俺はいかさま師?
**過去
巨大なドラゴンに見下ろされたらふつうは・・夢に違いないと考える。
そう俺はエチルアルコールの作用で、完全に無敵状態に入っていた。
これは夢だ。
だから頭の中にそいつの声が直接響いても、『うるせぇ!!』と右手に握っていた焼酎の一升瓶を振り上げて、頭の中で怒鳴り返しただけだった。
『我を見て怖気づかぬか、完璧な魔力の隠蔽といいみごとだ。そなたの望むままに勝負してやろう。我を楽しませろ。』
楽しませろだと?
酒飲め酒。
勝負だって?
やったろうじゃないか、かかってきなさい。
そのドラゴン、多分普通に剣と魔法の勝負をしたかったんだと思う。
が。
俺は無敵状態。
「その挑戦受けた。何を賭ける?」
『そなたが勝てばこの剣をやろう。ただし負ければ命をもらう。』
「よっしゃ、それでいいぞ。」
血液代わりにアルコールに脳みそが浮かんだ状態、はっきり言って俺にまともな思考力はこのときなかった。
相手してやろうじゃないか
おれは背負っていたリュックからダイスと同じカップを三つ、それからフェルトの張った板を取り出した。
極簡単な手品のあれだ。
「よく見てろよ、さいころが一個。真ん中のカップに入れる。」
並べたカップを入れ替える。
「こうやって入れ替えるとさいころは右のカップの中にくるよな。」
『ああ、その通りだな。』
「俺はお前が目で追えない位速く動かすから、どのカップにさいころが入っているか当てるんだぞ。動かすのは10回だけとする。いいな?」
「よかろう、そのような勝負を挑んできたのはお前が始めてだ。名前を聞いておいてやろう。』
「太郎だ。さいころの入っている確立は1/3で俺が有利だがそれでもいいんだな?」
『タロか。フッ、その条件でよい。』
「では始めるぞ。」
練習を重ねた俺の手、アルコール燃料でもしっかりと動いた。
「さぁどれだ?」
『右。』
「これでいいんだな?」
『そうだ。』
俺は右のカップを持ち上げた。
「はずれ。正解はこっちだ。」
真ん中のカップの下に入っている。
「今度は今の剣を賭けられるが、もう一回するかい?」
俺は勝ち誇ったドヤ顔でそうのたまってやった。
『ぅっ。良かろう。次はこの鎧だ。』
「また俺の勝ちだ。」
俺の後ろには宝物がうずたかく積み上げられている。
今の勝負で竜の宝珠もまきあげた。
もちろんドラゴンのうろこってのもむしれるだけむしってある。
『もう賭ける物は我自身しかない。お願いだ、最後にもう一度その宝珠を掛けてはもらえないだろうか。』
「いいぞ。」
「また俺の勝ちだな。」
『しかたなし、我はお前のものだ好きにせよ。』
俺win.
目に見えてしぼんでしまったドラゴンはマジだった。
そして俺はアルコールのせいで気が大きかった。
「よしわかった。お前は俺の友達になれ。友達になったからには大事なものを取り上げるわけにはいかん。全部返す。まぁ焼酎でも飲め。
この辺は読み聞かせに使った絵本の影響が大きい。
ドラゴンさんともお友達だ。
俺はうなだれて目の前まで降りてきていたドラゴンの口の中に一升瓶の中身をぶちあけた。
完全なる酔っ払い、最強!
「はっはっは、寝る!」
横たわる背中に感じる石畳の固さにふと気が付いて目を開けたら漆黒のドラゴンがでっかい目で俺を見下ろしていた。
でぇ~~~~~~~~~!!