俺は遭難者?
**現在
腕まくりをして飴を煮る鍋をかき混ぜる両腕に黒い腕輪が光る。
これはこの世界で最初に出会ったドラゴン、アシュタールにもらったものだ。
これは魔力を少し通してやれば最強クラスの武器と防具になる。
どんなひ弱な人間が纏っても魔獣どもを一瞬でひねり殺せる力を得る。
”魔力を少し通してやれば”←ここ重要
日本人で魔力を腕輪に通すことが出来るのは何人居るだろうか?
もしかしたら存在するかも、だが、俺ではない。
**過去
巨大な目の持ち主が直接脳に語りかけてくる。
『何を驚いている?』
灰色の脳細胞が全力で動き・・だせない。
ドラゴンと友達になったんだっけ。
「おはよう」
俺は改めて間の抜けた?あいさつをしてしまった。
ふっふっふっ
ドラゴンの含み笑いというのを始めてみた。
ドラゴンなどというものも見たはいとが無かったのだが。
『お前は面白いやつだな。我はアシュタール、汝を友とすることを改めて誓おう。』
「佐藤太郎だよろしくな。」
『我はあと1年ほどは封印されてここから出られぬ。防具と武器は腕輪の形とした。友情の証としてお前に贈ろう、さらばだ。』
え?ちょっとまって。
目の前のドラゴンが一瞬ぶれて、気が付くと俺は森の中の赤っぽい石で舗装された道の真ん中で一人佇んでいた。
「ここはどこ?」
ギャグでぼけるときに良く使うが今はマジだ。
日本にはこんな赤いレンガが敷き詰められた道は無いはずだ。
ここらに茂っている草も木も見覚えが無く種類にまったく見当が付かない。
それより俺はハロウィーンパーティーをしていたはずだがなんで真夏なんだ?
それにあのドラゴン。
俺は叫びながら走り回りたいのを我慢して持ち物を確かめた。
リュックの中は手品の道具に魔女の仮装道具。
少し残った焼酎が一瓶。
お年寄のための大きな虫眼鏡に子供たちにもらったビー玉とおはじき。
おやつのチョコレートが二箱。
紐が一巻き。
お茶のペットボトルが一本。
医者でもらった風邪薬3日分。
これだけだと二日ほどしか持たない。
後は、ポケットにはガラパゴス携帯最新モデル電子辞書発電機能付きとハンカチ、ティッシュ。
これが武器と防具?
新たに増えたものは両腕の黒い腕輪だけだ。
いろいろ考えた結果、やや勾配が下っているほうへ歩くことにする。
道があるのだから必ず人が住むところに出るはずだ。
このときはまだこの腕輪が危機を救ってくれるものと信じていた。
どこかに盗賊に襲われている、かわいい娘が乗っている馬車でも見つからないかな、とか。
盗賊付き馬車なんて見つけられなくて良かったんだけど。
どこまでいっても同じ景色の道で見つけたのは、土の中から突き出た煙突のようなものだった。
高さは俺の背丈くらい、色は茶色でちょっと目には枯れ木のよう。
上のほうで何か空気が排出されるような音がしている。
好奇心に負けた俺はその煙突みたいなものを、拾った小枝でつついてみた。