表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Element Eyes  作者: zephy1024
第三章 魔導人形編
26/327

026.轟音-Boom-

1991年5月26日(日)PM:22:58 中央区特殊能力研究所付属病院一階


 エレベーターから降りた私。

 ロビーに向かうと、桐原君と元魏さんが見えた。

 誰かが長椅子に寝かされている。


 私の足音に気付いた桐原君が、こちらを向いた。

 元魏さんは、何か手帳のようなものを見ているみたい。

 近づくと、長椅子に寝かされているのは女の子だった。


「桐原君、何しているの? 三井君を探しに行ったのでは? それにその女の子は誰?」


 椅子の上には、黒髪ロングの可愛い女の子が寝かされている。

 愛菜ちゃんじゃないけど、誰なんだろう?


「由香さん、詳しい話しは後です」


「・・・・それじゃ、三井君がどっちいったかわかる?」


「たぶんですけど、北の方に飛んでいったみたいです」


「わかったわ。私は近藤さんと合流して行くね」


 その間も元魏さんは、口を一切挟まない。

 真剣に手帳のようなものを見ている。


「お願いします」


 元魏さんが突然、私の方を向いて口を開いた。


「状況はよくわからないが、三井君と彼等を私達が行くまで止めてくれ、頼む」


「わかりました」


 元魏さんのお願いの意味はわからないけど、私は三井君を助けたい。

 私は近藤さんと合流する為、その場を後にした。


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:09 中央区特殊能力研究所付属病院四階十号室


 元魏さんは、黒髪ロングの女の子を車椅子に乗せ、僕をこの部屋に案内してくれた。


「拓真さん、起きてますか?」


「はい、起きてます。どうしました? 元魏さ・・・」


 拓真と呼ばれた人は黒髪を肩まで伸ばしている。

 彼は、車椅子に乗っている女の子を、驚愕の瞳で見ていた。


「サナ・・・・」


「妹さんですね」


「はい。成功していたなんて・・・」


「彼女はしばらくすれば、目覚めると思います」


 彼は嬉しそうな申し訳なさそうな、そんな眼差しで彼女を見ている。


「他の三人も魔導人形として生存しているはずです」


 拓真さんに、僕はそう告げた。

 僕の考えが正しければ、今三井さんを追っているのはその三人。


「そして彼らは僕の仲間を、三井さんを殺そうと追いかけています」


「それは一体?」


「時間が余りありません。移動しながら説明します」


「・・しかし、僕は動く事が出来ません」


「どうゆう?」


「拓真さんは、足が動かないんだよ」


「桐原君、その手帳を持って先に行くんだ。私達もなるべく早く準備して向かう」


「それは・・・僕の手帳ですね」


「はい、そうです」


「桐原さんでいいのかな? 皆をよろしくお願いします」


「はい」


 僕は再び走り出した。


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:12 中央区特殊能力研究所付属病院四階十号室


 僕が見てるのは、車椅子の上のサナ。

 何度か瞬きを繰り返している。

 最後にゆっくり瞼をあげた。


「あ・・れ・・? サナ・・は・・たし・・か」


「サナ、おはよう」


「え? あれ? あなたは?? まさ・・か、た・・く・・に・・い?」


「うん、そうだよ」


「拓兄!!」


「サナさん、感動のご対面中申し訳ないんだが」


「彼は元魏さん、僕を死の底から救ってくれたお医者様だ」


「え? あ・・ありがとうございます。本当にありがとうございます」


「サナ、詳しい話しは後だ。カイナ、アタル、ホッシーも生きているんだね?」


「はい、拓兄」


「僕には状況はさっぱりわからないけど、カイナ達は三井さんを殺そうとしているんだよね? 僕はカイナ達を止めたい。でも今の僕の足は動かす事が出来ない。僕をカイナ達の元へ連れて行ってくれ」


「・・・拓兄、わかりました」


 サナは僕をお姫様がするように抱っこしてくれた。


「サナ、ありがとう」


 今の状況は、僕にも原因の一端はあるだろう。

 だからカイナ達を止めなければならない。


「私も行きましょう」


 僕はサナ、元魏さんと病室を後にした。


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:34 中央区円山原始林


 こんなにも体が重いのはいつ以来だろうか。

 暗がりにもだいぶ、目が慣れてきたとはいえども。

 足元もまともに見えやしない。


 遠くの木々の間に、動いてる何かが見える。

 あれが奴なら、気付かれるのも時間の問題だな。

 普段ならまだしもどうするか?


