俺は義勇兵?
店のとびらがものすごい勢いで開いたかと思うと、さっきの姉弟が飛び込んできた。
「ばぁちゃんありがとう。お母さん熱が下がりました」
「ばぁちゃんありがあとう。おかあさんおいしいって。」
「それは良かったのう。」
薄めてあるけど死人も生き返るといわれる霊薬が入ってるんだ。
そりゃ効くだろう。
最もどうやって死人が薬を飲むのか俺は知らん。
「ところでお使いを頼みたいんじゃが時間はあるかな?」
「お母さんの熱が下がったから夕方まで大丈夫です。私リンシャです。この子はリュウ。」
「そうかいそれじゃあまずパン屋のところに行って普通のパンを6つ柔らかいパンをひとつ買って来ておくれ。」
「さて、夕方までみっちり手伝ってもらう前に腹ごしらえじゃ。」
おれは、ぽかんと口を開けて止まってしまった姉弟を見て笑ってしまった。
「耳が遠くなってもお前さんたちのおなかの音ぐらい聞こえるわ、買ってきたパンをそこにお並べ。」
こうは言っているが俺はまだ30越えてない。
肉体年齢は、いやよそう。
マスクをはずせないデメリットはあるのだが子供たちに手伝ってもらってする仕事は楽しかった。
あの時、そう第一次テンペルス武装都市攻防戦のときも子供たちに手伝ってもらった。
そして俺が子供たちの手を真っ赤に染め上げた。
生き残るために。
ずっと後になって歴史家はこの戦いの前半のMVPを俺だと結論付けた。
勝因は山鯨の肉、これがあるためにテンペルスは1年の攻防をしのぎきった。
さらに山鯨の暴走は近隣に生息していた野生動物たちを追い出し帝国軍の食料調達を困難なものにしていた。
基本的に狩猟民族から国を興した帝国民は肉食が主であり豊かな狩場を当てにした彼らの補給を困難なものにした。
それはともかく、正規兵2万にプラスする形で俺は他の市民と一緒に軍に編入された。
普通の学生であった俺は筋肉質でもなく、貴重な正規の武器をもらえず、代わりに支給されたのはなんと竹やりだった。
山鯨を倒してLVアップするかスキルでも覚えることが出来たなら・・
もちろんそんなことは無かったが、俺は竹で投石器をつくった。
これが意外と飛びしかも山なりのカーブを描くので城壁の内側から撃てる。
操作も簡単なことから量産して子供たちや女性が操作することになった。
さすがに試射して印をつけたキルゾーンに敵が入るのを確認して合図するのは老人とはいえ男の仕事になったが、それでも戦に巻き込むのは同じことである。
帝国軍にも引けぬ理由があるらしく、1年間粘ったが、ある日冗談のような不幸が彼らに降りかかった。