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Element Eyes  作者: zephy1024
第三章 魔導人形編
30/327

030.膝枕-Pillow-

1991年5月27日(月)AM:1:12 中央区特殊能力研究所付属病院一階


 僕達は今、病院一階の長椅子に座っている。

 三井さんの傷も、そんなに深いわけではなかった。

 まあ、その前に負っていた傷が、いくつか開いてしまっていたらしいけど。


 その為、三井さんだけは由香さんに膝枕してもらって、長椅子に寝転がっている。

 ちょっとだけ羨ましいなんて思っちゃ駄目だよな。

 しかし由香さんがあんなに頑なに、膝枕を強要するとは思わなかった。

 元魏さんも近藤さんも驚いていたな。


 とりあえず聞いた話しを総合すると、三年前の事が発端らしい。

 薄羽黄なる奴が朝霧(アサギリ) 拓真(タクマ)さんに魔導人形の作製を依頼。

 しかし彼はこれを拒否した。


 拓真さんの返答に逆上した薄羽黄。

 彼の目の前で四人を瀕死にさせる。

 瀕死にさせられたのは、妹の朝霧(アサギリ) 紗那(サナ)さん。

 恋人の(ツツミ) 火伊那(カイナ)さん。

 友人カップルの友星(トモボシ) (アタル)さん、駒方(コマガタ) 星絵(ホシエ)さんの四人だ。

 四人とも心臓を半分抜き取られ、まもなく死に行く運命だった。


 方法はよくわからない。

 だけど、彼は二年かけて、四人を魔導人形として蘇生させた。

 拒否反応とか調整とか、馴染ませるとか、いろいろあるそうだ。

 なので、本来は複数人同時にやるべきじゃないらしい。

 どんな方法で、生命維持してたのかは良くわからなかった。


 それから二年後の一年前、魔導人形化を完了させたらしい。

 しかし、相当無茶な生活をしてたようだ。

 その時点で、彼は体力的にも精神的にも、ボロボロになっていた。


 どうやって嗅ぎ付けたのかは不明。

 だけど完成から数日後、薄羽黄が突然現れる。

 二年間の消耗のつけで、死にかけていた拓真さん。

 彼に抵抗する間もなく手を下された。


「もしかしたら薄羽黄は、僕がこうする事を予想してたのかもしれない」


 彼はそう自嘲気味に笑っていた。

 薄羽黄も彼が死んだと思って、確かめもせず放置していたのだろう。

 何故、薄羽黄が魔導人形を欲してたか理由はわからないそうだ。


 ここからは元魏さんが説明を続行してくれた。

 三井さん達とその現場に遭遇したらしい。

 由香さんにおとなしく聞いてなさいと厳命された三井さん。

 彼は一切説明に参加しないで聞いてるだけだ。

 由香さんの言葉に、三井さんはかなり萎れている。


 たまたま近くに来ていた古川所長と元魏さん、三井さん。

 微かな血の臭いに、元魏さんが気付いたらしい。

 どんだけ臭いに敏感なんだよ。


 血の臭いの元を辿っていく元魏さん。

 そこで血まみれの拓真さんを発見。

 即座にその場で、応急治療開始。

 本当に生命の危機だったらしい。


 三井さんは元魏さんのサポート。

 古川所長は朝霧邸の探索。

 その時点で、魔導人形となった四人は、運ばれた後だったそうだ。


「三井さんって医療の知識あるんだ?」


「ないな」


 断言されました。

 サポートというよりは、ほぼ雑用係と化してたそうだ。

 後は集中している元魏さんの、念の為の護衛。


 応急治療後、即座にここに搬送。

 一命は取り留めたものの、脊髄を損傷していた。

 また二年間の無茶がたたり、それから一年近く、昏々と眠り続けたそうだ。


 目覚めたのはほんの一週間前。

 元魏さんが事情を聞いたのは三日前。

 一年近く眠っていた影響だったのだろうな。

 事情をまともに把握出来たのは昨日だそうだ。


 古川所長もその間、情報収集はしてたそうだ。

 機密という事で、ほとんど情報を得られなかったみたいだけど。

 特殊技術隊第四師団とか言う所が、関わってるのかもな。


 魔道人形化した四人は、半年前に目覚める。

 そして薄羽黄なる人物に説明を受けたそうだ。

 その時点で仮面装着済み。


 四人は死んだが、拓真さんの手により、人間ベースの魔導人形として蘇生した事。

 その無茶な行いで、拓真さんは死に瀕していた。

 しかし死ぬ前に、何者かに殺された可能性。


 拓真さんから、その後の事を頼まれていると話したそうだ。

