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Summer Love...  作者: 奏楽☆
3/4

アイドル×地味女

学校のアイドル。

如月夏樹。


学校の地味女。

鈴木優子。


同じクラスの人。

ただそれだけの関係だった。



それなのに、ある夏の日。

恋をしてしまった。

苦しくて切なくて甘酸っぱい恋を。





体育の授業、優子と夏樹は見学。


「なっちゃーん!」


クラスの男子が夏樹に手を振る。

夏樹も振りかえす。

体育館のすみで2人が座る。

「優子・・・でいいんだよな?」

夏樹が言う。

「ぅん・・・」

「暑い!夏って感じ!まだ7月だけどな!」

「うん。」

「そうだ!今度花火するんだ。来ないか?」

花火。

優子にとって花火は嫌な思い出。

幼い頃、離婚した父との思い出。

私を捨てる前の思い出。

花火なんかしたくない。


「いかない。」


膝に顔をうずめながら答える。

「そっか。」

「ごめんなさい・・・」

夏樹が切なげな顔をする。

優子の心が揺さぶられた。

「わかった。行く。他には誰がいるの?」

「彼女の美優と、親友の大我。」

美優って・・・

学校のアイドル的な子・・・

「彼女いたんだ。」

「ああ。あいつのこと、守ってやりたいんだよ。」

なぜか優子の胸が痛んだ。

「・・・」

顔を赤くして話す夏樹。

優子の瞳から涙がこぼれる。

理由なんてわからない。

なぜだか、

胸がチクチクした。


花火・・・


優子の記憶がフラッシュバックする。

父に肩車をされて、夕日をバックに海辺を歩く。

買ってきた花火の袋を開け、火を付ける。

鮮やかな色で燃え始める花火。

世界がいろいろな色で包まれた。

そんな気がした。

「優子。優子は優しい子だから。」

笑顔で話してくる。

「うんっ!」

「ママと仲良くできるよね?」

「パパ?」

「パパがいなくても大丈夫だよね?」

「う・・・ん・・・」

幼い優子には、なにを意味するのかなんて、

わからなかった。


次の日の朝。

父はいなかった。



男なんて、花火なんて、

なくなっちゃえ!いなくなっちゃえ!


「優子?」

「なに?」


優子を真っ直ぐに見つめる夏樹の目は、

澄んだ瞳をしていた。

吸い込まれそうな瞳。


「なっちゃん♪」


彼女の美優ちゃん。

可愛くて、モデルさんみたい。

「あ!優子ちゃんでしょ?」

「・・・はい。」

「前から話してみたかったの!」

「美優、そうだったんだ。」

「うん!なっちゃん!私ね、バスケ3P決めたんだ♪」

「すげー!」

「次も決めるからね!見ててよ?」

「わかったわかった!」


置いてきぼりの優子。


なんで?

どうして悲しくなってるの?


優子の頭の中をハテナが泳ぐ。

「ねえ優子ちゃん!バスケしよう?」

「私、風邪気味で・・・」

「大丈夫っ!行こう♪」

優子の手を引き走り出す。


グキッ


鈍い音が体育館に響く。

「痛ッ!」

優子が叫ぶ。

「優子ちゃん!?大丈夫!?」

みんながざわめき始める。

「優子っ!大丈夫か!?」

駆けつけて来たのは、

夏樹だった。

優子をお姫様抱っこして保健室まで運ぶ。

「夏樹くん下ろしてよっ!」

「やだっ!!」

爽やかな笑顔に、優しさに

優子の胸はときめいていた。

「無理するなよ。なんかあったら俺に頼れ」


お姫様になったみたい。


頭の中で花火が打ち上げられていた。

一足早い、花火大会。




夏樹くん・・・




・・・・・・好き





その気持ちは、頭の中の花火によって、

彼女の存在によってかき消される。


好きになっちゃいけない。

私は、夏樹くんなんか好きじゃない。



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