「やっと見つけたぞ」


 気付かれたようで、声が聞こえて来た。

 動かないで、隠れているべきだったかもしれない。

 徐々に近づいてくる仮面野郎。

 この状況じゃ、追いつかれるのは目に見えている。

 相手が一人のうちに何とかするしかないようだ。


 考えなしなのか?

 それとも深い考えあっての事なのか?

 仮面野郎は真っ直ぐに突っ込んで、貫手を繰り出してきた。

 体の反応がやはり鈍い。

 左肩をかすった。


 奴はそのまま、木に激しく突っ込む。

 激しく揺れ、亀裂がはしり倒れる木、轟く轟音。

 もしかして、奴の目的は音を出して、自分の位置を知らせる事か?

 このままでは、他の奴らがここにたどり着くのも時間の問題だ。


 立ち上がった仮面野郎から二度、三度と繰り出される貫手。

 四度目の貫手をかわし、風の力で一気に吹き飛ばす。

 だがやはり、まだうまく使う事が出来ない。

 背後の木に叩きつけた程度だった。


「その体でやるじゃないの。でも何処まで持つかな」


 これは困った、絶体絶命って奴だな。

 冷や汗が出て来てやがる。

 深く考えないで森に来たのは、間違いだったかもしれない。


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:35 中央区環状通


「おい、今の音はなんだ?」


「何かが倒れる音ですかね?」


「由香、闇雲に探しても、この暗がりじゃどうしようもねえ、音の方へ行ってみるか」


「はい」


 三井君、お願いだから無事でいて。


「しかし、この暗がりじゃ進むのも一苦労だな」


「それでも進むしかないです」


「まあ、そうなんだがな」


 近藤さんは胸ポケットから、箱型の何かを取り出した。


「煙草なんか吸ってる場合じゃないですよ?」


「吸うわけじゃねえよ、まあ見てろって」


 近藤さんが何をしているのかは、影になってよくわからない。

 だけども、箱から何か取り出して火をつけるような音が聞こえた。

 やっぱり煙草と思ったけど違った。


 近藤さんの右手に、火が纏わりついていく。

 そうだ、近藤さんのエレメントは火。

 その操作能力だと前に聞いたような。

 近藤さんの右の手の平に集まった火が強くなった。

 まるで松明の様に周囲を照らしだす。


「これで少しはましだろ。まあ、向こうさんにもばれるだろうけど、この際しゃーない。山火事なんて起こさないように注意しねぇとな」


 しばらく進んでから、私はふと疑問に思った。

 ライターか何かを使ったのは何故?

 自分で発火する事が出来ないのかもしれない。


 でもどうやって火を維持しているの?

 何かを燃料にしている?

 疑問には思ったけど、今はそんな事考えてる場合じゃないわ。

 三井君を助けなきゃ。


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:35 中央区円山原始林


「音はアタルの向かった方からかな」


 カイナは方向を変え、音の方へ飛ぶように走り出す。

 彼女の心にあるのは復讐心だ。

 その後自分がどうなるかなんて考えていない。


「必ず、仇を討つんだ。その後の事なんてどうでもいい」


-----------------------------------------


1991年5月26日(日)PM:23:35 中央区円山原始林


「何の音なんだろ?」


 私は音の方角へ体を向ける。

 何かが見えるわけじゃないけど。


「アタルが向かったほうね。見つけたのかな? ホッシーも行かなきゃ」


 サナ、仇はきっと取るから待っててね。

 アタルと私は守れなかった。

 親友の残した大事な大事な妹分なのに。


 だからこそ、二人で決めた。

 何を犠牲にしたとしても仇を討つんだ。

 私かアタルどちらかが死ぬ事になったとしても、必ず(カタキ)を殺すと決めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