 更に拓真さんを殺した犯人を、捜している事。

 他にもいろいろ説明されたらしい。

 そして今までの事は、犯人捜しの一環として、協力しているつもりだった。


 紗那さんは、薄羽黄の声を何処かで聞いた事があるような気がしていた。

 だけど、中々思い出す言が出来ない。

 何処で聞いたか思い出したのは、ほんの一時間程前。


 久下(クゲ) 長眞(ナガマ)が遅いので、状況を確認しに向かった紗那さん。

 実は、そもそも何かがおかしい、とは思っていたそうだ。

 最悪、長眞を倒して失敗させる気だった。


 しかしその時に対峙した三井さんの一撃で、致命傷を負った。

 ダメージが酷く行動不能になってしまう。

 今も怖いらしく、三井さんが視線を向けたら怯えていた。


 あの時、吹雪さんに襲い掛かった人形を操作したのは、薄羽黄。

 霧を広範囲に作り出したのは、麦藁という名の女性らしい。

 他にも会った事のないメンバーがいるそうだ。


 残った三人で紗那さん、長眞、伊麻奈ちゃんを回収。

 紗那さんは意識を失ったままだった。

 いずれ死ぬんだと悟った三人は、仇討ちを決意。


 そして彼等が、三井さんを襲撃するに至った。

 意識を取り戻した紗那さんは、いなくなった三人を追いかけてここへ向かう。

 しかしそこで再び力尽きる。

 そこを僕が見つけたというわけだ。


 近藤さんは納得いかないながらも、怒りのボルテージは下がっているっぽい。

 ちなみに何度か襲ってきた人形は、朝霧式戦闘人形ドライというらしい。

 他の四人は、朝霧式魔導人形なんだってさ。

 戦闘人形は、戦闘能力は頭打ちになる。

 だけど、魔導人形は人形本体の能力と、術者の能力次第では何処までも伸びるらしい。


 そして何と拓真さんについては、情報が得られない為、こちらも生存は伝えてないらしい。

 そんな事して大丈夫なのでしょうか・・・。

 とりあえず解決・・・なのかな?


 四人の魔導人形の処遇については、とりあえず保留。

 拓真さんの病室に連行されていった。

 いろいろと積もる話もあるだろうしね。


 三人の仮面は、元魏さんが、話し合いを始める前にはずしていた。

 火伊那さんは、赤みの強い黒髪ショートヘアー。

 中さんは、黒髪を短く切り揃えている。

 星絵さんは、茶髪のミディアムロング。


 結果オーライだったんだろうか?

 とりあえず騒がしい夜も終了。

 何もしてないのに、なんか疲れた・・・・。


-----------------------------------------


1991年5月27日(月)AM:1:33 中央区特殊能力研究所五階


 事務処理をしていると、突然ドアが開いた。


「あれ、所長いつ帰ったんで?」


「近藤か。一時間位前かな?」


 こいつはいつもノックしないな。


「ああ、そうなんで」


「ノック位しろ」


「ああ、習慣にないから忘れてたわ」


「まったく」


 それにしても、近藤がこんな時間に来るなんて珍しいな。


「どうした?」


「ちょっと一騒動あったんでね。これ、報告書」


「ああ、わかった」


「つーか、所長、呑みにいったんじゃなかったっけ?」


「ああ、そうだ」


「はやくないか?」


「惠理香が明日も仕事だったからな」


「ふーん?」


 朝まで呑み明かすとでも思っていたのか?

 まぁ、惠理香も休みだったらしてたかもしれないけど。


「帰りに【ヤミビトノカゲロウ】に会ったけどな」


「えっ!? 【ヤミビトノカゲロウ】? まじか?」


「ああ」


 そんなに驚かなくてもいいだろうに。


「そんでどうなったんだ?」


「逃げられた」


「・・・・そう。詳しい事は書面で出すんだろ?」


「もちろん、そのつもりだ」


「んじゃ、詳しい事はそれ待つわ」


「そうしてくれ」


 そこで、近藤より手渡された報告書に私は目を通した。


「しかし・・報告書ざっと見たが、簡素すぎるだろ・・・・」


「とりあえずの報告だよ。後でというか、明日以降ちゃんと出すさ」


「わかった、ちゃんと出せよ」


「りょうかーい。んじゃ、戻るわ」


「ああ」


 しかし、魔導人形か。

 拓真の情報が開示不可の事といい、裏に何かあるな。

 【ヤミビトノカゲロウ】も関係あるのだろうか?

 さて、どうしたものか・・・。

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