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タナトフォビアの見る夢  作者: 彼岸堂
祈り
11/12

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 後悔は無い。

 そう言うと、嘘になる。

 アルシアを最後の最後で泣かせてしまったこと。

 そして、彼女にどうしても拭えない別れの傷を残してしまうこと。

 しかし、こうするしか無かったのも事実なのだ。


 私は大いなる自我を、矮小な自意識で上書きした。

 種を導く最後の因子となることで、彼女を救うことを選んだ。

 星の全てを巻き込む終わりではなく。

 静寂と安寧の訪れを構築した。

 私は、自分が世界の中枢に関わった意味を、『そうすることができる立場』として理解したのだ。


 個の起こしうる最大の理不尽。

 その果てに広がる人類のいない世界は、どこまでも美しく、そして、無垢であった。

 これからこの世界は、限りなく人に近く、そして、決定的に違う『彼女』達のものになる。



 世界を愛するのも、憎むのも。

 全て台無しにすることも。

 みな無垢なる理不尽の手の上にある。

 私はその美しい世界に残る最後の異物だ。

 本をとじるために、消えなくてはならないものだ。


 だから、躊躇いなく――――


 私は自らを終わらせる装置を起動した。

 その瞬間、アルシアとのこれまでの思い出が一気に脳内を駆け巡る。



――――健やかなるときも


――――病めるときも


――――喜びのときも


――――悲しみのときも




「ありがとう、先生」



 ありがとう、アルシア。




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