①
俺は昔から佐竹蒼が苦手だった。
いや、苦手と言うよりも嫌いと言った方がしっくりくる。そう簡単に人を嫌ったりはしないタイプだと、自分では思っていたが佐竹に関しては酷く心が狭かったように思う。
あいつと初めて出会ったのは、小学六年にあがった時だ。
パッとしないやつ。
それが佐竹蒼に対する俺の第一印象だった。
肩を少し越えた髪は手入れをしていないのかボサボサで、日に焼けた肌は浅黒く、ぽてっとした頬と奥二重で切れ長の細い目は野暮ったく見えた。
一見すると愚鈍でみすぼらしい彼女はいじめの標的になりそうだが、佐竹蒼という女は残念ながら愚鈍ではなかった。クラスでも決して目立つタイプではなかったが、喋ると話題が豊富で人を飽きさせず、また聞き上手でもあったので女子ウケはとても良かった。たぶん、話しやすくそれでいて引き立て役にもってこいな部分が打算的な女子に重宝されたのだろう。クラスで一番の可愛い子と親友だったのも相まって、株を上げたい男子達も彼女を軽くからかったりはすれど、悪意を向けることはなかった。
そしてそれは教師も同じだった。根っからの文系らしく、算数のテストなどを返す時は担任も顔をしかめたりしたが、作文は県のコンクールで入賞したりする程で、授業態度も生活態度も真面目な彼女を担任は信頼しきっていたし、二学期には満場一致で学級委員に任命されていた。
俺はそんな彼女が気に食わなかった。
さほど明るい訳でもない、外見に至っては褒めるのも難しいような女が易々と世渡りをしている。それはこのクラスの誰よりも狡猾なように思えたし、何よりあの切れ長の目から時おり覗く仄暗い光にゾッとした。いつの間にか俺の中で、佐竹蒼という女は小さい子どもが暗闇に怯えるような得体の知れないものになっていった。




