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不幸の人

アメブロからの転載。


ひたすらに不幸な少年のお話です。


日々は凶運と共に過ぎていきます。

俺は不幸だ。


それで同情を誘いたいとか、悲しいとかいうわけではない。


事実として俺は不幸なのだ。





そして、俺は不幸であることに何の不満も抱いたことはない。





 


 俺の名は咲葉幸一さくは こういちという。世界で一番不幸だと自負しているだけに、名前が『幸一』なのはもう笑うしかない。自慢ではないが幼稚園から小学校低学年にかけて俺のあだ名は【不幸一】。小さいころから俺はひたすらに運が悪かった。むしろ運が悪いを通り越して不幸だった。しかし俺はそれを嫌だと思ったことは無い。なぜなら俺には友達がいたからだ。無理やり、したくもない集団生活を共にさせられている奴らのことではない。俺には俺だけの、他の人は知らない秘密の友達がいる。





 そいつは俺が物心ついたころからずっと俺の近くにいた。幼い俺はそいつを『ラッキー』と呼んだ。ラッキーは透けるように儚い美少女だ。うっかり触れば壊れてしまいそうな希薄な気配をいつも醸している。ラッキーはずっと俺の近くにいたわけだから、いつの日か俺はそいつに話しかけた。俺の拙い言葉にラッキーは嬉しそうに頷いたり、相槌を打ってくれたりした。俺とラッキーはすぐに仲良くなった。


 俺がラッキーのことを不審に思うようになったのは小学校に上がってすぐのころだった。両親は俺がラッキーと話しているのを見ても眉をひそめ、


「こう君?誰と話しているの?」


と不思議そうに聞くからだ。それが何度も繰り返されるうちに、俺は「ああ、お母さんとお父さんはラッキーが分かんないんだ。」と思うようになった。しかし俺は気にしなかった。そのころには俺の中でラッキーは大きな存在となっていた。もともと俺は変わり者だったのだろう。俺はラッキーを『秘密の友達』と呼び、それまでと変わらず一緒に話したり、遊んだりした。







それから数年たった。やはり俺の不幸は留まるところを知らず、むしろますます酷くなっていた。ラッキーはあいかわらず儚げだったが、しばらく前から少しずつ成長しているように見える。外見には特に変化はないものの、何故か成長している、と感じるのだ。


そして、俺が≪ラッキーの成長にしたがって不幸が悪化している≫と気付くにはそれからさほど時間はかからなかった。


 小学校高学年のころから、俺はいじめられ始めた。俺は気にしなかった。元々クラスメイトはいてもいなくても同じだと思ってた。今までに不幸が積み重なりすぎていたので、いじめなど毎日の生活を脅かすものにもなり得なかった。



 俺の不幸はしかしそんなものではなかった。中学校に入るころに、父の会社が倒産した。一応借金もないし、並みの一般家庭程度の貯金はあったから、すぐに食べるのに困ることもなかった。しかし父親はなかなか再就職出来ず、少しずつお金も無くなっていく。両親の顔は日に日に焦燥と疲れが刻まれていった。





 俺は、俺の不幸が周りにまで影響を及ぼすまでに悪化したことを知った。


 俺はそれがラッキーによってもたらされていることにも気付いていた。





 それでも俺はラッキーを恨んだり、疎ましく思ったりなどしなかった。ラッキーは大切な友達だった。どんなに俺に不幸を運んだとしても、ラッキーは唯一無二のなんでも話せる相手だ。俺は、俺自身の命が危機にさらされる不幸が訪れることになったとしても、ラッキーと離れるなどという選択をするつもりはさらさらなかった。





 それでも両親を巻き込むのは忍びない。


 中2の夏休みから、俺は一人暮らしを始めた。




 俺が移り住んだのは、田舎の中でも町のような様相を呈しているところだった。高い建物なんて殆どないが、かといって畑が広がるわけでもない。シャッター商店街の一画の、元は何だったのか分からないような建物の二階が俺の新居だ。中学から一人暮らしなので、この近くに住んでいる祖父母のコネを使って激安の家を手に入れたのだ。





 9月から俺は新しい学校に転入した。大きくも小さくもない公立中学校。俺にとってはそんなことどうでもよかった。新たなクラスメイトは転校生を初めこそ好奇の目で見ていたが、ロクに反応せずに窓の外ばかり見つめていた俺(=転校生)に徐々に興味を失っていった。





 俺の関心はラッキーだけに向けられていた。引っ越しに当たって不安だったのは、ラッキーも一緒に来られるか、という一点だけだった。俺は気付いていたのだ。いや、気付かない方がおかしい。ラッキーは幽霊だということに。人間でないことは昔から分かっていた。が、「では一体なんなのだ?」という疑問に答えが出たのは最近だった。





 ラッキーは霊体エーテルで、何故か俺に不幸をもたらす。外出中だろうがなんだろうが、いつも俺にくっついてるから、多分俺を寄り代としているのだろう。





 ただ、「俺を寄り代にしている」という点は微妙に確信をもてなかったから、家に憑いていたらどうしようもなかったのだが……。その心配は杞憂に終わった。ラッキー自身に確認をとったが正解だった。ラッキーはうるうるした瞳で





「私のこと…怖い?嫌いになった?」





と不安げに訪ねてきたが、そんなわけはない。たとえラッキーが悪魔だったとしても(似たようなものだが)、嫌いになることなんてありえない。そしてその旨を伝えると、これまた可愛らしく





「コウ……。ありがと。」





と言ってくれるのだ。これで嫌いになる奴は、もう男ではない。








 自称「世界一不幸な男」幸一と、凶運を運ぶ「ラッキー」。


 これほどに名前と境遇がミスマッチな俺達は、それぞれ通じるところがあったのだろう(ラッキーと名付けたのは他ならぬ俺だが)。俺は最凶に不幸であると同時に、最高に幸せ者だった。








 笑えることに、俺(とラッキー)が家を出てからすぐに、父の再就職が決まったそうだ。



父親の再就職が決まったからと言って、俺の生活にはなんら変化は無かった。学校ではいじめられこそしなかったが、俺なんかに絡みに来るモノ好きはいない。俺は今まで全く変わらない生活を、ただこなしていた。ラッキーはやはり成長している。なんとなくそんな気がする。








 ある日、俺は死んだ。











 歩いていたら、鉄骨が落ちてきた。そんなに大きくなかったが、俺の悪運をもってすれば死ぬのには十分すぎるサイズだった。正直「やっとか」と思った。別に死にたかったわけではない。しかし死にたくなかった訳でもない。





 まあ、親族にも普通に悲しんで貰えて、葬式くらいは何もなく終ったようだった。





 





 なにか気付いた。


 ああ、ラッキーが今までより近い。距離云々ではなく近い。








 そうか。俺も霊体≪エーテル≫になったのだろう。分かりやすすぎる末路だろ…と自分でも苦笑する。それでも、俺はラッキーと離れなくてもいいことを素直に喜べた。やっぱり俺は幸せ者だ。








 そんな想いが裏切られるとも知らずに……。俺は透き通る笑みを浮かべた。





















































































本当はもっともっと不幸にする予定でした☆

可哀そうにwww


書ける気がしなかったので結構割愛しましたがww


また短編をちょこちょこあげてきたいな~ww

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