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透明  作者: 愛珂
4/4

3話 穴があったら入りたい。

泪も、だいぶ落ち着いてきた。

今は、ちょっとわくわくするくらいだよ。


よし、決めた。

この歌が終わったら、山下に話しかけてみよう。

とりあえず、今はここで、聴いていたい。他には、何もしたくない。



あたしは、補習のプリントを職員室に提出しに行くことなんて、すっかり忘れてた。

まぁ、思い出す気もないけどね。



山下の歌に、引き込まれていく。この声が、一番魅力的だ、と思う。


歌詞にも、耳を傾けてみる。


(すごく・・・切ない・・・・。)



旋律もそんな感じ。

山下の透明な声に混ざって、あっという間にあたしの心に染み渡る。

それがとっても、心地良いんだよね。


昔の歌かな?そう思った。


あたしは、音楽を聴くのが大好きで。

新しい曲が出て、何か良さそうな感じなら、片っ端から借りちゃう。

特にどうでも良さそうな曲でも、一応視聴はする。

どんなジャンルの音楽も、(演歌とか、CMソングとかも。)聞き逃したくないんだ。

ここ4〜5年は、そんな生活をしている。

だから、まぁ、こう言っちゃあなんだけど、あたしが知らない曲って、殆どないと思う。


なのに、山下が歌っているこの曲。聴いたこと、絶対ないし。

でも、やっぱりどこかしらで聴いてそうな感じはして・・・。



嗚呼、矛盾。

なんか、パン食べ過ぎて、胸焼けした気分。(?)


・・・とか思ってたら、終わっちゃったし。


(あっ!!早く訊かなきゃ・・・!)


焦ったあたしは、教室のドアをすごい勢いで開けて、・・・なんと外れてしまった。


「うわ、やばっ!」


これまた焦って、何もないのにものの見事に躓いてしまった。しかも頭打った。

(は・・・恥ずかしすぎ・・・。)

『穴があったら入りたい』とか、何か今のあたしの為に作った言葉?

それくらいの、このピッタリ度。


あぁ〜・・・この後どうしよう?

流石に、気づかれていないはずがないでしょう。

もう泣きたいですよ・・・・・・・・。


「・・・何あんた。バカでしょ?(笑)」


あれぇ〜??

何か今、あたしに追い討ちをかける様な言葉が聞こえたような。

しかも、ちょいと低めな声じゃあありませんか・・・?


恐る恐る顔を上げてみる。

そこには、あたし好みのあの顔が・・・。


「うあっ!!!」


驚きすぎて、即、後ずさり。あたしって、何か・・・変態?

山下は、まだ笑っている。当然って言えば、その通りだけど。


「ねぇ〜、まぢ、何?誰?何でここに居んの?てか、平気?鼻血出てるし・・・(笑)」


山下はそう言って笑いながら、あたしに手を差し伸べた。


すごく馬鹿にされてる。何か悔しい。

でも、同時にこう思う。噂って、当たらずも遠からず。


確かになんか変わってる感じはするけど。皮肉な感じはするけど。

でも、少なくとも、無口ではない。

かるぅ〜〜くで良ければ、優しさも・・・あると思う。


「・・・ありがと。」


あたしは、山下の手をとり、立ち上がった。

時間にしたら、ほんの一瞬だったと思う。

でもあたしは、




そのぬくもりを、ずいぶん長い時間感じていた気がした。

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