paragraph Ⅵ
「ねえ、どうしてそんなにいつも怯えてるの?」
そう聞いてきたのは、同じ教会で仕事を共にしているフィアという少女からだった。茶髪の髪の毛が頭巾から出ている。彼女は明るく気さくで、周りの人とも仲がいい。私とは比べ物にならないくらいに。
「お、怯えてますか?」
「うん。ほら、あたしと話すときも、少しどもってるし」
「ご、ごめんなさい……」
「謝らなくてもいいわよ?」
優しくそう言うが、私は彼女の機嫌を損ねてしまったのではないかと、内心冷や冷やしていた。彼女の言う通り、怯えている。
実際、彼女の方が私よりも一つ年上であった。要領がよく、誰とも接することができる。私はそんな彼女が羨ましかったのは事実であり、憧れでもあった。
私もそんな風になれたらなあ、と思う日は山ほどあった。
同時に、私のこんなに気味の悪い髪の毛じゃあ無理だ、と思う日も山ほどあった。
沈黙が流れるが、その流れを止めるのはいつも彼女の方だった。
「ねえ」
「あ、はいっ」
過剰に反応をした私に彼女は「ふふ」と笑った。
「あ、あの……何かおかしかったでしょうか?」
私が聞くと、
「ああ、ごめんね。反応が面白かったからさ……つい。意外と面白い子なんだなあ、って」
「は、はあ」
「ねえ、その……さ。あたしに敬語使わなくてもいいわよ?」
「で、でも……」
「でも、じゃない!」
「は、はい!」
「ほら、また敬語……。そんなんじゃあ、距離感じちゃうじゃない」
「きょ、きょり……?」
私が理解できずに聞くと、彼女は人差し指を私の目の前に差し出して、「そう!」と頷いた。そして、胸を張って言い切る。
「友達だと思ってるのに、敬語使われたら友達と思われてないのかなあ、って落ち込むじゃない」
「と、とも……だち」
その響きを聞いたのは初めてだった。誰かに友達と言われたことが初めてだった。いつも誰かに拒絶されるばかりで、突き放されるばかりだった。「化物」と蔑まれ、虐められ、嫌われてきた。だから、そんなことを言われたのは初めてで、最初聞き間違いではないか、と当惑した。
「そうじゃないの? あたしたち」
彼女は微笑んで私を見つめた。私は彼女の顔をじっと見てしまう。
「友達……わ、私と?」
「うん。駄目かな?」
申し訳なさそうに首を傾げる彼女に、私は思いっきり頭を振った。
「わ、私でいいんですか?」
「メイリスじゃなきゃ、あたしは嫌だね……って、何で泣くの!?」
「う、嬉しくて……ついっ」
泣いている私に驚いた表情を見せる彼女―――フィアと友達になった。友達だ、と宣言された初めての日だった。
そして、私の生涯における最初で最後の友人の誕生の日でもあった。




