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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第三章:ポッシェ村

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44.クラウスの悩み③(クラウス視点)

好きになってからは我ながら頑張っていたと思う。

授賞式の準備についても、フィーアができるだけ興味を持てるように工夫した。そこからは彼女との雰囲気は良くなっていったと思う。

授賞式当日にフィーアの提出していた魔道具が盗まれたり、それをフォローするために彼女が滞在していた村に行ったり、発表時に乗り込んで来た犯人を捕まえたり。色んな事があった。

しかしフィーアはどんな逆境に立たされようとも、折れることはない。その状況をどうにかしようと考え続ける。そこに更に惹かれていた。


そうして授賞式含めて全てが終わった後。

フィーアは村に戻り、俺はいつも通りサミュエルをお守をしながら色んな場所を転々とする。そんな日々が始まろうとしていた。

実のところ、俺はフィーアに想いを告げるつもりはまだなかった。

少し前に知ったことだが、彼女はまだ19歳で、俺より2個も若い。きっと魔道具の研究にもっと集中していたい時期だろう。それになにより俺にも仕事というものがある。大半がサミュエルのお守だが、任されている事には変わりない。

だからこそ、今は我慢して、仕事の合間にポッシェ村に定期的に会いに行きながらじわじわと攻めていけばいい。

そう考えていた……のだが。


「クラウス!フィーアと一緒にポッシェ村に行くから準備して!」

「は?」

「ほら出発は明日の朝だよ」

「フィーアはそんなこと言っていなかったが?」


そう。彼女とは先程別れを済ませて自室に帰ってきたところにサミュエルのこれだ。

俺が既に仕事で休みを取った時に行く予定だというのは言っていない故に、『またね』という言葉を言うまでモゴモゴとしたり、寂しそうな顔を見せてくるところが可愛いななんて思いながら別れを告げてきたのだ。


「ん?だってフィーアに言ってないもん」

「はあ!!?」

「サプライズって楽しいよね。絶対彼女驚いて、いい反応を見せてくれるんだろうね。嬉しすぎて泣いちゃうかな?」

「お・ま・え・は!!他人の迷惑というものも考えられないのか!!?」


正直なところ、フィーアとまた一緒に行動できるのが嬉しくないといえば嘘になってしまうが、あまりにも勝手な行動にサミュエルを怒鳴り付けてしまう。

実際、こいつはいつでも無計画なのだ。そのまま行動させてしまうと周囲が毎回酷い目に遭う。

しかし、こういうやりとりに関しては、サミュエルの方が残念ながら一枚上手だった。


「知ってるよ?クラウス、フィーアの事が好きだろう」

「っな、おまえ――」

「ぜーんぶ僕のせいにしてしまえば、クラウスはこれから向こう数ヶ月毎日フィーアと会う事ができるよ」


そう言われて思わず黙り込んでしまう。

それはまるで悪魔の囁き。考えれば考える程にジワジワと理性に浸透して、脳ミソがバカになっていく。


「交渉成立、かな。ちゃんと荷物まとめておいてね」


一方的にそう言い捨て、サミュエルは俺の部屋から去っていく。

何も言い返すことが出来なかった。そしてサミュエルが一方的に厭味を言われながらの旅が始まった。

毎日ひとつ屋根の下でフィーアと共に過ごす。彼女の事をもっと知って、距離が確実に縮まっていくのを感じた。


しかしポッシェ村に到着して、調査が始まってからはフィーアの様子が変わってしまった。

調査を始めてから、焦っているような、どこか切羽詰まっているような、追い込まれているように見えた。

できるだけ休憩を取らせるようにして、調査を代わりに進めたりで負担を減らそうとしたが、フィーアは俺に自分から頼ってはくれなかった。何故そこまで必死になるのか、何も聞けないままただ時間だけが過ぎていった。


けれど急激な変化が起きる。

急にサミュエルとフィーアが親しげにし始めたのだ。

それに彼らの態度を見ていると、サミュエルは俺も知らないフィーアの事情を全て把握しているようだった。フィーアは話す時も、戦闘も、真っ先にサミュエルを頼るようになったのが目に見えてわかった。それに向ける瞳も以前のような冷たいものではなく、どことなく暖かく信頼しているようなものに変化している。

少し前までは俺の方が明らかにフィーアから信頼されていたのに、今ではサミュエルの方が信頼されている。理解ができなかった。

そしてあのフィーアの発言だ。目の前が真っ暗になるほどにショックだった。


「だから!くっついてこないで!!暑苦しい」

「えー、僕ずっと看病してて疲れたんだもん。もたれかかられたくないなら、手を引いて連れていってほしいな」

「誰かに見られたらどうするのよ、自分で歩いて!」


自室から出ると、起きてきたのであろうフィーアとサミュエルが親しげにしているのを見てしまった。

もう二人に話しかける勇気すらない。俺はこれからどう彼女らに接すれば良いのだろうか。きっと明日には普通の状態に戻れている、そう言い聞かせながら背を向けた。


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