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ZartTod  作者: えびてん丸
17/42

paragraph Ⅲ

「ねえ、お姉ちゃん」


 妹のイニスが絵本を持って、尋ねてきた。

 あどけない表情には、疑問の色が浮いている。

 私は、

「なに?」

と答える。

 きっと、絵本の事だろうな、と内心そう思いながらも、可愛い妹の頼みごとを無視できずにいた。

 イニスは、

「絵本のことなんだけどね」

「うん」

「さいごに、『すえながく、しあわせになりました』ってあるけど、すえながくって何?」

「え~と……、ずーと長いことだよ」

「ずっと?」

「そう、ずっと」

「そっか!」

嬉しそうに笑っている。

 こんな答えで良かったのだろうか。

 不安に思っていると、奥の部屋で笑いを堪える兄の姿が見えて、堪らなく恥ずかしくなった。

 さらに、

「じゃあ……」

イニスはそう、また質問をしてくる。


「しあわせ、ってなあに?」


 という、質問に一瞬困惑した。

 どう答えよう。

 しかし、答えないとイニスは悲しんでしまうのではないか? と思い、

「ん~、そうだね。私は、今幸せだよ」

「お姉ちゃん、今しあわせなの?」

「うん」

「どうして?」

「だって、お父さんもいて、兄さんもいて、イニスもルーヤもいて、みんな笑って、元気に暮らせているんだから、幸せじゃないわけないよ。勿論、生活は苦しいけど、みんなが笑ってくれるなら、私はそれだけでも幸せかな」

「そっか。イニスも、お姉ちゃんが笑っているとうれしいけど、これもしあわせ?」

「うん」

私は「大好き!」と抱きついてくるイニスを受け止めた。

 すると、奥の部屋にいたはずの兄が、

「兄さん、嫌われちゃったかな~」

と業とらしく、悲しそうな顔をした。

 イニスは、兄さんの方へ言って、「お兄ちゃんも、大好き!」と抱きついた。

「あはははっ、兄さんも、イニスの事大好きだぞ~」

 嬉しそうに兄さんは抱きしめ返した。

 すると、羨ましそうに、ルーヤがてとてと私の方へやってきて、

「ん……」

と両腕を開いて立っていた。

 ああ、彼もイニスのようにしてほしいんだ、と思い、

「いいよ」

と頷いた。

 ルーヤは抱きついてきて、

「お姉ちゃん、大好き」

と小さく呟いた。

 それを見ていたのか、兄さんがルーヤと私諸共抱きしめてきた。

 本当に幸せだなあ、と感じた一時だった。

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