テミスの攻防 思惑
ラルーは13人の評議員で統治される合議制の国である。
なので大国であるにもかかわらず国内の意見がまとまらないことにより、他の諸国に強い発言力をもてなかった。
そのため諸国が集まっての会議では正義を振りかざすテミスに常に堅苦しい正論で論破され利権を制限されるのが常であった。
敵はテミス。
平和な時代が続くが、その思いはラルー評議員達の心の底に積もっていった。
そのつもりに積もったものがダルレーン事件で爆発した。
商取引も多くもともと仲の良かった海運国スパルニアスはまずラルーが正しいと旗幟を鮮明にした。
もともとは山賊やならず者が集まって建国したルシアもテミスと折り合わないことが多く、半ばテミスへの当て付けのために面倒を見ていたラルーには常に尻尾を振ってついて来る。
裏で何があったのか誰にもわからないことだがそのルシアにブロワースがいわれなく噛み付いた。
正義の名の下に常に屈辱を感じていたラルーの評議員がまとまるのは速かった。
戦略方針もすぐに決まる。
テミス兵が強すぎるなら相手をしなければよい。
相手をするにしても金で雇った傭兵をぶつければよい。
テミスに組する諸国をすべて敵と見なしそちらを刈り取れば充分見返りがくる。
そして何よりも怖かった帝国は疫病が怖くて出てこない。
小うるさいシェリフ王ラーシュエルも病のため沈黙を保っている。
正義派ラルーにある。
もしも思い通りにならなくてもシェリフ王を担ぎ出せばいいだけのことだ。
6名の評議員がそれぞれ10万の兵を率いてラルーを出発しそれぞれの地方に散った。
残りの評議員は兵站その他それぞれの補助に当たり万全の体制に入る。
先遣隊として派遣した評議員の内若手一人が自分の手勢のみを率いて暴発し、完膚なきまでに崩されても他の評議員達に動揺はおきなかった。
馬鹿なやつにやる分け前が減ったと喜んだだけである。
ラルーの評議員を一応束ねる評議院長カイザイックは機嫌が良かった。
全てが順調に進んでいる。
もちろんちょっとした誤算はある。
そのひとつはマラオ攻城戦で起きた。
軍のうち4個軍が集結できテミス軍の到着が遅れたことから本格的な戦闘に入り死兵となったマラオ兵とそこにいたテミスの一部隊による逆襲を受け、その損害で血に狂ってしまった兵士どもによって非戦闘員をふくめすべての命を刈り取ってしまったことにある。
損害には目をつぶれるが悪評は恐ろしい。
我らが正義で無ければならぬ。
よい誤算もあった。
傭兵として雇い入れた遊牧民の一部族が意外と使えることが分かったからだ。
僅か300名の彼らがテミス軍の進路に巧みに罠を仕掛け確実にその数を減らしている。
見張りも的確で装備のかなりを放棄せねばならないが充分逃げる時間を稼いでくれる。
補給物資の警備なども確実にこなし実に使い勝手がよい。
戦乱が鎮まったら自分の手勢に加えてやることにしよう。
今宵も上機嫌で床につくカイザイックは自分がラルー王となり湾岸に覇を唱える夢を見ていた。
その夢が他者から送られる念話によるものだとも知らずに。




