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Element Eyes  作者: zephy1024
第十章 学園入学編
149/327

149.方法-Method-

1991年6月13日(木)PM:14:04 中央区特殊能力研究所五階


「悠斗君、悪いな、その体でここまで来て貰って」


「いえ、ここまで運んでくれたのは元魏さんですし」


「いやあ、気にする事もないさ。これから話す事は、余り大っぴらには出来ないしね」


 元魏さんの言葉に僕は少し困惑する。

 だけど、悪い話しであるとは事前に聞いていた。

 なので一応、覚悟はして来たつもりだ。


 おそらくだけど、愛菜に逢わせてもらえない。

 その理由にも関係するのだろうし。


「本当は、彼女にも逢わせてあげたいのだがな。さすがにあの状態ではな・・・」


 申し訳無さそうな古川所長の表情。

 悪い考えばかりが、僕の頭の中に浮かんでくる。


「あぁでも、勘違いしないでくれ。現状は命に関わるわけではないから」


 そこで、彼女の現状ではという言葉に、引っかかりを覚えた。

 現状という事は、今後、命に関わる可能性があるとも取れる。

 そんな考えが一度浮かんでしまうと、再現無く広がりそうになった。


「所長、言ってる事は間違ってはいないけども、その言い方はちょっと、失言じゃないですかね?」


「む? 言われてみればそうかも。元魏の言う通りかもしれない。悠斗君、すまない」


「いえ。それよりも現状と言う事は」


「焦らしてもどうしようもない事だからな。目覚めた後の症状と、過去の症例から考えて、今後も彼女が力を使用する事があれば、生命に関わる可能性があるという事だ」


「えっ? そんな・・・」


 僕や三井さん、それに、他の皆もこの力を何度も使っているはず。

 それでも、生命の危険性について聞いた事なんてない。

 皆もそんな可能性なんて、気にしている様子もないけど。


 そう言えば、三井さんが前に言ってたな。

 でも、ニュアンスとしては、少し違った。

 けど、危険だというような事を、言っていたような気もする。

 ならば愛菜と僕の違いは一体なんだろうか?


「悠斗君、前に光白因子と闇黒因子について、話しをしたのは覚えているか?」


「え? はい。あの時の話しは、衝撃的だったので覚えてます」


「あの時の話しで、何故暴走してしまうのか、考えた事はあるか?」


「え? いやそこまで考えた事は・・」


 古川所長と話している僕。

 何故、あの時の話しが出て来るのか考える。

 暴走するのと、愛菜に逢わせられない理由が結びつかない。


「暴走する理由として、私達は、能力を発動させる、即ちあの因子が霊子と混ざり合うと、精神を侵蝕していくのではないかと考えている。理性を本能が上回っていくという事だ。実験したわけではないが、過去の実例から、三井君の全力開放での制限時間は推定七分。小さい頃から能力と接して来ている、彼でさえ七分だ。これがどうゆう事かわかるか?」


 そこまでの話しを聞いて、僕はある一つの結論に辿り着いた。


「もしかして、愛菜も三井さんと同じ因子持ちという事ですか?」


「本人の許可もとってないし、勝手に調べるわけにもいかないから、実際にどうかは調べてはいない。だが事件時の状況と、今現状の症状から十中八九そうじゃないかと思う」


「ただ再生する力を使った事から、持ってるとしたら光白因子だろうね。そもそも因子には純度というものがあって、純度が高い程、発揮できる力も強力になっていく」


 所長の言葉に続けて、そう言った元魏さん。

 そう言われてみれば思い当たる事はある。

 今回も十年前も、愛菜がいなければおそらく僕は死んでいた。


 死に瀕している肉体。

 それを、僅かな時間で再生する。

 きっとたぶん、途方もない力なのだろう。


「医者としての見立てというか、個人的な推測だけどね。怒りという負の感情と、悠斗君を助けたいという正の感情、その鬩ぎ合いで、精神に凄まじい負担が掛かった為の結果なんだと思う。大分回復したとは言えども、話す事も難しい程に、思考というか精神が衰弱している状態と言えばいいかな?」


