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第9話 Reconciliation


「誠二、放送部ってどういうこと?」

「へ? どういうことって言われても……」


 連絡放送を終えて教室に戻ってきた誠二に私は詰め寄った。


「あんた、私とバンドやるんじゃないの?」

「おう、そりゃあもちろん」

「だったら何で放送部になんか入ってるのよ?」


 ただでさえこいつのドラムは私の求めるレベルに達していないというのに、しかも私をバンドに誘ったのはこいつだというのに、何が掛け持ちだこの野郎。私の中にはそんな怒りが渦巻いていた。


「いい? あんたのドラムはまだまだなの、もっと練習が必要なの。そこんとこ分かってんの?」

「い、いや別に放送部の活動はそんなに活発じゃないから! バンド活動には影響ないから! 練習はちゃんとするから!」


 私の迫力に押されたのか、誠二は後退りしながら慌てて答えた。


「それ、本当?」

「うんうん本当、マジ!」

「命かける?」

「いやお前、小学生じゃないんだから」

「うっさい、とにかくバンドも本気でやるのね?」

「それはもちろんだ」


 最後の質問に誠二は、真っ直ぐ私の目を見て答えた。納得行かない部分もまだあるけれど、取り敢えずバンドにしっかり打ち込んでくれるんなら文句はない。


「……分かった。それならいいわ」

「おう、任しとけ」


 怒りを長引かせてもいいことはない、取り敢えずこの件はここでスパっと終わりにしよう。


「でも何で放送部に入ったの? 何、あんたアナウンサーとかなりたいの?」


 終わりにしようと思ったが、ふとそんなことが気になったので聞いてみた。そういえば私は、誠二のことをあまり良く知らない。


「え? あーっと、うん。別にアナウンサーとか、そういうのになりたい訳じゃないんだけどさ」

「ふーん」


 その割りには結構いい声をしていると思うのだが。まあ本気で目指されても困るので、そんなことは言ってやらないけど。


「そういえば」


 そんな会話をしていると、誠二の後ろの席の佐藤が声をあげた。


「ん、どしたの佐藤?」

「そういえば、放送部には有名な美人の先輩が居るって聞いたことがあるんだよなあ。しかも2人」

「へ、へぇ~そうだったのか夏彦。お、俺はそんなこと知らなかったよ~」


 佐藤の言葉に誠二は微妙に上ずった声で言った。


「一人は3年生のモデルみたいなスタイルの良い美人でさあ。背も高くて胸も大きいって話だよ。んでもう一人は2年生で可愛い系っていうかな、ツインテールのよく似合うお人形さんみたいな人らしいね。そして結構いいとこのお嬢様らしいね。僕は直接見たこと無いんだけどさ、噂は何度か聞いたことあるんだよねえ」

「ハハハハ、そ、そうなのかぁ~。夏彦は物知りだなぁ~」


 誠二の態度が、明らかにおかしい。もしかしてこの馬鹿は――


「ねえ誠二、あんたもしかして……」

「ば、馬鹿だなあ奈緒。俺はそんな美人の先輩に釣られて放送部に入ったりなんかしてないって~」

「あ、でも何か二人共彼氏は居るらしいよ」

「え!? マジかよ夏彦、それどこ情報だよ!? 相手誰だよ!?」

「ん~、同じ放送部の人らしいよ~」

「うっわ、最悪。いや俺もね、もしかしてとは思ってたけどさあ……」

「……はあ」


 ――もしかしてしまったみたいだ。


「あれ、でも放送部に男の先輩って一人しか……」

「いやいや坂本さん聞いてくださいよ、それがねえ……」


 他人の色恋沙汰に興味は全く無いので、私は弁当を食べ始めた。


「はあ!? 何だよ、それマジなのかよ、許せねえ!」

「ふふふ、僕も最初は信じられなかったよ。これがあるからあの2人は有名なのかもね~」


 後ろの2人は何やら盛り上がっているが、正直本当にどうでも良い話だ。私は淡々と弁当を口に運ぶ。うん、今日も母さんの作る飯は美味い。


「ん? メールだ」


 上着のポケットに入れた携帯が震えたので、唐揚げを口に入れてから、携帯を取り出して内容を確認する。


「……………………んぶふぉああっ!!」


 内容に驚愕して、私は思わず口の中のものを吹き出してしまった。


「うわ、近藤さん汚い。そして今のは女の子の出す声じゃない」

「げほっ、ごほっ……うっせえっての佐藤。それより誠二、携帯見て!!」

「お、おう……」


 恐らく誠二のメールにも一斉送信で同じメールが行っているに違いないが、時間が惜しいので私の携帯を誠二に突き出す。


「え…………これマジ?」


 携帯に映しだされたメールは、とんでもないものだった。




 差出人:古田友宏


 件名:重大発表!!


 本文:初ライブ決定! 水ノ登ライトニングで再来週の水曜日だよん☆




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