自傷少女
メンタル要素が強く含まれます。ご注意を。
皮を削るんです。ぎーこぎーこ、と。
痛み?ですか?そんなの感じないくらいの痛みが心にあったんです。私は、ふいに笑ってしまいました。だって、心が痛かったから皮を削るなんて到底おかしな話でしょう?
どうして心が痛いのかって?失恋?そんなものしてないですよ。誰かに傷つけられたからじゃないんです。誰かが亡くなったとか、悲しい出来事があったわけでもないんです。ただ、ただ私の中の羞恥心が耐えられなかったどうしようもなく幼稚な出来事があっただけです。
普通は切るそうですよ。世に言うリストカットってやつです。ただ、私にその言葉を言ってはいけません。なぜなら私はまだ、リストカットという言葉を知らないから。私はまだ、後戻りできるんですよ。
皮をカッターでひたすら削り、血が滲む。やがてヒリヒリした淡い痛みが腕を襲います。
それでも私はまだ後戻りできるんですよ。だって、自分が狂ってるなんて微塵も思ってないんですからね?明日からだって、私は腕に包帯巻いて、何食わぬ顔で友人に、転んじゃったとウソをつくでしょうし。
カッコ、笑、です。
ダメですよ?このこと、私に悟られたらきっと私を壊してしまうでしょう。だから、悟られてはダメですよ?
カッコ、笑、です。
「ニシヤマミカさん」
じゃ、呼ばれたから行かなきゃです。白い空間は好きですが、医者に会うのは毎度のことながら緊張してしまいますね?
「ニシヤマさん、また自傷行為しちゃったのね?じゃあお薬、変えてみましょうか」
「先生、私変なんですか?」
「その質問はしない約束でしょ?はい。じゃあ二週間後にまた来てね」
実に短く淡々としたやり取りはいつものこと。私は、きっと今夜も皮を削るでしょう。そんなこと、誰にも言えません。
そうして時も実に淡々と過ぎていくのです。私が薬漬けになるのも時間の問題ですね。
カッコ、苦笑、です。
ある意味ノンフィクションなのはここだけの話。(苦笑)