿論君は後悔なんてしていないし、今更私が言って嘆くような人間ではないだろうがね」
「でも念を押したくはなる。良かったんだよ。それで。君は、君たちは、そうあるべきだ」
「ああそれにしても残念だ。こんな酒を君に振る舞えないなん――――」
ぶっ、とそこで音が途切れる。
……静寂。