「悠斗君に逢わせて、覚醒を促すというショック療法もあるにはあるが、ショックが事態を好転させるかはわからない。リスクが大きすぎるからな。無理にでも逢おうとした時は、力付くでも止める様に、義彦に頼んでおいた」


「まぁそれでも、数日もすれば回復すると思うから、逢わせられないのは悪いけど我慢してくれ」


 そうかそうゆう事情があったのか。

 だから三井さんは、力付くで僕を止めた。

 あの時、あんなに申し訳なさそうな顔をしていたんだ。


「愛菜ちゃん、彼女の場合は、事前に訓練を受けているわけでもなく、自分自身でコントロール出来るわけでもないだろう。そんな状態で発動すれば、精神的にも肉体的にも負荷は凄まじい。それこそ発動を重ねれば、負荷が蓄積していくだろう。そうなれば精神か肉体、どちらかあるいは両方が壊れる事になりかねない。だから」


 そこで、真直ぐ僕の瞳を見つめる古川所長。


「悠斗君と共に学園に入学して欲しい」


「彼女自身も、自分の能力についての知識が習得出来れば、完全に能力を開放する事は出来なくても、ある程度コントロールする事と、短時間なら耐性もつくだろうしね」


 彼女の後に言葉を続けた元魏さん。

 彼の言う事ももっともだ。

 コントロールする方法を知ってるか、知らないかだけでも違うのだろうな。


「それに悠斗君、因子持ちというのは、様々な理由から狙われる事もある。もし君が彼女を守りたいと思うならば、自信の力を理解し効率的に利用する方法を習得するのは、損にはならないはずだ」


 確かに古川所長の言う事はもっともだ。

 僕自身が、自分の能力について漠然としか理解してない。


「お話しはわかりました。いろいろとショックだったり、思う所もあります。学園入学については今一度考えてみたいです。ただその話しとは関係なく、僕自身の能力を生かす方法として、考えている事があるのですが、技術的にそもそも可能なのか話しを聞いてもらっていいですか?」


「どんな方法を考えているのかわからないが、可能かどうかなら判断しよう。是非聞かせて欲しい」


-----------------------------------------


1991年7月1日(月)AM:9:12 中央区精霊学園札幌校競技場


「特殊な学校という事にはなるが、だからといって勉学を疎かにしていい、という事にはならない。勉学と共に、それぞれが求める知識、技術に磨きをかけていってくれ」


 異例の中途開始での入学式。

 理事長の挨拶と言う事だ。

 壇上では古川所長が、挨拶の言葉を述べている。

 いや、ここでは理事長か。


 結局は僕は、以前説明を受けていた学園に入学した。

 壊れかけていた平和な日常。

 完全に壊れる事になるのかもしれない。

 そんな事もなく、壊れかけていた平和な日常。

 案外は元に戻るのかもしれない。


 でも忌避しているだけじゃ駄目なんだ。

 結局何も変わらない事に気付いた。

 この先、この忌避感が消える事はないのかもしれない。

 けど、この力が何なのか、知らないままじゃ駄目だ。

 そう思い始めている。


 だからこそ、今までの、普通の中学生。

 それを振り払って学園に入学した。

 もちろん、通常の学校で行なうような授業も普通通りあるらしい。

 並行して、合間にここでしか教えれないような事も教えていく。


「だからといって勉学にだけ勤しまないで、学園での生活を楽しむ、という事も忘れないように」


 小学校一年生から高校三年生まで。

 全校生徒が今この体育館に整列している。

 たぶん百名以上はいると思う。


 もっと少ないのかと思っていた。

 けど、案外いるものなんだな。

 それが今の僕の、正直な感想だ。


 これからどんな事を教えられるのか。

 どんな技術を身につけていくのかはわからない。

 それでも自分が提案した。

 自分なりの能力の、有効活用の試行錯誤も始まったばかりだ。

 色々と悩んだりするのだろうけど、気持ちを新たに頑張らないとな。


「余り長く話しをしても、退屈だろうと思うので、私の話しはここまで」

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